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天使の気持ち4



朝の受付所にはイルカ先生がいて、真面目に仕事をしていた。
今日は午前は受付所で、午後からはアカデミーで仕事なんだよね、イルカ先生は。
イルカ先生の予定は、ばっちり把握している俺だ。
扉の陰から見たイルカ先生は真面目な顔だけど、どこか暗い気がする。
多分、まあ、と俺は手の中のイルカ先生の財布を見つめた。
財布が見つからなくて困っているからだろうなあと思ったのだ。
早く、これを届けてあげなくちゃあね。



任務の依頼書をイルカ先生から貰って、拾った財布を差し出すとイルカ先生の顔が輝いた。
最初は信じられない風だったけど、俺が財布を拾った経緯を説明すると納得がいったようだった。
嬉しそうなイルカ先生に俺も嬉しくなる。
受付所が空いているのをいいことに俺はイルカ先生に話をふった。
「その鈴、大事にしてくれているんですね。」
財布の鈴を指さした。
イルカ先生は、こくこくと頷く。
「とても気に入っています。」と言ってくれた。
なんと嬉しい言葉だろう。
俺は自分の財布の鈴も披露してしまった。



「俺の大事にしていますよ〜」って。
俺とイルカ先生の財布に光る揃いの鈴。
揃いの物って、すっごい仲良しっていうか、深い仲に見えるかな?
ちょっと期待してしまう。
イルカ先生の隣に座っている受付の中忍が、ちら、とこちらを見たから、きっとそう思ったはずだ、と思ったことにする。
俺とイルカ先生は仲がいい、と。
上機嫌になった俺はイルカ先生に、また後でね〜、と手を振ると受け付け所を後にした。
扉を閉めた直前、中から声が聞こえた。
そっと耳を澄ますと、先ほど俺たちの鈴を見ていた中忍がイルカ先生に言っているのが聞こえる。


「はたけ上忍とイルカって、ほんと仲いいな。」
・・・・・・ふふふふ。
俺は笑いそうになって口を押さえた。
そう、そうなんだよ!
俺とイルカ先生は本当は仲がいいの、とっても!
いいこというじゃないか、誰か知らないけど受付の中忍の人。
上機嫌に拍車のかかった俺は、そのまま任務に行き、子供たちに不気味がられたのだった。




上機嫌のまま、早々に任務を終わらせた俺はあちこち、ぶらぶらとして時間を潰していた。
上忍控え室にいてもいいんだけど、今日はイルカ先生と会えそうな予感が満載だったのだ。
だから、ぶらぶらとしていた。
ぶらぶらしがてら、図書室なんてのに立ち寄ってみる。
もしかしてイルカ先生がいるかもしれないかな〜、とか思ったのだ。
予想に反してイルカ先生はいなかったけれど、俺は面白い本を見つけた。



色んな国の宗教が載っている本。
遠い国の宗教の神様とかが詳しく説明されていた。
ぺらぺら、捲るとあるページで手が止まる。
そこには白い羽をもった人間みたいなのが描かれていた。
説明書きには『天使』とある。
イルカ先生が階段を落ちそうになる前に俺に言った言葉だった。
ああ、天使って、これのことだったんだ〜。
へえ〜、と思いながら説明書きを読む。
ふむふむ、な〜るほどね。
説明を読み終わると、ぱたん、と本を閉じ元の場所に戻した。



天使の存在の意味を知った俺は、ちょっと複雑な気分だ。
簡単に言えば、神様に仕える清く正しく美しくをモットーにしたのが天使だ。
総てにおいて平等で博愛精神とか、何とか彼んとか難しいことが書いてあった。
だけど。
・・・俺とは違う。
俺はイルカ先生だけが好きだし、お付き合いした後のことを、あれこれ考えてしまっている。
色々と。
だって俺は人間で男で、欲とか俗とかの気持ちが少なからずあるから。
天使だったら、そもそもイルカ先生と言い争ったりしないしね。
それに天使とかだったら、イルカ先生と恋人になれないじゃないか。
イルカ先生が俺に、そんなイメージを持っているのなら、ぜひとも、それをぶち壊さないと密かに張り切る俺だ。




で、図書室を出てから何の気なしに歩いていると、俺の願いが通じたのかイルカ先生に会えた。
廊下の角を曲がったら会えたなんて、劇的じゃないか?
ロマンチックだなあと俺が感慨に浸っていると、少しだけ血の匂いがした。
イルカ先生から。
慌ててイルカ先生を問い詰めると、怪我をしていると言うではないか。
顔も赤くなってきて熱を帯びているようで。
よっぽど具合が悪いのか。
俺は、とても心配になった。
心臓が、どきどきとしてしまう。
小さな傷だって無理して、もっとひどくなったら、と気が気ではない。
イルカ先生に何かあったら俺は生きていけないよ、きっと。



それなのに俺を避けてイルカ先生は一人で行ってしまおうとした。
なんで!
かっとなって、少し腹が立った俺はイルカ先生を抱きかかえるようにして医務室へと直行したのだった。




天使の気持ち 3
天使の気持ち 5







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