うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子46
イルカの言葉にカカシは暫し、手当てする手を止めた。
カカシは、まじまじとイルカを見つめる。
その視線に、途端、イルカは恥ずかしくなった。
自分は何を言っているんだろう、と後悔が押し寄せる。
「あの、カカシさん。」
今のなし、とイルカが言おうとするとカカシの目元が緩んだ。
そして言ったのだ。
「そうだよ。今頃、気づいたの?」
嬉しそうに微笑んだカカシは手当てしていた治療用具を置くと、すすっとイルカの目の前に来た。
「ずっとイルカが好きだって言っていたでしょ、俺。」
カカシの両手がイルカに伸びてきて、イルカの両頬を挟む。
その手は、あったかくて触れていると安心感が押し寄せてくる。
「やっと気づいてくれたんだね。」
その声は、ひどく甘くイルカには聞こえた。
顔つきもイルカが今までに見たことのないような・・・。
なんというか、大人の男性としての雰囲気漂うカカシになっている。
「・・・俺。」
そんなカカシの雰囲気にのまれて、心臓が早鐘を打つ中、イルカは掠れた声を出した。
多分、イルカの心の変化をカカシは俊敏に読み取ったのだ。
今までの好きと今の好きとの違いを。
自分のことが好きなのか、とイルカがカカシに言ったのは勿論、家族、兄弟のような好きではなく。
その延長線上には恋愛という要素を含む好きだということ。
怪我するイルカを手当てするカカシの手つきや言葉、仕草からイルカは、そう思ったのだ。
カカシはイルカのことが好きなのじゃないか、と。
恋人に対するような好きという気持ちをカカシはイルカに抱いているのではないのか、と。
しかし、いざ言葉に出してみると恥ずかしいものである。
カカシに両手で頬を挟まれて顔を凝視されると逃げ出したくなってきた。
顔も知らず、熱を帯びている。
きっと赤くなっているに違いない。
「・・・俺。」
イルカは、もう一度言った。
俺、の後に何て言えばいいのだろう。
優しくカカシに見つめれて言葉が出てこない。
そのまま、カカシとイルカは時が止まったかのように見詰め合っていた。
先に時を動かしたのはカカシだった。
ふっと笑ったカカシはイルカの顔から手を離すと何事もなかったのかのように手当てを再開した。
「他に痛いところはない?」
こくこくとイルカは、急いで首を縦に振る。
「今日はお風呂はやめて体を拭くくらいにしておきなさいよ。」
「・・・うん。」
やっとイルカは声を出すことが出来た。
カカシは、にっこりと笑ってイルカの頭を撫でてくる。
「いい子いい子。」と幼い子供を、あやすように撫でてきた。
「俺、子供じゃない。」
ちょっと膨れたイルカが抗議するとカカシは、にやっと笑った。
今度は優しいだけじゃなくて、ちょっと人が悪そうな笑みだ。
「まだまだ、子供でしょ、イルカは。」
「どうして。」
「それはね。」
こつんとカカシは自分の額をイルカの頭にぶつけてきた。
「好きだってことに、やっと気がついてくれたけど、その好きには色んな意味があることが、まだまだ分かってないってこと。」
「色んな意味?」
「そう、色んな意味。」
「どんな?」
「それはねえ。」
ひそっとカカシはイルカの耳に囁いた。
「キスしたり抱き合ったり。」
「キス・・・。」
それを聞いてイルカは反射的にカカシから身を引いてしまった。
警戒するようにカカシを窺う。
祭りの晩のことを思い出したのだ。
あれもキス、だったのかな・・・。
カカシのことは好きだけど、怖い思いをしたのを思い出すと身が竦んでしまう。
それはイルカが子供だからだろうか。
イルカの怯えを察したのか、カカシはイルカから少し離れた。
ちょっとだけカカシが悲しそうに見える。
カカシの吐息と共に言葉が漏れた。
「ごめんね。」
イルカの手当てが終わりカカシが治療用具を片付けながら言う。
「俺、好きな子には心も体も傷ついてほしくない、と思っていたんだけど。」
項垂れたカカシの肩が下がる。
「それなのに俺がしたことでイルカは傷ついて・・・。」
馬鹿だなあ、俺って、と自分のことを自嘲していた。
「でもね。」
カカシは真剣な口調で、真摯な眼差しをイルカに向けた。
「イルカのことは本当に好きだから、それだけは信じて。」
必死に訴えてくる。
「大事にするから、だから・・・。」
緊張しているのか、ごくりとカカシは唾を飲んだ。
「だから、あの、イルカ。」
カカシの顔が薄っすらと赤みを帯びている。
「イルカ、ええと・・・。」
珍しく照れているのか、カカシは体を揺すって、もじもじとしていた。
そんなカカシが可愛く見えてイルカは、くすっと笑ってしまう。
「カカシさん、可愛い〜。」
「イルカの方が可愛いって!」
すぐさま、カカシが反論してきた。
「考えて見れば初めて会った時から可愛いと思っていたんだ。だから構いたくなって、だから一緒にいたくなって、ええとだから。」
焦っているのか、だからだからとカカシは繰り返している。
「だから・・・。」
「だから?」
からかうようにイルカが言うとカカシは、ぐっと身を乗り出してきた。
「だから、イルカのことが好きだから。」
この頃にはカカシの顔は真っ赤になっていた。
「大好きだから、俺の恋人になってほしい!」
そう告白してきたのだった。
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