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目を開くと、白い天井が見えた。
消毒薬の匂いで、ここが病院を分かる。
なんで、病院のいるんだろうか。
体が動くのでベッドの上で起き上がってみた。
体は擦り傷だらけで、頭に手をやると包帯らしきものが巻かれていた。
頭を怪我したらしい。
痛みがあるのは、このせいか。
でも、怪我の原因って何だっけ?
考え込んでいると、病室のドアが開いた。
忍服姿の男が入ってくる。
黒髪に黒い瞳で、顔に傷のある人。
男も頭に包帯をぐるぐると巻いている。
俺を見るとベッドに駆け寄ってきたが、頭を怪我しているのに走って大丈夫なのだろうか。
嬉しそうに「カカシさん。」と呼ばれた。
なんて心地よい、いい声だ。
「カカシ・・・さん。」
それが俺の名前なのだろうか。
この人に名前を呼ばれると、気持ちがいいなぁ。
「頭の傷は痛みますか?」
不安げに聞いてくる。
心配そうな瞳を安心させたくて。
「大丈夫ですよ。」と言って笑ってみせた。
「少し痛むだけです。」
「そうですか。今、お医者様を呼びますね。」
すぐに診て貰いましょう、と病室から慌てて出ていきそうになる男を俺は呼び止めた。
聞いておきたいことがある。
「あの、あなたの名前は何ですか?」
聞いておかないと、次に会った時に名前を呼べないから。
男は、ぎょっとして振り返った。
「俺の、名前ですか?」
「はい。」
俺の質問に困ったように眉を寄せる。
「俺の名前、分からないんですか?」
「ええ。」
「ご自分の名は?」
そういや、自分の名前はなんだっけか。
目の前の、この人に気を取られて、どうでもよくなっていた。
「カカシ、じゃないんですか?あなたが、さっき呼んでいたじゃないですか。」
「そうですけど。」
俺を見つめる男は何かを堪えるように。
「お医者様を呼んで来ます。」
それだけ言うと病室を足早に出て行った。
医者が来てからは、はっきり言って面白くなかった。
あの人の姿がなかったからだ。
医者は、俺のことを時間をかけて診察すると言った。
「頭の怪我は二週間くらいで治るでしょう。問題は記憶の方ですが。」
言い難そうにしているが。
俺は、とっくに分かっていた。
「所謂、記憶喪失なんでしょう。」
「ええ、そういうことです。」
俺の記憶なんて、この際どうでもいい。
俺の記憶より優先すべきことがある。
「ねえ、さっきの人は?」
「は?」
「さっき、俺の病室に来るように、あんたを呼びに行った男の人は?」
「さあ。」
医者は、頭を捻る。
「私は看護婦から、あなたが気がついたと連絡を受けただけで。」
「なら、もういいよ。」
「しかし。」
渋る医者を追い払いたい。
「記憶はいつ戻るか予測はできない。一生戻らないかもしれない。」
でしょ?と医者が言いたかったと思うことを述べてやると医者は頷き。
「そうです。それから退院できるのは明日ですので。」
それだけ言うと医者は病室を出て行った。
本当言うと、すぐにでも退院したいのだが体の調子が今ひとつ。
あの人の傍に行きたかったのにな。
今、どこにいて何をしてるんだろうか。
体が動くなったようになったら、真っ先に探したい。
一人になると思い出されるのは、あの人のことばかり。
どこに行ってしまったんだろうか。
どうして、名前を言ってくれなかったのか。
推測だが怪我した俺を病院まで運んでくれたのだろう。
そして、目覚めるのを待ってくれていたに違いない。
あんなに俺のことを心配してくれていた。
きっと、あの人と俺は何か深い繋がりがあるに違いない。
探さないと。
また会いたい。
絶対に会いたい。
早く明日になってくれ。
心から願い、俺は眠りについた。
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