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災い天使2



この体勢・・・。
こんな時になんだけど俺は思い出してしまった。
一度だけ、こんな体勢になったことあるなあって。
・・・というのはカカシ先生の家で酔ったカカシ先生にふざけて、こんな体勢でベッドに押し倒されたっけ。
あの頃は楽しかったよなあ。
思わず、郷愁にひたってしまっていた。
欲を言えば、あの頃に戻りたいとか。
楽しいときのことを思い出すと、すごく悲しくなってくる。



「イルカ先生・・・。」
カカシ先生の声で、はっと現実に戻された。
「あっ。」
いつまでも、こんな体勢でいるなんて迷惑だよな。
どこまで迷惑をかけるんだ、俺って。
憂いを纏った眼差しでカカシ先生は俺を見ている。
・・・嫌われたのかもしれない。
そのことは大きく俺の胸中に重く伸しかかってきた。
情けないところというか、みっともないところばかりカカシ先生に見られてばかりいるような気がする。



「あのね、イルカ先生。」
カカシ先生が何かを言おうとしたようなのだが、それよりも俺の目には階段の下に散乱する教材の本が目に入ってきた。
ダンボール箱の二つとも底が抜けて見るも無残な有様だった。
なんてことだ。
最悪、なんて言葉が俺の頭を過ぎった。
呆然とする俺の視線を辿ってカカシ先生の階段の下に散らばる本の山を見て言った。
「あちゃー、大変なことになっていますね。」
俺を拘束していた手を、そっと外すと階段下に行き、さっさと本を拾い始めている。
さも当然のように。
だけど。
だけどカカシ先生は、そんなことしなくていいんだ。



俺は慌ててカカシ先生に近寄ると「すみません」と頭を下げた。
「すみません、ここは俺一人で大丈夫ですから。」
「この量の本をイルカ先生一人で運ぶのは大変でしょ。」
カカシ先生は意に介さないのか、本を拾う手を止めない。
俺は一緒になって拾いながら「すみません」を繰り返していた。
「いいんですよ。」
あっさりとカカシ先生は言うと「これ、アカデミーまで運ぶんでしょ?」と気軽に手伝ってくれたのだった。



アカデミーの職員室まで本を運ぶのを手伝ってくれたカカシ先生に俺は改めて頭を下げた。
「本当にすみません。」
本を運んでる間、カカシ先生に申し訳なくて、ずっと「すみません」を言い通しだった。
通算、百回くらい言ったような気がする。
それでも、まだ言いたい足りないくらいだ。
「すみません、本当に。」
消えてしまいたい気分で、体を小さくしながら俺は言う。
カカシ先生の顔は、とてもじゃないが見れなかった。
その顔に、どんな表情が浮かんでいるのか考えると空恐ろしかった。
これ以上・・・。
これ以上、なんなんのか自分でも、よく解らなかったがカカシ先生とも関係を悪い方向には進ませたくない。
もう後戻りできないのかもしれないけれど。



「イルカ先生。」
頭を下げている俺の頭上から穏やかな声が聞こえた。
「ねえ、イルカ先生。」
カカシ先生が俺の呼びかけている。
その声には、ちっとも悪意のようなものは感じられず、どちらかというと親しみのあるものに聞こえた。
「そんなに謝らなくていいですから。誰にだって失敗はありますよ。」
俺をフォローしてくれている。
本当に優しい人だ。
「だから、ねえ。」
とん、とカカシ先生の手が俺の肩に触れた。
「顔を上げてください。」
ねだるような優しい声がした。
「俺に顔を見せてくださいよ。」
そんなことを言われた。



俺の失敗をフォローしてくれた上に責めもしないなんて。
なんて人間のできた人なんだ。
懐が広いというか、包容力があるというか。
この世に神の使いの天使とやらいるのならカカシ先生みたいな人なのではないだろうか。
それに比べて俺は・・・。
ひどい自己嫌悪が襲ってくる。
あんなこと言った俺を今日は助けてくれたし。
助けて・・・。
俺は、ばっと顔を上げた。
まだカカシ先生に、お礼も言っていない。
顔を上げると近い距離にカカシ先生の顔があった。
目を細めて俺を見ている。
その目が薄っすらと緩んだ。



「あ、やっと顔を上げた。」
その声が嬉しそうに聞こえるのは気のせいだろうか。
「あの・・・。」
俺はカカシ先生の思いもよらぬ反応に息をのむ。
あの中忍試験以来、まとも会話するのは始めてだ。
こんな間近でカカシ先生を見るのも。
カカシ先生の顔に見蕩れて、ちょっとの間、ぼーっとしてしまった俺だったがお礼を言わなくては再び、頭を下げた。
「あの。階段を落ちるところを助けていただいて、ありがとうございました。」
「いいんですって、イルカ先生。」
顔を上げて、とカカシ先生が言う。
「突然、あんなところから声をかけた俺も悪いし。」
そういやカカシ先生、なんで、あそこにいたんだろう?



「ま、偶然でもイルカ先生に触れられて、俺は役得でしたけれどね。」
・・・今、なんて。
呟くように言った言葉に釣られて顔を上げる。
「あ、顔を上げた。あのねえ、俺、イルカ先生に話が・・・。」
カカシ先生が話を続けようとした時、失礼にも俺は声を上げてしまった。
「ああっ!」
「えっ、どうしたの?」
少しばかり大きな声を出した俺にカカシ先生は驚いている。
俺はカカシ先生が立っている、後ろの壁に掛かっている時計に目が釘付けだった。
受付け所にいく時間を、とっくに過ぎていた。



ものすっごく、やばい。
・・・交代を待っている同僚に怒られる。
確か、今日は予定があるから時間きっちりに交代に来いと念を押されていたのに。
ついでにカカシ先生に受付所への遅刻のことを知られたくはない。
身勝手だが仕事に、いい加減なやつだとは思われたくなかったのだ。
ほんと身勝手な言い分だけど・・・。
俺は深々とカカシ先生に頭を下げ、一礼すると身を翻した。
「すみません、ちょっと急用が!」
適当なことを言って、その場を逃げ出す。
カカシ先生は呆れているかもしれない。
そのことを考えると、どっと落ち込む俺だった。




災い天使 1
災い天使 3






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