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うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子33




休んでいくことを勧めたものの、イルカは黙って膝を抱えて座っている。
押し黙って正面を見据え、何事かを深く考えているように見えた。
以前、見たような明るさは今は皆無だった。
「あー、えっとな。」
秋祭りの夜、イルカと一緒にいた暗部は隣に腰を下ろしていたのだが沈黙に耐えられず、イルカに無理やり話しかけた。
「・・・・・・元気か?」
こくっとイルカは首を微かに縦に振る。
「そ、そうか、それは重畳。あー、そういえば重畳と言えば、木の葉の里の一番高い山の頂上の眺めは重畳だな!」
気がつけば、しょうもないことを口走っていた。
イルカは特に反応も示さない。



どうしたらいいんだ・・・。
そっと助けを求めて周りの仲間を見渡せば、皆、一様に二人に背を向けている。
しかし二人の会話に、ばっちり聞き耳を立てているのは見てとれた。
誰か俺を助けろ!という心の叫びは届きそうもない。
イルカに話しかけていた暗部は思い切って言ってみた。
「えええと、あー、その・・・。もしかして、何か悩みでもあるのか?」
その言葉に、はっとしたようにイルカが隣の暗部を見つめる。
イルカの表情は、ひどく思い悩んでいるような風だった。
暗部を見つめる瞳は切羽詰っている。
その時、暗部は心の底から、失敗した!と思ったのは言うまでもない。
だって、そんな目で見られたら、つい・・・。
「俺でよければ話を聞くぞ?」と言ってしまうこと間違いなしだったからである。
そして本当に、その言葉を言ってしまったのであった。



ちょうど、その時、飯が炊けた。
暗部は一旦、イルカの元を離れて握り飯を幾つかと茶を持って戻ってきた。
「食べるか?」
出来立ての米で握った、握り飯を差し出されてもイルカは首を横に振る。
「そうか・・・。じゃあ、俺は食べるからな。」
「うん・・・。」
イルカは握り飯を食べる暗部の横で、ぽつりぽつりと話し始めた。
「あの・・・。」
「ん、なんだ?」
「大人の人って、お酒を飲むと酔っ払うでしょ?」
「ああ、まあな。」
「酔っ払うと・・・。酔っ払った時のことって覚えてないの?」
「うーん、人それぞれかな。若しくは酒を飲んだ量にもよるが。」
「そうなんだ、でも・・・。」と言いかけてイルカは言い掛けて口を噤んだ。



小さい声が聞こえた。
「酔っ払った人って・・・。」
目を伏せる。
「すごく怖くなるよね。」
「なんだって!」
「普段は、とても優しい人なのに。どうして酔うと、あんなに怖くなるのかな・・・。」
独白のようなイルカの呟きだった。
握り飯を食べ終わった暗部はイルカの話を聞きながら、どう答えたもんかと考えていた。
場合によっては、とてもデリケートな心の部分に触れるからである。
多分、いや絶対、イルカが言っている普段は優しい人というのはカカシのことであろう。
そして、その人が酔って怖くなるというのは、どういうことだろうか?
考えれば考えるほど、ヤバイと思わせる要素が盛りだくさんである。



とりあえず暗部は茶を、ごくごくと飲み、最後の一口を口に含み、口元だけ上げていた面を下ろした。
その時、イルカは膝を深く抱え直し、顔を膝の間に埋め、細く白い項が曝け出された。
隣に座る暗部からはイルカの後ろの項が、よく見える。
イルカは髪を上に括っているので項を隠すものは何もない。
その跡は数日、経った後でも色濃く残っていた。
それを目にする暗部。
・・・あれは、もしかして、もしかすると。
酔った人が怖くなるってことは、まさか、まさか酔ったカカシがイルカを・・・。
イルカの項を見て、その考えに行き着いた暗部は思わず、面を被った状態で口の中を茶を噴いていた。



口には出さずとも心の中が恐慌状態である。
大荒れになっていた。
そして、その項を見たのは、その暗部だけではない。
背を向けつつも聞き耳は立てていた仲間の暗部が野次馬として、一瞬間で分身の術と瞬間移動の術を使って、中忍のイルカに気取られるようにイルカの背後に立ち項の跡を見ていた。
こんな時に無駄に能力を発揮してしまう暗部たちである。
イルカの項を見た暗部の何人かは、最初に見た暗部と同じく面の中で茶を噴いていた。
そして見た後は速やかに元の場所へと戻って行く。
皆が皆、触れれば壊れてしまうようなハートを持つ思春期のデリケートな悩みに触れたくないようであった。



