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うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子43




人目に触れる場所で抱きついているのに気がついたイルカは、はっと正気に返った。
ひどく恥ずかしい。
こんな風に誰かを求めて抱きつくなんて、両親以来だ。
それに以前、カカシに無理やり力づくで押さえられた時に感じた恐怖は、もうない。
ただ、安心するばかりだ。
ずっと抱きしめていてほしい、と思ったものの、やはり、ここは往来で人目がある。
「あの、カカシさん。」
放れようとカカシの体を押してみるが、びくともしない。
がっちりとカカシに腕の中にイルカの体は取り込まれている。



放れられないと分かると、ますます恥ずかしさは増してきた。
誰かに見られたら・・・、と焦ってしまう。
意識してないのに頬が熱くなってくる。
「カカシさん、は、放してもらえませんか。」
「いやだ。」
イルカを抱きしめたままカカシは、ふるふると首を振る。
「すっごく久しぶりにイルカを抱きしめたのに。」
放すどころか逆に、力を込めてきた。
「あの一件があってから、もうイルカから俺に抱きついてくることはないと覚悟はしていたのに。」
あの一件とは、カカシが酔ってイルカに無理やりした件だろう。
イルカだけではなく、カカシも気にしていたのだ。
それどころか、ずっと罪悪感を抱いていた。
でもイルカの傍にいてくれた。



「俺・・・。」
イルカは言葉に詰まる。
「カカシさんのこと・・・。」
カカシのことが何だろう。
その後の言葉が出てこない。
どうしよう、と思ったところでカカシが、すっとイルカから放れた。
ちょっと、ほっとする。
ほっとして思わず笑みを浮かべるとカカシも笑みを帰してくれた。
「帰ろうか、イルカ。」
何事もなかったかのようにカカシは言ってイルカに帰路を促す。
「うん。」
頷いたイルカはカカシの横に並んで再び、歩き始めたのだった。



歩くカカシから小さな声が聞こえた。
「今は、これでいいかなあ。」
これでいい?
「他の誰かと仲良くしていたら嫌だということが分かってもらえたからねえ。」
なんだかカカシが自分自身に言い聞かせているような口調だ。
なんのことかイルカには分からない。
「そういえば。」
イルカは、さっきのお兄さんが言った言葉を思い出していた。
鬼、と言葉。
鬼とは何なのだろう?
ホラー映画をよく見るイルカは好奇心で訊いてしまう。



「お兄さんが『鬼』って言っていたけど、なんのことなの?」
「あー、それ。」
カカシが、途端に渋い顔になった。
「俺と話していた女の人がいたでしょ。あいつのことだよ。」
「あの人が。」
あんな綺麗な人が、と驚いた顔をするカカシは、あっけらかんと言い放った。
「怒ると、めっちゃくちゃ怖いから『鬼』って皆は陰で呼んでいる。」
「でも、すごく綺麗な人だよ。」
イルカが言い募るとカカシは手を横に振った。
「綺麗〜?綺麗って言ったって、あいつは外見は若いけど、本当はイルカの倍も年を取ってるんだ〜よ。おばさんな〜の。」
「そうなの?」
カカシに、そんなこと言われてもイルカは、ぴんとこない。
綺麗だったら年なんて関係ないんじゃないかなあとか、女の人の年齢の話はしてはいけないんじゃないのかなあ、と思ったりする。
そこら辺の知識は中忍になるまでに身につけていた。
ついでに、そんな怖い人のことを、おばさんなんて言ったりしてカカシさんは大丈夫なのかなあ、と心密かに心配していた。



家に着くとイルカは夕飯の準備をカカシとすることにした。
と、いっても定番になっているカレーだけど。
カカシの作るカレーがイルカは実は好きである。
相変わらず甘口のカレーが好きであるが、カカシが作ってくれるとカレーの甘さだけではない甘さがあるような気がする。
ほんわかした気持ちになるのだ。
カカシと一緒に食べている所為もあるかもしれない。



「カカシさん、俺、野菜切る!」
張り切ってイルカが申し出るとカカシが微妙な顔をした。
「・・・イルカが切るの?」
「うん。人参とか切りたい。」
「人参ねえ。」
包丁を持ってカカシは考えている。
そして言った。
「やめたほうがいいんじゃない。」
「えー。」
「だって、前に大根切って、とんでもないことになっていたでしょ。」
だいぶ前のことをカカシは、しっかりと覚えていた。
料理に不慣れなイルカが、初めて料理に挑戦して、派手に指を切り血染めの大根を作り出したことを。



「平気だって。」
イルカは胸を張った。
「中忍になってから任務でも刃物を扱うようになったんだし、時々は家でも包丁使ってみたりしているんだから。」
「・・・何に包丁使っているの?」
不安そうにカカシは訊く。
自信を持ってイルカは答えた。
「アイスを切るとき!」
「アイス?」
カカシが眉を潜めて聞き返してくる。
「ほら、細長くて常温だと中がジュースになっているのがあるでしょう?あれを凍らして半分に折って食べるんだけど、上手く半分に折れなかった時に包丁で切るんだよ。」
「ああ。」
イルカの説明で、なんとかカカシは分かったようだ。
「子供向けの氷菓子ね。」
手ごろな値段で買い求めやすく、何本か纏めて入って売られている。



「それは分かったけど。」
やっぱりカカシは眉を潜めていた。
「それって、包丁を使う内に入らないんじゃないの?」と言いながらも「まあ、何事にも初めてってのは付き物だから。」とイルカに包丁を持たせてくれた。
まな板の上にカカシが人参を置く。
因みに皮はカカシが既に剥き終わっている。
「じゃあ、これ、半分に切ってみて。」
「はーい。」と返事をしたイルカは、どきどきしながら包丁を振り上げ、下ろした。
ざくっ。
人参の切れる、軽快な音がした。
同時にカカシとイルカの声もした。
「切れた!」
「切れた〜。」
確かに人参は切れていた。
そしてイルカの指も切れていた、ちょこっとだけ。



左手のイルカの人差し指に小さな血の玉が浮かび上がる。
小さな傷から血が出ているようだった。
「だから言ったのに〜。」
はあ、と溜息を吐いたカカシはイルカの手を取る。
傷が出来た指を自分の口元に持ってくると、ぺろっと舐めた。
舐めてから、おもむろにイルカの指を自分の口に含む。
それはイルカにとって衝撃的な光景だった。
何の躊躇いもなくカカシがイルカの指を口に含んでいる。



衝撃で動けなくなっているイルカの指をカカシは口から出すと「手当てをしなきゃ。」と治療用具がある場所へとイルカを連れて行く。
手際よく絆創膏を取り出すとイルカの指に、ぺたりと貼った。
「これでよし、と。ご飯が出来るまでイルカはテレビでも見て大人しくしていなさい。」
イルカの頭を一撫でするとカカシは台所へと戻ってしまった。
料理の続きに取り掛かっている。
「な、何、今の。」
余りにも自然なカカシの一連の動作にイルカは混乱していた。
「え、こういうの普通なの?」
絆創膏を貼られた自分の指を見る。
この指がカカシさんの口に・・・。
指を見つめるイルカの顔は薄っすらと赤みが差していたのだった。





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