うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子31
ひどい頭痛を感じてカカシは目が覚めた。
喉が渇いてしょうがない。
吐き気もする。
思わず言葉も出てしまった。
「うー、頭が痛い〜。」
この頭痛の正体は昨日、飲んだビールの所為だろう。
これが二日酔いってやつか・・・。
カカシは、がんがんとする頭を閉口しながら隣を見るとイルカの姿がない。
姿を探して視線を台所に向けるとイルカの後姿が見えた。
牛乳をコップに注いでいる。
その後ろ姿に声をかけた。
「おはよう、イルカ。」
イルカは振り向かずに朝の挨拶を返してくる。
いつもなら、きちんと顔を見てくるのに。
どうしてだろう、と考える前に、ひどい頭痛が襲ってきた。
・・・飲み物が欲しい。
イルカに飲み物を貰えないか、と頼むと自分が飲んでいる牛乳を、そのまま持ってきた。
「これでいい?」
だが近くまで来てもイルカはカカシを見ようとはしない。
不思議に思いながらコップを受け取る。
「うん、ありがとう。」
コップを受け取る時に指先が僅かに触れた。
するとイルカは雷に打たれたかのように、反射的にコップから手を離してしまったのだ。
二日酔いでも暗部であるカカシは落としたコップを素早く受け止めた。
中味が零れることはなかったが・・・。
それ以上に自分に対してのイルカの反応が過剰なことが気になった。
カカシに対して怯えているような気がする。
体調が悪いのかと思い額に手を当て熱を診ようとすると避けられた。
明らかに避けられた。
イルカは大丈夫だと言っているが本当に、そうなのだろうか。
しかし、本人が大丈夫だと言っている以上、無理強いは出来ずカカシは任務に行く準備をするイルカを見つめながら牛乳を口にした。
甘いのを覚悟して飲んだのに、甘さは一向に伝わってこない。
「あれ?」
カカシは声を上げる。
砂糖が入ってない・・・。
激甘な牛乳を好んで飲んでいたイルカなのに。
しかも、この牛乳はカカシの元に来る前にイルカが口を付けている。
いつの間に砂糖なしで牛乳が飲めるようになったか、と尋ねるとイルカは傍から見ても解るほど顔色を変えて動揺していた。
尋ねたことに、どう返答したらいいのか困っているようだった。
イルカの様子を見て、ふと思いついてカカシは別のことを尋ねてみた。
昨夜のことだ。
イルカのおかしな様子は、もしかして昨夜のことに関係しているのかもしれない。
自分は、だいぶ酔ってしまったようで境内でビールを飲み干したところから、はっきりとした記憶がなかった。
途切れ途切れに何かの場面らしきものは思い浮かぶのだが、酔ってから何があったのか、さっぱり分からない。
イルカに訊いてみると酔っ払った自分をイルカは家まで連れてきてくれたらしい。
相当、大変だったろうと思い素直に謝った。
するとイルカは首を横に振る。
「迷惑だなんて。」と謙虚なことを言っていた。
重ねて他に迷惑を掛けなかったか、と訊くとイルカの顔から、すっと表情が消えた。
やけに静かな声で言われた。
「・・・何も。」と。
カカシの顔を決して見ようとしない。
脇で握った拳が震えているようにも見える。
唇を噛み締めて何かを耐えているようだった。
カカシは、ぴんときた。
・・・何かがあったに違いない。
しかしイルカが言わないと言うことは言い出し難いことだということが容易に想像できる。
言わないというよりも言えないのか・・・。
カカシが、そんなことを考えているとイルカが早足で玄関に向かう。
急いで、この場を去ろうとするように。
行って来ます、というイルカに、行ってらっしゃいと言おうとしたカカシの目にあるものが飛び込んできた。
イルカの首に貼ってある絆創膏だ。
細い首に、たくさん貼られてある。
イルカが靴を履こうと玄関先で屈んだ拍子に見えたのだ。
・・・・・・怪我?
不審に思いながら、そう訊いてみるとイルカは諾と答えた。
昨夜、下駄を履いて転んだ時に怪我をしたと言っている。
その答えに、なんとなく胸の中が、すっきりしないカカシであったが、そのままイルカは逃げるように家を飛び出して行ってしまった。
一人部屋に残されて頭痛に眉を顰めながら、昨夜のことを思い出そうとしてみたカカシであったが、どうしても思い出せない。
「あー、もう・・・。」
頭痛は、ますます酷くなるばかりだ。
「もう〜、酒なんて飲まない。」
空しく宣言してみたが聞く者は誰も居ない。
それよりも・・・。
カカシの顔は曇る。
「イルカ、どうしたんだろ・・・。」
顔色が冴えなくて目が真っ赤になっていた。
なんだかイルカは昨晩、寝てないような気がする。
そして何故かカカシに怯えている。
首に貼ってあった絆創膏。
何かが符合するするような気がしたのだが激しい頭痛が、それを遮った。
ついで吐き気も襲ってくる。
昨夜は何かいいことあったと思うんだけどな〜。
カカシは頭の片隅で、ぼんやりと思った。
自分の今朝の寝覚めは頭痛と吐き気は別として、気持ち的はすごく幸せな感じで。
逆にイルカは、ひどく憔悴していた。
昨夜、いったい何があったんだろう・・・。
イルカが夕方帰ってきたら訊いてみよう。
最初は言わないかもしれないが根気よく訊いてみれば応えてくれるはず。
そう思ったカカシの目に窓の外に飛ぶ白い小さな小鳥が見えた。
任務の伝達用の式だ。
暗部の任務だろう。
「え〜、こんな時に〜。」
心底、行きたくないと思いながらカカシは式に書かれた事に目を通す。
「場所は里から遠くないけど、日数が掛かるのか・・・。」
任務ならば行かなければならない。
ものすごく行きたくないが。
ものすごくイルカのことが気になるのだが。
深々と溜息と吐いたカカシはイルカにメモを残して、渋々、任務に行くことにしたのだった。
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