AIで普通の動画を3D動画に変換する


誘惑5



イルカの誘いを、とりあえず延期することになってしまったカカシは任務を終えて急いで里へと帰って来た。
もちろん、イルカの誘いを延期しただけなので、それを実現するためだ。
だが現実はカカシには厳しかった。
「えー、イルカ先生、任務!」
またか、という思いだ。
またもイルカとの予定に邪魔が入ったのだ。
イルカを誘うと、もしくはイルカに誘われると悉く邪魔が入るような気がしてならない。
「そう、カカシと入れ違いにね」
上忍の控え室にいた紅がイルカの任務について教えてくれた。
「一週間くらいの予定らしいわ」
「そうなんだー」
がっくりとカカシは肩を落とす。
「あー、もう。急いで帰ってきたのに」
ついてないと落ち込んでいる。
「まあ、そんな時もあるわよ」
紅に慰められたカカシは「まーねー」と曖昧に笑ったのだった。



ところが一週間の任務に出たはずのイルカが一週間経っても里に帰ってこなかった。
「おかしい、帰ってこないなんて」
カカシが上忍の控え室で本も読まずに腕組みをして不機嫌そうにしている。
時々、びりびりと殺気が放たれたりしていた。
殺気によって窓ガラスが音を立てて揺れたりしている。 一緒に控え室にいる面々は非常に迷惑していた。
「あのなあ」
アスマが堪りかねたように言った。
「ここで、いくら心配してもイルカは帰ってこないんだよ」
じろっとカカシがアスマを無言で睨む。
「任務の予定がずれ込むなんて、よくあることだろ」
諭されてカカシは、ようやく殺気を引っ込めた。
「そんなの分かっているって。でもさー」
はああああ〜と長くて深い溜め息を吐く。
「心配なんだよね、頭では理解していてもイルカ先生のこととなると感情的になってさー」
恋する男心は複雑なようだ。
「イルカ先生だって忍だし俺が心配するようなことはないと思うよ」
でもさ、とカカシは肩を落とした。
「イルカ先生に会えないと寂しくてねえ」
珍しく愚痴らしきも口から出ている。
「一週間もイルカ先生に会えないのが、こんなに辛いなんて思ってもみなかった」
カカシは、ああと嘆いていた。
「特に夜になると寂しさが身に沁みて、イルカ先生の温もりがないなんて」
イルカのことを心配するカカシの気持ちが分からんでもないアスマであったが。
一つ指摘した。
「夜になるとか温もりとかって言っているけどな。カカシとイルカは同棲、同居はおろか互いの家に泊まりにいったこともないんだろう」
その点だけは、はっきりとさせておいた。



一週間と三日してからイルカは里に帰還してきた。
ただし怪我をして。
里に帰ってきたイルカは怪我の治療のため入院してしまった。
そんなイルカの元へ真っ先に飛んでいったのはカカシだ。
「イルカ先生!」
息せき切らしてイルカの元へ駆けつけた。
「大丈夫ですか?怪我したって聞いたんですが」
その時、イルカはベッドに寝ていたのだがカカシの姿を見ると嬉しそうな顔をした。
「カカシさん、わざわざ来てくれたんですか」
ベッドの傍まで駆け寄ってきたカカシに寝ていたままでは悪いと思ったのかイルカはベッドの上に身を起こそうとする。
それをカカシは押しとどめた。
「いいから寝ていてください、安静にしていなければいけないのでしょう。怪我は大丈夫ですか?」
「まあ、そうですけどね」
イルカは苦笑いをした。
「怪我っていっても大したことなくて、いわば検査入院みたいなものですから」
カカシを気遣ってかイルカは明るく振舞っている。
「どこを怪我したんですか?」
無理をしているようなイルカに逆にカカシは心配になった。
本当は大変な怪我をしているのではないか、痛いのを我慢しているのではないか。
イルカの性格からしてあり得ることなので、とっても心配になる。



「怪我をしたのはどこですか」
心配の余り、幾分か強い口調になった。
「えーっとですね」
ベッドで横になったイルカが布団の中から右腕を出して持ち上げて見せた。
包帯が、ぐるぐると巻かれている。
「ちょっと右腕を怪我しまして」
言い難そうに口ごもっていた。
ぴんときたカカシは問い詰めた。
「他には?他にも怪我をしていますよね」
それは確信だった。
手の怪我くらいで検査入院なんてしないだろう。
「イルカ先生」
問われたイルカは答えない。
言いたくないのか困った顔をしてカカシを見つめている。
「イルカ先生」
再度、名を呼ぶとイルカは視線を逸らしてしまう。
顔をカカシがいる方とは反対に向けてしまった。



ちなみにイルカがいる部屋は個室ではなくて大部屋だったので他にも入院している患者が何人かいた。
それも同じ木の葉の忍者だ。
部屋は広くないので話していることが否応にも聞こえてしまうだろう。
それをイルカは懸念したのか。
だけどもイルカが心配なカカシは、そんな些細なことに構っていられない。
心配な気持ち一心でイルカに問い質さずにはいられなかった。
「イルカ先生、俺、心配なんです」
カカシの声は苦しそうだった。
「イルカ先生にもしものことがあったらと思うと俺の胸は張り裂けそうです」
怪我をしているイルカより辛そうである。
そんなカカシを、そうっと見ると端正な顔が苦悩に満ちているのが見えた。
イルカの胸に罪悪感が湧いてくる。
「すみません、カカシさん」
背けていた顔を戻してイルカは謝った。
「心配してくださって申し訳ないです」
「イルカ先生」
ほっとしたようにカカシはイルカの名を呼んで顔を近づけてくる。
間近で見たカカシの顔は、やはり格好良くて男前だった。
「全身打撲で打ち身がひどいので骨が折れてないかとか内蔵に損傷はないかとかの検査なんです」
多分、何もないとは思いますけど、とイルカは付け加えた。
しかし体の節々には痛みがある。
あんまり言うとカカシに心配されるより忍者としてその様はなんだと呆れられると思ってしまったのだ。
だがカカシはイルカの耳元に口を寄せると囁くように言った。
「検査で何もないといいですね」
それはカカシの心からの声だ。
その声にイルカは大いに安堵してしまった。
そしてカカシの囁き声に胸が、どきりとしたのであった。






誘惑4
誘惑6




text top
top