うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子35
「一応、訊くがどうだった?」
仲間の一人が気遣うようにカカシに訊く。
「俺、酔ってた、祭りの晩・・・。」
「ああ、で?」
「初めてビールなんて飲んだもんだから記憶が飛んでいたみたい・・・。」
「ふーん。」
「酔っている俺をイルカが家まで連れ帰ってくれて・・・。」
「・・・へえ。」
「それで、家に帰ってベッドに横になってイルカの手を掴んでベッドに引っ張り込んで・・・。」
「あの、だな・・・。その先は無理に言わなくていいぞ?」
「あの時何を考えていたのか今となっては、さっぱり解らないけど・・・。俺、嫌がるイルカを・・・。」
「その先は言っていいのか!おい!」
「嫌がるイルカを腕に抱きしめて、すっごい嬉しそうにキスマーク付けていた・・・。」
言い終わるとカカシは項垂れた。
「・・・最悪だ。」と呟きが漏れる。
その声には絶望的な響きが、こもっていた。
「あんなに嫌だ、やめてってイルカは言っているのに俺は止めないで・・・。」
はあとカカシの口から溜息も漏れた。
「俺のこと怖がるはずだよ・・・。あんなことされたら怖がるよね、普通は。力で捻じ伏せるなんて最悪だ、俺・・・。」
深い後悔が滲み出ている。
カカシの口から溜息が何度も吐かれた。
そんなカカシを何と言って慰めたものやら・・・。
重苦しい空気が辺り一面に漂う。
「なんてひどいことをイルカにしたんだろう。」
カカシは海より深く反省しているようであった。
暗部たちは、そんなカカシを気の毒そうに見つめて、そして・・・。
「じゃあ、次の作戦の内容だが・・・。」と話を切り替え、この場を逃れようとした。
しかし、逃れさせないのがカカシである。
「ちょっと、待ったあ!ここまで俺に話させといて、何か助言はないわけ、助言は?」
「え、助言?」
「適切なアドバイスとかないの?」
「でも、俺たち、無理に話さなくていいって言ったよな?」
暗部の仲間の一人が言うと皆が頷いた。
「言った言った。」
「確かに言った。」
皆が同意する。
「とりあえず俺たち仲間でしょ!」
カカシが正論を持ち出してきた。
「仲間が困っていたら助けるのが仲間じゃない。」
「まあ、そうだが・・・。」
「でも、個人のプライベートに関することだし・・・。」
「この際、それは遥か彼方に置いといて。なんでもいいからアドバイスしてよ!」
半ば訴えるようにカカシが言うと、誰かがカカシに訊いてきた。
「カカシが酔っ払ってまで、まあ、ちびっ子にそんなことするって事は、当然、ちびっ子のことが好きなんだよな?」
「え、好き?好きって・・・。」
いきなり、そんなことを言われてカカシは戸惑う。
「そりゃあ、イルカは可愛いし、いつも一緒にいたいくらい好きだけど・・・。」
好きの意味が、いまいち解ってないようである。
「好きっていうのは、恋愛感情を含むものだぞ。」
「恋愛・・・。」
「つまり男女間で言えば結婚を意味するようなものだ。」
「結婚・・・。」
「カカシとちびっ子は同性だから恋人になるかな?」
「恋人・・・。」
そんな単語を突きつけられてカカシは困惑している。
「イルカのことは好きだけど恋愛とか恋人なんて。」
カカシは何かを振り払うように首を振る。
「そんなこと考えたこともないよ。」
珍しく気弱な声だった。
「ただ、可愛い子だなあと思っているだけで・・・。」
「なら、なんとも思ってない、あの子にカカシは悪戯にキスマーク付けたって訳か?」
「酷いな〜。」
「言うならば、何も知らない初心な子を弄んだってことか。」
「相手は、まだ子供なのに。」
「しかも酔っ払って覚えてなかったし。」
「無理やりだしな。」
そんなことを指摘されてカカシは、ぐうの音も出ない。
決定的だったのが次の言葉だった。
「最低だな!」
声を揃えて言われてカカシは撃沈したのだった。
「そ、れは俺も悪いと思っているし、心から反省して後悔もしているよ。」
できたら、今すぐにでもイルカに会って謝りたい。
怖がらせるつもりは微塵もなかったし、今もない。
イルカのことは可愛いし大事にしたいと思っているのは本当だ。
でも会わせる顔がない・・・。
何を、どう言えば自分の気持ちをイルカに伝えられるのか自信がない。
どうして、あんなことしたのか、と訊かれれば上手く応えられるとは到底、思えなかった。
「まあ、あれだ。」
カカシを元気付けるように仲間の一人がカカシの肩を叩いた。
「多分、カカシは『気づいてない症候群』だ。カカシは、まだ自分の気持ちに気がついてないだけだろう。」
そんなことを言い出した。
「何、それ?」
眉を顰めたカカシが訊くと、肩を叩いた暗部は得意げに語りだした。
「片思いによくある傾向で、恋しいあの人見た時、胸に湧き上がる甘酸っぱい気持ちは何だろうと思って考えて、恋だと気がついた時には恋しい相手は他の誰かとくっ付いて、自分は涙を飲むという・・・。そんな感じのやつだ。」
「最終的には結ばれないってこと?」
「・・・そうとも言える。」
「そうとしか言えないじゃない。」
容赦ないカカシの突っ込みにカカシの肩を叩いた暗部は、ふっと遠くを見る。
「片思いのベテランになると、日常茶飯事の出来事なんだよな〜。」と寂しげに笑った。
「まあまあ。」
見かねた誰かが助け舟を出してきた。
「カカシが助言やアドバイスを求める気持ちも解らんでもないがな・・・。」
苦笑いをする。
「ここにいる者たちは皆、暗部歴が長い者ばかりだ。」
自分も含めて、と断りをいれてから、ある事実をカカシに告げた。
「俺たちはな、仕事仕事で忙しくて遊ぶ暇もなく、あるのは高い戦闘能力と任務の報酬で貯めた金だけ。おまけにシャイで奥手な連中ばっかりで・・・。」
ははは、と乾いた笑いが聞こえる。
「恋愛経験が碌にない者ばっかりなんだよな〜。」
だから助言もアドバイスもできないと暗に言われたようなものだ。
ちょっと悲しい暗部の現実だった。
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