イルカの隣の暗部は面の中で茶を噴いたものだから面の下から、ぽたぽたと噴いた茶が滴となって垂れていた。
被っている面の内側が濡れてしまって、非常に気持ちが悪い。
濡れた面をどうしようか、と考えている暗部の耳に、とんでもない言葉が飛び込んできた。
「それに、俺、もうすぐ死んじゃうんだ。」
唐突にイルカが別の話題を出してきたことには暗部は、たじろぐ。
「死?死ぬってことか?」
「そう。」
「なんでだ?」
「だって、暗部の面の下を見た人は呪われて死ぬんでしょう?俺、本当は二年前に暗部の人に今日と同じく食料を運んだ時、ある暗部の人の面の下を見ちゃったんだ。」
だから、とイルカは疲れたような息を吐いた。
「だから、もういいんだ。」
諦めきった口調だった。



「ちょっと、待て。暗部の面の下を見ると呪われて死ぬって、どこからの情報だ?」
イルカは口を閉じて話そうとしない。
「もしかして銀色の髪のやつが言ったのか?」
肯定もしなければ否定もしなかった。
カカシのやつ、くだらんことを言いやがって〜、と暗部は心の中で毒づく。
眉を顰めて暗部は宣言した。
「それは嘘だ。」
「嘘!」
弾かれたようにイルカは顔を上げた。
「嘘なの?ほんと?」
「本当だ。」と暗部は重々しく頷く。
「真っ赤な嘘だ。面の下を見たら呪われるなんて言っていたら、俺たち暗部は面を外して、自分の素顔を見たら全員呪われることになるだろ。」
「それは、そうだけど・・・。」
ひどく動揺したようなイルカは自分の忍服の襟を引っ張り、首元を暗部に見せた。
耳朶、首から鎖骨まで絆創膏が貼ってある。



イルカは貼ってある、たくさんの絆創膏を乱暴に次々と剥がした。
「ほら、ここにもここにも、こんなに変な跡がいっぱい!これって呪いのマークとかじゃないの?」
「そ、そんなんじゃない・・・。」
露になったイルカの首元には後ろの項と同じ跡が、ところ狭しと付けられていた。
そんな生々しい跡を見せられた暗部の方が逆に恥ずかしくなっている。
「それは呪いなんかじゃない。全然、違う。」
「じゃあ、なんなの?」
ずばり、イルカは訊いてきた。
「これって何?」
縋りつくように必死な目で暗部を見ている。



「な、何って・・・。何って言われても。」
訊かれた暗部は窮地に陥っている。
戦闘でも、これほど窮地に陥ったことはない。
そのままストレートに答えてもいいのか、それとも、ぼかして答えたほうがいいのか、答えないほうがいいのか・・・。
選択肢が色々と出てきたが決められない。
「ああ、うーん・・・。」
とりあえず、その暗部に出来たのは・・・。
イルカの手から剥がした絆創膏を取り上げると元の通りに、ぺたぺたと貼って跡を隠してやることだった。
「いいか、これは絶対に誰にも見せるなよ。」
「はい。」
「もし、見られても虫に刺されたって言い張るんだ。」
べたなことを教えていた。
「虫?これって虫刺されなの?」
「・・・ある意味、そうだ。」



暗部の言葉にイルカは首を傾げているが呪いではないことが解り、目に見えて表情が明るくなっていた。
「ああ、そうだ!」
暗部は逃げ道を、やっと見出した。
「そういや、銀髪のやつが帰ってくる頃だ。やつと色々、話してみたらどうだ?」
「えっ。」
さっとイルカの顔色が変わる。
「ううん、いい。」
手を顔の前で、ぶんぶんと振って辞退した。
「俺、もう帰ります。」
イルカは大きく頭を下げる。
「話を聞いてくれてありがとうございました。」
礼を述べると他の暗部たちにも頭を下げて、逃げるように里へと戻って行ってしまった。



イルカがいなくなったことで、どっと緊張が解れ、肩の力が抜ける暗部たちである。
「あー、びっくりした。」
「まさか、あんなことになっているなんてな。」
「でも、本当なのか、あれは。」
「だって見ただろう、あの跡を。」
「見た見た、ちびっ子の首に確かに付いていた・・・。」
そこで声が揃った。
「キスマーク。」



「へええ〜、何か面白い話してるじゃない?」
暗部たちの間を、ひゅううと殺気を伴った一陣の冷たい風が吹きぬけ、新たな緊張が訪れたのが知れた。
声がした方に目を向けると、そこには腕を組んだカカシが立っていたのだった。






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