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うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子9



「あ・・・。」
イルカは前方に、ある人物を発見して思わず声を出していた。
「あの人・・・。」
近づいてくる、あの人は・・・。
任務先であった暗部の一人であった。
里に帰ってきて暗部に会うことなどなく、記憶は心のどこかに仕舞い込まれていたのだ。
何故ならば、思い出したくない内容が含まれていたから。
「どうしよう、あの人だ。」
歩いて近づくにつれて、容貌が明らかになってくる。
その顔は、偶然にもイルカが面の下を見てしまった暗部の人であった。
今日は普通の忍服を着て片目を隠して、更に顔半分を覆面で覆い隠しているが、あの銀髪は見間違えようもなく。
傷のない片目も、やけに印象に残っている。



イルカの頭に、あの言葉が思い浮かんだ。
『この面の下の顔を見た人は呪われちゃうんだよ〜。』
忘れたくても忘れられない言葉だった。
ずっと銀髪の暗部に会わなければ、もとい下忍のイルカには暗部に会う機会など滅多にないので、あの銀髪の暗部に会いさえしなければ呪いは発動しないとイルカは勝手に思い込んでいた節があった。
このまま歩いて、あの銀髪の暗部と会ってしまったら・・・。
イルカの胸が不安に押しつぶされそうになる。
会ってしまったら確実に、の、ろ、わ、れ、る、と思った。



どうしよう?
逃れる術はあるのか。
早くしなければ、あの暗部と出会ってしまう。
・・・顔を合わせない方法は一つだけだ。
イルカは思いついた、その方法を実行に移した。
勢いよく、回れ右をすると銀髪の暗部に背を向けて歩き出したのだ。
走らなかったが全力で歩いて、あの暗部と距離を置こうとした。
きっと向こうは自分のことなんて覚えていない。
会ったのは何ヶ月も前で、しかも初対面の自分のことなんて忘れているだろうから、このまま会わずに済めば万々歳・・・。
そんなことを企てた。



すたすたと歩いて、もと来た道を引き返す。
幾分か来て、この辺でいいだろうかと歩みを緩めようとした時、その人は現れた。
イルカの前の何もなかった空間に姿を、ふわりと現したのだ。
瞬間移動でもしてきたように。
今まで何の気配もなかったのに。
もしかして呪いの力か?とイルカは思ったのだが、よく考えてみれば下忍のイルカが暗部の気配に気づけるはずもない。
突如、目の前に現れた暗部にイルカの心臓は、どきどきとしてしまう。
胸を押さえても、鼓動は収まらなかった。
逃げようとしても足は動かない。
固まってしまった足を無理やり動かすと、やっと一歩だけ動いた。



しかし一歩動いたくらいでは、この場を去ることは難しい。
どきどきとするイルカに、暗部は屈んで視線を合わせてきた。
その瞳の柔らかさを読み取ってイルカの気持ちは幾らか楽になった。
この暗部はイルカに危害を加えようとはしていないし、呪いを再度かけようとしているわけでもない。
そして声を聞いた。
イルカの話しかけてくる声は優しげだ。
平和な里の中だから、いっそう優しく聞こえるのかもしれない。
暗部の目が細まり、愛しげにイルカを見つめてくる。
そして、暗部は言った。
「これから俺と一緒に食事でも、どう?」



「食事、ですか?」
言われたことにイルカは目を、ぱちくりとさせた。
もっと恐ろしげなことを言われると思っていたからだ。
しかも目の前の暗部はイルカのことを覚えているらしい。
「そう、一緒にご飯食べようよ。」
暗部は気軽に誘ってくる。
暗部なのに。
「ご飯・・・。」
今は昼食には遅い時間帯だったが、イルカは昼食を食べてはいなかった。
実は食料の買出しにきていたのである。
買物して家に帰ってから食べようと思っていた。
外食は滅多にしない。
経済的な事情もあるが、外で食べると自分が食べる普段の食事の量より、かなり多い量が出てきて困ってしまい、食べきるのに時間が掛かるからでもあった。



「ねえ、いいじゃない。」
暗部の人の声は優しく、イルカに向かって手が差し出された。
特徴的な指なしの手袋しているが、大きく強そうな手である。
この手で頭を撫でてくれたんだっけ・・・。
何ヶ月前かに会った、この暗部との会話が思い出される。
里に帰っても、ちゃんご飯を食べるように心配してくれたり、暗部の人たちとお握り食べた後にお茶を持ってきてくれて飲ませてくれたりと世話をイルカの焼いてくれた。
それは親切心から出た言動だろう。
イルカのことを心配してくれているのだ。
「ねえ、行こうよ、ご飯食べに。」
そして名前を呼ばれた。
「イルカ。」と。



名を呼ばれたイルカは心に蟠っていたものが、すーっと溶けていくのを感じた。
暗部の声に惹かれるように、おずおずと手を伸ばすと暗部の大きな手に自分の小さな手を重ねる。
銀髪の暗部は、にこっと笑うとイルカの手を握ってくれた、力強く離さぬように。
そのことに安心したイルカは名も知らぬ暗部と手を繋ぎ、連れ立って歩き始める。
そうして行き着いた先は勿論、ご飯を食べる店であった。






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