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災い天使1



カカシ先生と七班の子供たちの中忍試験のことで喧嘩してしまった。
元担任の俺よりも現在、あの子達を指導しているカカシ先生の言っていることが今となっては正しいと解る。
後で、大人として謝罪して仲直り的なものはしたのだが・・・。
俺は、はあ、と溜め息を吐いた。
その実、カカシ先生と会うことは途轍もなく気まずかったのである。



アカデミーと受付所を兼任している俺は受付に入ると必ずと言っていいほどカカシ先生と顔を合わせる。
任務の依頼書を渡したり、報告書を受け取らねばならないのから顔を合わせなければならないのは必至だ。
それがまた、とんでもなく居心地の悪いというか、カカシ先生の顔を見ると激しい自己嫌悪に襲われる。
胸が、ずきずきと痛むのだ。
後悔とか懺悔とか、ぐちゃぐちゃとして気持ちになってしまう。
これは決してカカシ先生が悪いのではなく、総て俺が悪いのは解っている。
俺が原因で、こんな事態になったのも理解している。
解っているのだが・・・。



カカシ先生は、いつも何故か受付では俺のところへと並び、必ず、俺に報告書を提出してくる。
それはいい。
だって仕事だから。
仕事だから、それをすればいいだけで。
事務的に報告書を受け取り処理する。
それだけだ。
それだけなのに・・・。
報告書を提出したカカシ先生は、意味ありげな視線を俺に向けて名残惜しそうに去っていくのだ。
何度も振り返って俺を見ながら。



なんでだろう。
俺は再び、溜め息を吐いた。
もしかして謝まって頭を下げただけじゃ駄目だったんだろうか・・・。
上忍に立て付いて怒らせた俺は土下座でもしないといけなかったのかな。
それとも、もっと現実的なもので謝罪の意を示さなければいけないのか。
お金、とか?
・・・と金銭を要求されても俺には金はない。
微々たる貯金があるくらいだ。
カカシ先生から見れば、絶対、はした金とか雀の涙程度だと思うけど。



でもカカシ先生が、そんなの望むような人だとは思えない。
だとしたら、俺の命で償う・・・。
そんなことを思って俺は体を、ぶるっと震わせた。
真面目でストイックなカカシ先生なら有り得るかもしれない。
日頃、怪しげな本を片手に常備し読んではいるが、本当は意外に繊細で、意外に生真面目で、意外に真摯な人だったりするんだよなあ。
里のことも人一倍考えていたりするし、人に対する気遣いも細やかだ。
すごく、いい人なんだ。
・・・って、俺が知っているのは喧嘩する前に多分に親密になっていたからだと思う。
そう、親密だった分、今の関係が余計に辛いのだ。
元の関係に戻りたいとか贅沢なことは言わないけれど、どうにかならないかなあ。


また、溜め息を吐きそうになって俺は慌てて口を押さえた。
カカシ先生のことを、うっかり考えてしまっていたが奥まった場所にある図書室にアカデミーの授業で使う教材を取りに来ていたんだっけ。
運ぶためにダンボールに教材として使う本を詰めていく。
結構、あってダンボール二箱分にもなってしまった。
「重い・・・。」
ダンボール二箱分の本は、ずっしりとしている。
何とか運べるとは思うが、肩が抜けそうだな〜。
でも運ばないと、しょうがない。
この図書室からアカデミーって遠いんだよな。
頑張るか、と俺がダンボール箱を抱えて図書室を出ようとした時、ふと、ある本が目に止まった。



風変わりな異国の本。
ページを捲ると異国で祀られている神様などが載っていた。
その本の、あるページに天使と書かれた翼を持った人の絵があった。
白く輝く翼を背に抱き、同じく白く輝く髪の人。
神秘的で不思議な絵である。
天使か・・・。
ちょっとカカシ先生に似ているなあ、と。
その異国の天使は、ふんわりと笑っていて、そんなとこもカカシ先生に似ていた。



あの人は非常に柔らかく笑みを浮かべる。
それは、とても優しいものだった。
そういえば喧嘩して以来、カカシ先生の笑った顔を見ていない。
優しい笑みを。
そこで俺は、やっぱり溜め息を吐いてしまった。
あの優しい笑みは、もう見れないのかなあって。
カカシ先生の笑顔が俺に向けられることは金輪際、ないのかもしれない。
そう考えると落ち込んだ。
自業自得で俺が悪いんだけどさ。
全部、俺が悪いんだ。
自分を納得させると俺は気持ちを切り替えてダンボール二箱に入った本を抱え上げたのだった。



長い廊下を歩き、この階段を昇れば、もうすぐアカデミーに到着する。
本は重いし疲れてしまった。
これを運んだら明日の授業の準備をして受付に行かなければならない。
今日もカカシ先生に会うのかな。
会ったら・・・。
会っても別に何もないと思うけど。
カカシ先生は俺のこと、どう思っているんだろう。
・・・別にどうも思っていない、可能性が高いよね。
自虐的なことを思った時、不意に名を呼ばれた。
つい先ほどまで考えていた、その人に。
カカシ先生に。



「イルカ先生。」
階段の上から、ひょっこり現れた、その人は昼の太陽の光を背に受けて後光が射して。
髪が白く輝いて、まるで、さっき見た異国の本の天使みたいだった。
「あ、天使。」
「え?」
首を傾げたカカシ先生が一歩、俺に近づいてきた。
「イルカ先生。」
もう一度、名を呼ばれて、どきりとする。
名を呼ばれるのは久しぶりだ。
かなり、どきどきとしてきた。
だけども、あろうことか。
その瞬間、俺は階段を踏み外し上ってきた階段を逆戻りしていた。
要するに真っ逆様に階段から落ちていたのだった。



重い荷物を運んでいた俺は物の見事に落ちていく。
階段からの落ち方コンテストでもあれは一等賞でも取れるくらいの見事さだった。
仮にも忍者なのに。
一応、中忍なのに。
情けない。
一瞬の間に色々考えていた俺は落ちた時に受けるであろう衝撃を交わす余裕もない。
ただ、ぎゅっと目を閉じただけだった。
しかし、覚悟していた衝撃は、いつまで経っても来ず。
しっかりとした力強い手が俺を支えていた。
片方の手が俺の手首を掴み、もう片手が俺の背に回っている。
階段から落ちるのを助けてくれたのはカカシ先生だった。




災い天使 2



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