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災い天使6



午前の受付業務を終わらすと午後からはアカデミーだった。
午後から受け持っている授業なく、明日の授業の準備をすることになった俺。
準備室で明日の授業に使うクナイを、俺と同じく授業がない同僚何人かと磨くことになった。
武器の扱いの授業の準備は、特に念入りだ。
明日は低学年の授業があるから、武器の扱いで怪我人が出ないように細心の注意を払う。
と、いっても忍者だから、いずれ、戦場に出て戦えば怪我は避けられないと思うけど。
でも、それはそれ、これはこれ。
授業では、なるべく怪我をさせたくはない。



「あ、クナイの他に、この刀も手入れしておかないとな〜。」
どっさりの量のクナイの他に武器が保管されている部屋の奥からから同僚の一人が刀剣類を一抱え持ってきた。
「これ、明日使うのには多すぎないか?」
生徒の数に比例してない武器の数だ。
「まあ、いいじゃんか。」
同僚は、へらっと笑った。
「人数、結構、揃っているし。この際だから、やっちまおうぜ。」
「まあなあ。」
やれる時に、やった方がいいのには賛成だ。
「んじゃ、やりますか。」
そうして俺たちは黙々とクナイを磨いたり、刀剣類を点検したり作業を開始した。



同僚たちが雑談を交えながら作業をする中、俺は黙々とクナイを磨いた。
磨きながら、朝、同僚に言われたことを思い出したいた。
喧嘩するほど仲がいい。
カカシ先生と俺って、そういう仲・・・だったのかな。
ちょっと自信がない。
だって、それって仲がいいほど喧嘩する、元が親しいから喧嘩してもすぐに仲直りするって意味だよな。
そんなに仲が良かったっけ、カカシ先生と。
一方的に俺が親しいと思っていたんじゃなくて・・・。
どうなんだろ?



カカシ先生の優しい眼差しとか、穏やかな声を思い出すと切なくなってしまう。
ああ、俺、こんなにカカシ先生のことが好きなのに。
・・・・・・・・・好き。



好き!



自分で思ったことに自分で驚いた。
驚いて動揺して、その拍子に磨いていたクナイで指先を傷つけてしまうほど。
ぴっと、切れた指先に血の玉ができて、それが膨れ上がる。
そうして膨れ上がった血の玉は破れて、指先から流れてきた。
つつつ、と指先から血が手の平へと流れ落ちる。
それを、ぼんやりと眺めながら俺は思った。



そうか、俺、カカシ先生のことが好きだったんだ。
だから、こんなに・・・。
「あっ、イルカ!何しているんだよ!」
同僚の一人が俺に慌てふためいた様子で声を掛けてきた。
「血が出てるぞ。」
「あ、平気。」
小さな傷だから。
出血の割には大したことないから。
「指先って小さい傷でも血が、たくさん出るよな〜。不思議〜。」
人事みたいに言うと同僚が、眉を顰める。
「それは指先に血管が集まっているからだろ、多分。」
もう一人の同僚が俺から磨いていたクナイを取り上げた。
「とりあえず、ここはいいから医務室に行ってこい。」
半ば、命令するように俺に言ったのだった。



同僚の勧めに素直に従い、血が出た指先を押さえながら俺は医務室に向かっていた。
先ほど思ったことが頭を離れない。
カカシ先生が好き。
好きだから・・・。
好きだから、嫌われたくないと思ったり、でも嫌われてもいいと思ったりして。
任務から無事に帰ってきたカカシ先生を見て、ほっとしたり。
・・・どきどきしたりしていたんだ。
そうすれば、今までも俺の行動や気持ちも総て説明がつく。
辻褄が合う。
なあんだ、そうだったのか。
俺はカカシ先生が好きなんだ。






・・・で、終わる話じゃない。
どうしよう。
次は真剣に悩む番だった。
同性を好きになるって、どうなんだ?
好きになっていいものなのか・・・。
でも自分の気持ちに嘘はつけないし。
カカシ先生に、どんな顔して会えばいんだろ。
深刻な悩みを抱えながら、廊下の角を曲がろうとした時だった。
考え事をしながら歩いていた俺は正面から思い切り誰かに、ぶつかってしまった。




