うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子40
次の日。
休みだったイルカは同じく休みであったカカシと買物に里に中に出かけることになっていた。
カカシが布団を買うから付き合ってくれ、と昨夜、言ったからである。
朝食の席でイルカは訊いた。
「ねえ、カカシさん。」
「ん?なに。」
カカシは眠そうな目をして欠伸をしていた。
長い欠伸がカカシの口から出る。
昨日、任務から帰って相当、疲れているらしい。
そんなカカシを見ているとイルカは申し訳なくなってしまう。
昨夜はカカシを床に寝せてしまったからである。
「任務で疲れているんでしょ。」
「まあ、疲れてはいるけどね〜。」
カカシを床に寝せてしまった原因はイルカにある。
自分がカカシを心のどこかで怖がっているのをカカシが知ってしまったらしいとイルカは察した。
だから別々に寝ようとカカシから提案された。
大丈夫だと思っていも背後から忍び寄られると、どきりとするのだ。
体が反射的に反応してしまって、自分でもどうにもならない。
カカシが本当は優しい人なのは、よく解っている。
そんな人がお酒を飲んで豹変したのが、すごく怖くて信じられないのも事実だが・・・。
いつまでも怖がっていたらカカシさんに悪い、とイルカは思っていた。
あんなことをされたのは自分は初めてだったけど・・・。
朝食の牛乳を飲みながらイルカは考えた。
きっと大人の世界では頻繁に起こっていることかもしれない、と。
カカシさんも二十歳で成人しているし。
自分の知らないところで他の誰かと、例えば恋人のような人とそんなことをしているかも、と考えると寂しくて胸が痛くなる。
一人取り残されたような感覚に陥ってしまうのだ。
だからイルカはカカシに恋人の存在を訊いてしまった。
カカシは恋人はいないと宣言していた。
でも、好きな人はいると言っていた。
しかも、それはイルカの知っている人だと言う。
誰だろう?
考えても判らなかった。
「イルカ。」
呼びかけられて、はっとなる。
考え込んでいたイルカにカカシが訝しげな目を向けていた。
「どしたの?話の途中で黙り込んじゃって。」
「え、ああ。」
慌ててコップの中の牛乳を飲み干してイルカは話を戻した。
「カカシさん、疲れているみたいだし今日は買物やめて寝ていたら、って思って。」
「ああ、大丈夫大丈夫。」
大きな欠伸をしながらカカシは答える。
眠気覚ましに飲んでいたコーヒーを、がぶりと飲み、苦さに顔を顰めていた。
「久しぶりに里に帰ってきてのイルカとの外出だし。」
にこっと微笑みかけられた。
カカシは何気なく笑っただけなのにイルカには、すごくカッコよく見える。
これが大人の魅力ってやつかなあ。
ぼんやり、そんなことを考えた。
カッコいいカカシは言う。
「イルカと出かけるの、楽しみにしてるの、俺。」
「そ、そう。なら、いいけど。」
イルカを見つめるカカシの目が、すごく優しく思えて・・・。
どきどきする心臓を密かに宥めながらイルカは急いで朝食を食べ終えたのだった。
朝食を食べ終えてから二人、そろって家を出た。
外は天気がよく風が吹いていて、気持ちがいい。
外に出ると、うーんとカカシは伸びをした。
「ああ、晴れていて気分がいいねえ。」
頷くとカカシが、躊躇いがちにイルカに手を伸ばしてきた。
大きな手だ。
強く逞しい。
こわごわ、手を伸ばしてカカシの手に触れると柔らかくイルカの手を包み込んできた。
カカシを見上げるとイルカを見て嬉しそうにしている。
「じゃ、行こっか。」
「うん!」
晴れた空の下、カカシと手を繋ぎながら、のんびりと里中に向かって歩き始めた。
程なくして、里中、店がたくさん立ち並ぶ場所に着いた。
店がたくさんあるということは、人もたくさん集まっているということでもある。
「すごい人だねえ。」
感心したような呆れたようなカカシの声がした。
「ここは、なんでも手に入るけど人が多過ぎるのがネックだよねえ。」
そんなことを呟いている。
だけどもカカシは人ごみの中で、さり気なくイルカを人に当たらぬように庇ってくれたりと配慮してくれて、そんなところがカカシは大人だなあとイルカは感じた。
ちゃんと子供のイルカのことを思ってくれている。
まあ、子供といっても十六だけど・・・。
充分、大人の領域に達していると自分では思っているのだが、カカシの前だとイルカは子供っぽさが露呈してしまう。
人ごみの中でイルカの手を引いてくれるカカシを見ながらイルカは、つくづく思った。
早く大人になりたいなあ。
色々な店を冷やかしがてら見て、カカシの目当ての物を買った時には、もう昼時になっていた。
「混んでいると大変だね。」
荷物を小脇に抱えたカカシが、ふうと息を吐く。
「でも、俺、人がたくさんいるの好きだな。」
イルカは人ごみが嫌いではない。
「賑やかなのっていいよね。」
冷やかしがてら見た店でカカシの買ってもらった服を大事そうに抱えてイルカは言った。
服は偶々、通りかかった服屋の店先でカカシが「これはイルカに似合う!」と品定めを始めて楽しそうに選んで買ってしまったのだ。
「可愛い服ばかりだからイルカに似合うよ〜。今度、着て見せてね!」
大変満足そうだった。
「そう?イルカは人ごみが苦手じゃないんだね。」
ぽんとイルカの頭に手を置いてカカシは言った。
「俺は人ごみ苦手〜。だって人が多いんだもん。」
分かったような分からぬような理由と言ってカカシは肩を竦めた。
「もう昼だし、お昼ご飯、食べていこうか?俺、腹減っちゃったな〜。」
イルカはどう?とカカシに訊かれてイルカは同意するように首を縦に振る。
「俺もお腹、空いたかも。」
「かも、か〜。」とカカシは苦笑して「じゃあ、昼飯食べに行くか。」とイルカを誘った。
連れ立って昼を食べに行こうとした時だ。
どこからか涼やかな声がした。
「カカシ。」
カカシの名を呼ぶ女性の声。
振り向くと一人の妙齢な女性が立っていた。
すっと切れ味鋭い刃物のような冴えた雰囲気を漂わせている。
それでいて、女性ならではの、たおやかな雰囲気も合わせ持っていた。
所謂、大人の女性だ。
「あんたか。」
盛大に眉を顰めたカカシに女性は薄く笑った。
「あら、その態度はご挨拶ね。」
「俺、休みなんだけど。」
「私だって休みよ、でも重要な連絡事項があるから仕方なく伝えに来たのよ。」
カカシと女性は仕事仲間のようだった。
「ったく、しょうがないな〜。」
ばりばりと頭を掻いたカカシはイルカに「ちょっとだけ待っててくれる?」と言い置くと人ごみから少し離れた木の下に行ってしまった、その女性と二人で。
女性を伴っているカカシはイルカの知らない人に見えた。
大人の男性と女性。
イルカの入り込めない世界を醸し出している。
そしてイルカの目には二人は、まるで恋人同士のように映った。
カカシと女性は親しそうに何かを話している。
そんな二人と見ているイルカは・・・。
突然、強烈な寂しさが襲ってきて、胸を締め付けたのだった。
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