うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子5
「その子に何をしている?」
銀色の髪の暗部は盛大な殺気を身に纏わせながら、その場に姿を現した。
揺らめく殺気が青白く放電し、まるで青い炎にように見える。
その迫力は凄まじいものだ。
年は若くとも実力派で、ビンゴブックに載るほど諸国に名を知らしめている銀色の髪の暗部である。
今は暗部の所属であるため名乗ることはないが、本当の名は遠くまで知れ渡っていた。
その名は、はたけカカシ。
そのカカシの姿を見た、どこかの里の忍は一斉に退いて身構えた。
「誰だ!」
リーダー格と思しき年配の忍が叫んだ。
「それは、こちらの台詞だ。」
カカシは、ゆっくりと倒れているイルカに近づくと、その小さな体を抱き上げた。
素早くイルカの体を確認すると外傷はなく、ただ気を失っているようである。
イルカが背中に背負っていて長刀が鞘から抜けて、近くに転がっていた。
一先ず、イルカの体に傷がないことに安心したもののカカシに殺気は止まることを知らず、どこかの里の忍に鋭く突きつけられる。
「この子に何をした?」
返答次第では只では置かぬ、と言うことを暗に匂わせた。
「まあ、待て。落ち着け。」
先ほど、第一声を発した年配の忍が手でカカシを制する。
「我々は、その子に何もしていない。」
カカシは面の下から無言で相手を睨みつけた。
「本当だ。第一、我々は木の葉と同盟を結んでいる里の忍だ。」
イルカのしている額宛のマークを見て、相手はカカシもイルカも木の葉の里の忍だと察したらしい。
年配の忍が里の名を言うとカカシの殺気は少しだけ緩んだ。
その里と同盟を結んでいることはカカシも知っていた。
「実はな。」
年配の忍は渋い顔をする。
「信じてもらえないかもしれないが。」
「何を?」
「その子は自分で転んで気を失ったんだ。」
「・・・・・・え。」
その忍の話は、こうだった。
「その子は我々を見て敵だと思い違いしたらしい。思い違いした、その子は背中の刀を抜こうとしてバランスを失い、そして鞘から刀を抜く時に刀の柄を後頭部にぶつけて、更に地面に倒れた拍子に後頭部を、もう一回地面にぶつけた・・・。」
再度、年配の忍は言った。
「信じてもらえないかもしれないが・・・。」
本当なんだ、と弁解する。
「目の前で見ていた我々も信じられないような光景だったからな。」
どっとカカシの体から力が抜けた。
所謂、脱力というものだ。
はあ、と溜息交じりの息を吐く。
「・・・いや、信じるよ。この子に限っては有り得る話だ。」
いかにもイルカならやりそうだ、とカカシは思った。
長刀もイルカの体には大きすぎたし・・・。
だから長刀が鞘から抜けていたのだ。
イルカは自分で勝手に転んで気を失った。
それが事実らしい。
全く、もう、とカカシは安心半分、呆れ半分で腕に抱いたイルカを見つめた。
「・・・心配かけて。困った子だねえ。」
しかし呟いた言葉は慈しみが含まれている。
そしてイルカの、間が抜けなところも可愛いなあと思ったのだ。
カカシの殺気も自然と消えていった。
年配の忍はカカシの殺気が収まったのを見ると、ほっとしたように一息つく。
そして他の仲間たちに先に行くように指示した。
「あんたは行かないの?」
年配の忍が留まるのを不審気にカカシは見る。
「いや、な。ちょっと気になることがあってだな。」
その忍はカカシに近寄ってきた。
正確にはイルカにだが。
近寄ってきた忍は、イルカの手首を取った。
ほっそりとした手首に今は力がない。
「この子のことだが・・・。」
言いかけた年配の忍の言葉をカカシは強い調子で遮った。
「ちょっと!」
「なんだ?」
「うちの子に触らないでよ!」
イルカの手首を触られたことに何故か腹が立ったのだ。
見知らぬ相手にイルカを触られたくない。
自分が抱き上げているのに、尚更だ。
その感情は独占欲からくるものだったがカカシは気がついていない。
「うちの子?」
年配の忍はイルカの手を離して、驚いたようにカカシを見る。
「・・・ということは、この子は、お前の子供なのか?若そうに見えるが、こんな大きな子供がいるなんてなあ。」
「お父さんだったのか。」と感心したように頷いていた。
「あのねえ!」
おかしな勘違いをされてカカシは声を少しだけ荒げる。
「うちの子っていうのは『うちの里の子』っていうことだよ。こんな大きな子供が俺にいるわけないでしょうが!俺はまだ、ピチピチの十七歳だってのに!」
「それは、すまなかったな。」
年配の忍は素直に謝ってから、余計なことを口にした。
「ところで自分で自分のことを『ピチピチ』と言って恥ずかしくないものなのか?」
今時の若者は、それが普通なのか?と首を傾げている。
「いいでしょ、言っても・・・。」
指摘されると妙に恥ずかしくなりカカシの米神は、ぴくぴくと引き攣ったのだが・・・。
そんな周囲の気配に気が付くことなくイルカは安全なカカシの腕の中で守られて、安心して気を失っていたのだった。
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