うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子24
※流血表現あり
次の日の朝。
爽やかな気分でイルカは目を覚ました。
ぐっすりと寝たので寝覚めはいい。
「よく寝たなあ。」
隣で眠るカカシを見ると眉間に皺を寄せて目を閉じている。
まだ眠っているようだ。
しっかりとイルカに腕枕はしてくれている。
そんなカカシを起こさぬようにイルカはカカシの腕の中から、そっと抜け出した。
今日も任務があるイルカは手早く着替えをする。
朝ご飯は簡単に済まそうと思ったイルカは冷蔵庫から牛乳を取り出した。
カカシから牛乳を飲むように言われてから、朝だけは牛乳を飲むことにしてみたのだ。
だが相変わらず牛乳の味が苦手というか、味気ないのが嫌だったので砂糖を、たっぷりと入れて飲んでいる。
甘い牛乳を好んで、イルカは飲んだ。
前に試してみた、炭酸のジュースを入れた牛乳より美味しい。
ごくごくと牛乳を飲んでいるとカカシが目を覚ましたようだった。
半分だけ開いた目でイルカを、ぼーっと見ている。
「あ、カカシさん。おはようございます。」
イルカが声を掛けるとカカシが欠伸交じりに「おはよ〜。」と返してきた。
その声は、どこか疲れている。
ぐったりとしているようだった。
「大丈夫、カカシさん。昨日、眠れなかったの?」
飲んでいる牛乳が入ったコップを片手にカカシに近づくとカカシは再び、欠伸をして首を振った。
「大丈夫・・・。少しは寝たから。」
明け方近くにね、と言葉が続いた。
明け方?
何か考え事でもしていたのかなあ、とイルカを首を捻る。
眠れないほど悩んでしまう悩み事でもあるのか、と思った。
「あー。何か、一口、飲み物くれないかな?」
ベッドの中からカカシが飲み物を所望してきたので、イルカは手に持っていた牛乳のコップをカカシに渡した。
「はい、どうぞ。」
「ありがと。」
コップを受け取ったカカシは、コップの中味を見て微笑んだ。
「あ、牛乳飲むようになったんだね。」
「うん。」
「そっか〜。大人になったね、イルカ。」
そう言って、一口、牛乳を口に含んだカカシが、途端に複雑な顔をした。
「・・・・・・これって、コンデンスミルク?」
コンデンスミルクとは牛乳を煮詰めて甘くしたものだ。
「ううん。」とイルカは首を振る。
そして、すらっと答えた。
「牛乳に砂糖を入れたものだよ。」
「砂糖って、何杯くらい入れたの?」
カカシは口の中の牛乳を、どうにか嚥下し、イルカにコップを返してきた。
顰め面をしている。
「えーっとね、いつも適当。コップの半分くらい入れるかな、砂糖。」
「コップの半分・・・。」
呟いてからカカシは、ぼふっと布団の海に沈んだ。
想像を超えた甘さに撃沈したらしい。
「・・・イルカ。今日、任務?」
「うん、そうだよ。」
「俺、休みだから一日寝ているから。」
カカシの声は気だるげで、今にも眠りに就こうとしている。
「あ、そうだ。カカシさん。」
思いついてイルカは訊いた。
「ん?」
答えるカカシの声は力がない。
「今日の夕飯、何、食べたい?」
イルカは疲れていると思われるカカシのために夕飯を作ってあげようと思って訊いてみたのだ。
「夕飯〜。ん〜、久しぶりに煮物とかかな〜。」
「煮物・・・。ってどんな?」
「大根とか蒟蒻とかを、ぐつぐつ煮て作るやつ〜。」
「そっか。分かった。」
ぐったりとしたまま、眠ってしまったカカシに布団を掛けるとイルカはカカシの寝顔を見つめた。
そういえば、カカシさんの眠った顔って見たことなかったな・・・。
それは、いつもイルカの方が早く眠ってしまうからである。
寝ているカカシの顔が意外にカッコいいということをイルカは発見した。
でも、とイルカは思う。
カカシさんて、カッコいいだけじゃないんだよな・・・。
すごく優しい。
そんなことを思って、カカシの寝顔を見つめるイルカの目も、また優しかったのだった。
夕方、任務を終えたイルカが家に帰るとカカシは、まだ眠っていた。
熟睡しているようである。
「よく寝るなあ。」と、ちょっとイルカは感心してしまった。
「余程、疲れているんだろうけど夜、眠れなくなったりしないのかな?」
見当違いの心配をしている。
「よし!じゃあ、カカシさんが寝ているうちに夕飯、作っちゃおう!」
腕まくりをしたイルカは任務の帰りに買ってきた食材を取り出すと調理に取り掛かった。
カカシが起きた時には夕飯が出来ていて、そして、びっくりさせてやろうと思ったのである。
「でも、どうやればいいのかな・・・。」
イルカの家に一通りの調理道具はあるのだが、実は使ったことが一度もなかった。