「すみません!」
慌てて頭を下げると、反対に慌てた声が聞こえる。
「イルカ先生、どうしたの?」
その声に顔を上げるとカカシ先生だった。
「血の匂い!怪我しているの?」
「怪我っていっても、小さな傷で。」
カカシ先生の顔を見ていると体が熱くなってくる。
顔が火照ってきた。
だって、目の前に好きだと自覚した人がいる状況なんて慣れてないし。
何より恥ずかしい。
「だ、大丈夫ですから。気にしないでください。」
カカシ先生を避けるようにして通り過ぎようとすると逆に、それを阻まれた。
「何言っているんですか!すぐに手当てしないと。」
カカシ先生に引き摺られるようにして俺は医務室へと連行されたのだった。



医務室は担当医が不在だったのでカカシ先生が俺の指先の怪我の手当てをしてくれた。
お互い向き合うように座ってカカシ先生は険しい目つきで俺の怪我した指先を検分する。
「少し切れているだけみたいですね。」
「はい。」
だから気になさらないでください、と俺は目で訴えたのだが構わずカカシ先生は治療をしようとしていた。
俺の指先を、そっと手に取ると、なんと・・・。
ぱくっと銜えたのだ。
「えっ!」
びっくりして手を引こうとしたが、がっちりと手首はカカシ先生に掴まれて引くことはできなかった。
いつの間に覆面を下ろしていたのだろう。
ちゅっとカカシ先生は俺の傷ついた指先を吸っている。
それって、おそらく、消毒とか、そういうつもりかもしれないが。
でも。


やっと怪我した指先を開放された時、俺は真っ赤になっていた。
「な、なななんてことを・・・。」
にこっとカカシ先生は笑っている。
その顔に俺は、ますます赤くなった。
「そ、そんな・・・。人の怪我した部分を口に含んだりして、俺が病気だったら移っていますよ、間違いなく!」
現在の俺は健康体で病気ではない、念のため。
「イルカ先生、色気ないなあ。」
俺の言葉にカカシ先生は眉尻を下げた。
「すみません。」
責められているような言葉に俺は項垂れる。
「色気、なくてすみません。」と。



「まあ、そんなところがイルカ先生らしいですよねえ。」
カカシ先生はテキパキと怪我の処置をしていく。
傷口も改めて消毒してくれて。
「そういうところも好きなんですよね。」
くるくると包帯で指先を巻かれる。
「怒っているイルカ先生も好きですよ。」
最後にテープで包帯を止められる。
「どんなイルカ先生も、俺は好きなんです。」



「好きって、あの・・・。」
突然の展開に俺は内容が理解できない。
好きって。
誰が誰を。
カカシ先生は今、なんて言ったんだ?
耳に言葉は聞こえてはいたけれど、意味が分からない。
もしかして、これは夢で幻で現実世界の出来事ではないのかもしれない。
夢なので目の前のカカシ先生は消えてしまうかもしれない。



「夢じゃありませんよ、イルカ先生。」
治療道具を片付けたカカシ先生は再び、俺の向かいに座り、俺の両手を取った。
「俺、イルカ先生が好きなんです。」
真剣な声だ。
「中忍試験では図らずも争った形になってしまいましたが・・・。」
カカシ先生は言い難そうにしている。
「大人気なく言い返して、イルカ先生を怒らせてしまって後悔しました。あの時は怒っているイルカ先生を見るのが初めてだったので、つい胸が高鳴ってしまったというか、怒っているイルカ先生もいいなあと・・・。 もっと怒ったら、どんな顔をしてくれるんだろう、と下心があったのも事実なのですが。」
俺の両手をカカシ先生は、ぎゅっと握る。
そして言った。
「ずっとずっと好きでした、イルカ先生のこと。」





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