AIで普通の動画を3D動画に変換する


天使の気持ち5



生憎というか、幸いにも医務室に担当医は不在だった。
・・・ということはイルカ先生の怪我は、当然、俺が手当てすることになる。
怪我の手当てを遠慮するイルカ先生の指先を有無を言わさず、検分してみると小さな切り傷があった。
刃物で切ったらしい。
よかった、これなら、すぐに治るだろう。
ほっとした俺は怪我したイルカ先生の指先を見て、ふと、やってみたいことを思い出した。
そして実践してみた。



イルカ先生の血がにじみ出た指先を口に銜えて、ちゅっと吸い付いてみた。
ほら、なんとなく、怪我した時に舐めて消毒みたいなのあるでしょ?
でもイルカ先生は違ったみたい。
戸惑い慌てて、手を引っ込めようとしている。
もちろん、そうはさせないけど。
そしたらイルカ先生が、実にイルカ先生らしいことを口にした。
「俺が病気だったら移っていますよ、間違いなく!」
・・・・・・俺は、もっと違った展開になるかと予想していたんだけどなあ。



イルカ先生が照れて照れて、可愛くなっちゃうとか。
言うことが、ほんとイルカ先生らしい。
ロマンチックの欠片もなかった。
そんなイルカ先生が逆に可愛くて、おかしくて俺は言ってしまった。
「イルカ先生、色気ないなあ」って。
別に悪い意味じゃなくて、そんなところもいいなあイルカ先生って意味でだよ。
でもイルカ先生は、しゅんとなってしまった。
叱られたみたいに悲しそうな顔になる。
小さな声が聞こえた。
「色気、なくてすみません。」



・・・どうやら俺は、また失敗してしまったらしい。
イルカ先生を悲しい思いをさせたくはなかったのに。
イルカ先生の気持ちに追い討ちをかけるようなことをしてしまった。
イルカ先生の真面目すぎるところを見落としていたのだ。
銜えていた指を離し、俺はイルカ先生の手を本当に消毒して手当てしながら、つい言ってしまった。
イルカ先生を慰めたくて。
元気にしたくて。
笑ってほしくて。
イルカ先生に、好きだって告白してしまっていた。



好きだと告白してからイルカ先生は少し黙っていた。
項垂れていた顔を少し上げて上目遣いに俺を見る。
その目に胸が、どきんとする。
撤回しよう、さっきはイルカ先生に色気がない、と言ってしまったが、その目には充分、色気が漂っていた。
ここが医務室じゃなかったら、とか不埒なことまで考えてしまっていた。
・・・ま、そこは曲がりなりにも上忍なので、理性の力で押しとどめる俺だ。
上目遣いのイルカ先生が俺に訊いてきた。



「怒ってないんですか?」と。
中忍試験の一件でのことだろう。
ここで、ちゃんと俺の気持ちを伝えなければと思った。
そうして、喧嘩の後みたいな気まずさを取り払わなければと思ったのだ。
俺は、とびきりの笑顔になって、怒ってないことをイルカ先生に言った。
中忍試験でもことについても、人それぞれ考えの違いがあると自分で思っていることをを説明したら、イルカ先生は解ってくれたようだった。
どさくさに紛れて握った手をイルカ先生を握り返してくれた。
もしかして、これは・・・。
俺の胸は甘くときめいた。
これって、いい感じなのでは・・・。



好きだと告白した返事をもらえるかもしれない。
だいたいにして好きだと告白したとき、イルカ先生は微塵も嫌がっていなかったから、多分、そう、きっと、あれだ。
「カカシ先生」と、少しだけ潤んだ瞳で俺を見つめ返してきたイルカ先生に期待してしまう。
告白の返事を。
色よい返事を。
感動したようにイルカ先生は言った。
「ありがとうございます。そんな風に仰っていただいて。」
・・・・・・あれ?なんか違う。
だが、俺も慌てて言葉を返した。
「・・・いいえ、いいんですよ。」
それから中忍試験で怒ったイルカ先生がカッコよかったり可愛かったりしたことを言うとイルカ先生は驚いたように目を見開いたが、次に嬉しそうに。
とっても嬉しそうに笑った。



これが俺の見たかったイルカ先生の顔だ。
イルカ先生の笑った顔が、とても好きだ。
こう、胸があったかくなって心が満たされる。
そんな効果がイルカ先生の笑顔にはあった。
俺は知らずにイルカ先生に言っていた。
それは懇願に近い。
俺を避けないでほしい、すみませんなんて言葉はもう聞きたくない、そして謝らないでいいことを。
だんだんとイルカ先生に近づいて囁くように、そんな言葉をイルカ先生の耳に落としていく。
イルカ先生は・・・。



イルカ先生の顔は、先ほどとは違う表情が浮かんでいた。
驚いてはいるけれど、初めて俺を見たような顔をしている。
その顔は俺を一人の人として認めてくれたような感じだった。
上忍はたけカカシではなくて、一人の人間のはたけカカシとして。



それからイルカ先生に思い出してもらうがために、もう一度言った。
「大好き、イルカ先生。」
途端、イルカ先生の落ち着きはなくなった。
頬がほんのり染まって可愛いこと、この上ない。
成人男性に可愛いはないかもしれないけど俺の目には、そう映るんだから仕方がない。
腕の中に閉じ込めておきたい可愛さだ。
あー、もう、ぎゅーっと抱きしめてキスしたい。
ものすごい欲求が腹の底からわき上がってくる。
その欲求に俺は、もう逆らわなかった。
思いの丈をこめて俺はイルカ先生にキスをしたのだった。




場所が場所だけに、その場ではキスだけにとどめたが・・・。
キスだけにとどめたことが奇跡のようなものだ。
俺は、ある計画を立てた。
キスまでしたんだから、仲直りしたことに間違いはない。
いや、仲直り以上だろう。
なので、この雰囲気のままにイルカ先生と関係を進展させたい。
色々な意味で。
だから、その晩、イルカ先生に俺の家に来てくれるように約束を取り付けた。
仲直りの記念に飲みましょう、と提案したらイルカ先生は、あっさりと受け入れてくれた。
俺の言葉の通りに受け取ってくれたらしい。
ちょっと、ずるいかなと思いつつ、恋に駆け引きも必要だと俺は考え直し、イルカ先生が夜、俺の家に来訪することを思うと弾む気持ちが押さえられなかったのだった。




天使の気持ち 4
天使の気持ち 6





text top
top