カカシが使っているのを見て、とりあえず揃えてみた、という感じだった。
イルカの普段の食事は白いご飯に、焼き物・・・。
それも魚や肉を焼いたりしているだけなので、本格的な調理を一切したことがない。
カカシが作ってくれたカレーも作ろうと何度も思ってはみたものの、いつも思っているだけで終わってしまっていた。
でも、今日はカレーを作る材料も買ってきている。
カカシのために作ってみようと思って。
イルカは右手には、ぎらりと光る包丁を持ち、まな板の上には白い大根を置いてみた。
「最初は切れば、いいんだよな・・・。」
緊張して、ごくりと唾を飲み込んだイルカはまな板の上の大根を睨む。
狙いを定め、えいやっと包丁を持った手を振り上げたイルカは正確に狙った場所に包丁を振り下ろした。
すっぱーんと大根が真ん中から、見事に真っ二つに切れた。
「やった!」
上手くいったと喜びに顔を輝かせたイルカであったが、次の瞬間、あっと声を上げた。
「・・・・・・大根が。」
その時である、後ろから慌てたような声が聞こえた。
「イルカ!どうしたの?」
飛び起きたカカシがベッドの上でイルカを見ている。
「血の匂いが・・・。」
「あー、うーんとね。」
イルカは苦笑いをしながらカカシを振り返った。
片手に僅かに血の付着した包丁、残った片手には赤くなった大根を持って。
ちょっとしたスプラッタ状態である。
白かった大根は真っ赤な血に染まっていた。
「その、切るの失敗しちゃったみたいで・・・。」
大根を持っているイルカの手は血に染まっている。
要するに大根を切る際に、勢い余って大根を押さえていた自分の指も切ってしまったのだ。
イルカの指からは血が溢れ、それが床に、ぽたぽたと落ちている。
「ねえ、カカシさん。これ、食べれるのかな?」
なのにイルカは食材の心配をしていた。
赤くなってしまった大根を心配そうに見ている。
「そ、そそそそ、そんなのいいから!血を止めなきゃ!」
一瞬で傍に来たカカシがイルカの指を、ぎゅっと押さえる。
イルカの包丁も大根も取り上げ、シンクに置いた。
「止血しないと!大丈夫?」
「・・・うん。ごめんね、夕飯作ってカカシさんを、びっくりさせようと思ったんだけど。」
「もう、充分びっくりしたから!」
カカシの適切な止血と処置のお陰で、程なくしてイルカの出血は治まった。
親指の腹を切っただけで他に傷はない。
「あー、びっくりした。」
イルカの傷口に薬を塗布し包帯を巻くとカカシは、ほっと安堵の息を吐いた。
「血の匂いがすると思って起きたらイルカが怪我しているなんて。」
寝起きのカカシにはインパクトが強かったらしい。
「ごめんなさい。」
調理の最初で失敗してしまったイルカは、しょげている。
「カカシさん疲れているみたいだったから、夕飯作ろうと思ったのに。」
計画は失敗してしまった。
「いいよ。気持ちだけで。」
カカシは項垂れたイルカの頭を、ぽんぽんと軽く叩いた。
「イルカの気持ちは、すごく解ったから。」
解っているからね、とカカシは慰めの言葉をかけてくる。
「イルカが俺のことを心配してくれたり気に掛けてくれたりするなんて、すごく嬉しいよ。」
その言葉に、恐る恐るといった感じでイルカは顔を上げて上目遣いでカカシを見た。
「・・・本当に?」
「本当です。」と言ったカカシの目には揺らぎがない。
「それからイルカが、ちゃんとご飯を食べて怪我をしないと、もっと嬉しい。」
カカシは微笑んでイルカを見ている。
胸の中が、ほわんと、あったかくなるような笑みだった。
そんなカカシにイルカは勇気付けられた。
顔を上げて、真っ直ぐにカカシを見る。
「俺も。」とイルカは素直に自分の気持ちを告げた。
「俺も・・・。カカシさんが心配してくれたり優しくしてくれたりすると、すごく嬉しくて安心する。」
「・・・安心ねえ。」
ぽつり、と呟くカカシ。
よっこらしょとカカシは立ち上がった。
「夕飯は俺が作るから、イルカは休んでいて。」
「はーい。」
イルカの返事を聞いてカカシはイルカの買ってきた食材をチェックする。
「イルカ、カレーの材料しかないけど。」
「今日の夕飯、カレーにしようと思って。」
「・・・さっきの大根はどうするつもりだったの?」
「カレーに入れて、ぐつぐつ煮込むつもりだったんだよ。」
ぐつぐつ煮込んだら煮物でしょ、と、あっけらかんとイルカは言う。
その答えに、ちょっと頭を抱えたカカシは・・・。
「食事は俺が作るから。」と宣言した。
因みに血に染まった大根を食べることはしなかったのであった。
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