AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


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次の日の朝。
早々に退院した俺に迎えが来た。
大柄で髭の生えた顔に、タバコを銜えている。
「記憶喪失だってなあ、カカシ。」
からかうように言って、面白そうに俺を見る。
「誰、アンタ?」
不機嫌を隠さず聞くと、男はニヤッと笑った。
「俺はアスマだ。どうやら記憶喪失ってのは本当らしいな。」
そう言って、俺を木の葉の里で一番偉いという火影さまのところへ連れて行った。






「カカシ、お前、記憶喪失ってのは本当かい?」
火影だという若い女は、目を丸くして俺を見た。
皆して俺をカカシ、カカシって呼び捨てにして煩いこと、この上ない。
どうせなら、あの人のあの声で呼ばれたいのに。
「診断書を見たけど。いつ、記憶が戻るのかねえ。」
困ったように腕組をしていた。
「カカシでないと出来ない任務が目白押しだってのに。」
次に呟いた言葉に俺の第六感はピンと来た。
「イルカも同じだし、本当に困ったもんだ。」
イルカ!
イルカってイルカって。
そうだ、きっとこれだ、これが求めていた名だ。
「イルカも記憶がないんですか?」
さり気なく相槌を打つと火影さまは。
「うん、里に帰る途中に頭を打ったらしくてね、今は自宅に帰らせて待機させているんだよ。」
お前を運んできたのはイルカなんだが、と。
そこで、ん?と火影さまは俺を見た。
「なんでイルカのことを聞くんだ、カカシ?」
覚えているのか、と聞かれたから大嘘をついた。
「ええ。実はイルカのことだけ覚えているんです。」
彼に会いたくて嘘をついてしまった。
神様は許してくれるだろうか?
「イルカのことだけが、頭の奥底に残っているようで。」
「そうか。」
火影さまは腕組みをしながら考えているようだった。
「カカシとイルカは比較的仲が良かったからな。お前は人見知りのきらいがあるのにイルカにだけは妙に優しかったし。イルカもカカシと一緒にいる時、嬉しそうな顔して楽しそうにしていたしなあ。」
仲が良かった!
そうなのか、良かったな〜俺、偉いな〜俺。
「推測だが。」
ちらと火影さまが俺を見た。
「もしかしたら、もしかすると誰にも分からないように付き合っていたのかもしれないな。違うかもしれないが。」
だったらいい、それはいい、すごくいい。
だから、便乗して俺は言った。
「そうかもしれません。病室にも見舞いに来てくれましたし。」
多分ね、そうだといいけど、付き合ってたらいいけど。
「そうか、自分も記憶がないのにも関わらずカカシのことを、とても心配していたし。付きっ切りで看病もしていたしな。」
「そうそう、そうですよ。」
ああ、ウキウキしてくる。
気分のままに言ってみた。
「きっと、俺とイルカは恋人同士で、今は忘れているだけなんです。」
願望は口から出てしまうものだ。
昨日、一目見たイルカが忘れられない、きっと、これは恋だろう。
火影さまは、ぽんと手を叩いて。
「ならカカシ。そんなに言うならイルカに会って来い。記憶が戻る切っ掛けになるかもしれないし、しばらく一緒に暮らしてもいいぞ。」
イルカの家の場所を教えてくれた。
なんて、都合のいい展開だ。
「希望的観測だが、相乗効果でお互いの記憶が戻るかもしれないし。」
戻らないかもしれないが、と苦い顔もする。
「でも、取立ていい治療法もないし。今はそれでいこう。」
そういうわけで、俺はイルカの家に行くことになった。
最後に火影さまは俺の経歴や里での立場等を事細かに説明して「頼むから早く思い出しておくれよ。」と言った。






イルカの家の前に着くと俺は気配を探った。
記憶がないが、幸い忍びとしての体の記憶は残っている。
家の中に、一人だけの気配を感じる。
ということは、イルカは家にいるんだな。
息と深く吸って吐いて、気を鎮める。
ああ、緊張するなあ。
イルカの会ったら、最初に何て言おう。
玄関のドアを控え目にノックした。
反応がない。
もう一度、今度は強く。
玄関の扉がギイと音を立てて細く開いた。
「誰、ですか?」
聞きたかったイルカの声だ。
「俺ですよ。」
嬉しくなった俺は明るい声が出てしまう。
やった、会えたよ。 「カカシです。」
俺がにこにこして言ったのに、イルカは暗い顔だ。
「なんで来たんですか?」
俺に会えて嬉しくなさそうだ。
「なんでって。」
そんなこと言われるなんて思いも寄らなかった。
「会いたかったから、イルカに。」






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