うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子22
喜びの再会を果たしてカカシに抱きしめられて、嬉しくなったイルカだったが任務の移動中であることを思い出した。
「あ、俺・・・。」
任務が、と言い掛けるとカカシは驚いたように腕の中のイルカを、まじまじと見つめてきた。
「その忍服・・・。イルカ、中忍になったの?」
気がついてくれた。
イルカの服が中忍用になっていることに。
そのことにも嬉しくなる。
「うん!今年、試験に合格したんだよ!」
そう報告するとカカシは眩しそうに目を細めてイルカを見つめる。
「そうなんだ・・・。良かったねえ。」
おめでとう、と頭を撫でてくれた。
「ありがとう、カカシさん!で、俺、あの・・・。」
再び、任務が、と言おうとするとカカシは絶妙なタイミングで遮ってくる。
「すごく似合うよ、その服。カッコいいね!」なんて褒めてくれた。
「ほんと?」
にこっと笑うとカカシは「可愛い・・・。」と口の中でもごもごと言って、やたらイルカの頭を撫でてくる。
ついで、強い力で腕の中に抱え込まれた。
カカシに撫でられるのも抱きしめられるのも、とても好きだが、やっぱり今は任務中だ。
イルカの後ろで待っている仲間もいる。
「あの、カカシさん。俺、今、任務の途中なんで、もう行かなきゃ・・・。」
やっと言うことが出来た。
「えっ、そうなの?」
「うん。」
「任務か〜。」
そう言うカカシは明らかに、がっかりしたようである。
「任務なら、しょうがないよね。」
と、言いつつ腕の中から、中々、イルカを放そうとしない。
「せっかく、会えたのに。」
カカシは寂しそうに呟く。
「もっと、たくさんイルカと話したいのになあ。」
それを聞いたイルカは、いいことを思いついた。
「あっ!じゃあ、カカシさん、後で俺んち来たら?」
「え?」
「俺、夕方には任務が終わるから、うちで、ゆっくり話したらいいじゃん。」
「そ、そう?いいの?」
「もちろん!」
家でなら、ゆっくりと落ち着いてカカシと話すことが出来る。
名案だとイルカは思った。
カカシに任務が終わる大体の時間を告げ、自分の家を訪れるように言った。
「俺んち、覚えてるよね?」
「ああ・・・。うん、覚えているよ。」
「家でなら、ゆっくり話せるし。二人で!」
「あ・・・。そうだね、二人でね。」
「じゃ、そういうことで!」
また後で、とイルカが言うと今度は、すんなりとカカシの腕の拘束が解かれた。
「じゃーねー、カカシさん!」
軽く手をカカシに振って、イルカは仲間のところに戻った。
仲間のところに戻ると、当然、訊かれた。
「イルカ、あの人誰?」
「カカシさんだよ。」
「・・・って誰?」
「カカシさんはカカシさん。」
イルカの説明は要領を得ない。
「前に、とあることで知り合って、また会って話したりご飯食べたりした人。」
「・・・よく分からん。」
仲間は眉を潜めた。
「ねえねえ、それより『カカシ』って、あの木の葉の里の伝説の忍者のはたけカカシ?」
もう一人の仲間が別の話題を振ってきた。
「はたけカカシ?」
今度はイルカは訊く番だった。
「誰それ?」
「はたけカカシは、はたけカカシだよ。」
仲間の説明もイルカを大差がない。
しかし伝説だけは知っていた、かなり歪曲されたものを。
「はたけカカシって、すごい忍者で左目から炎や吹雪を出せて、地震や洪水を起こすことが出来るんだって。」
「左目って写輪眼っていうんだろ?その目で未来が視えるって誰かが言っていた。」
仲間はイルカを同じくらいの年頃で、不思議な話には興味津々、怖い話も大好きときていた。
「それに、すごい術が使えて城一つくらいは片手で持ち上げることが出来るんだって!」
「大きな湖の水を飲み干したこともあるんだって!」
「へええ。」
そんな話にイルカも目を輝かす。
「それでそれで?他には?」
「後は魔方陣から悪魔を呼び出したりしたこともあるって。」
話はカカシから全く違う方向に完全に、ずれてきていた。
「で、悪魔と対決して勝ったんだって〜。」
それから悪魔やら天使やらの話でイルカたちは盛り上がり、カカシの知らないところで着々と写輪眼のはたけカカシは伝説を作られていったのであった。
夕方、カカシがイルカの家を訪ねるとイルカは既に帰宅しているようだった。
昼間に交わしたイルカとの会話を思い出して、ちょっとどきどきとしてしまったカカシは、気を落ち着かせながら玄関の前に立つ。
イルカとの会話・・・。
『家でゆっくり』『二人で』なんて言われると余計なことまで考えてしまった。
イルカは他意はなく、言葉、そのまんまの意味で言ったに違いないのに。
成長したイルカの姿にも、どきどきしてしまっていた。
背が伸びていたが、体重は余り増えていないのが抱きしめた感触で判ってしまったし・・・。
食事はしていたのかとか怪我は完治したのかとか、他にも訊きたいという欲求が込み上げてきて里中で、たくさんの人の目に晒されるというのにイルカを自分の腕から放すことが出来なかった。
にこっと笑われると心臓が不自然なくらい速くなって思わず「可愛い・・・。」なんて口から出ていたし。
「落ち着け、俺!」
気合を入れるとカカシは玄関の扉をノックした。
ノックすると中から「はーい。」と返事が返ってきて扉が勢いよく開かれた。
「カカシさん!いらっしゃい!」
「あ、イルカ・・・。えっと、来ちゃった。」
躊躇いがちに声を出すとイルカが微笑んだ。
「待っていたんですよ。さ、どうぞ。」
イルカに促されて家の中に入ると、以前と左程変わってはおらず、少し物が増えていただけであった。
そのことに何故か少しだけ、ほっとする。
家の中は、いい匂いがしていた。
食べ物の匂いだ。
「イルカ・・・。もしかして、ご飯作ったの?」
「ご飯って言うほどのものじゃないけど・・・。」
照れたようにイルカが笑う。
イルカがご飯を作っている・・・。
ある種の感動を覚えながらカカシがイルカを見ていると、以前にもあった小さなテーブルにイルカが作ったものを運んできた。
「カカシさんと一緒に食べようと思って作って・・・。」
持ってきたのは焼きすぎたような感じの焼き魚と、それに白いご飯。
それだけだったけれども、イルカが食事を作るなんて、ましてや家で食べるなんて大きな進歩だとカカシは目頭が熱くなる。
「イルカ!」
「はい。」
「偉い!ご飯を食べるなんて!」
ご飯を食べるなんて、当たり前のことなのだがカカシは嬉しかった。
イルカの両肩を掴んで言えば、イルカは擽ったそうに肩を揺らす。
「やっぱ、お腹空くし・・・。二日か三日に一回くらいは、ご飯食べないと駄目だよね。」
「・・・・・・え。」
「お菓子とジュースだけじゃ、どうにも満腹にならない時があるし。」
それは成長期なのに栄養が足りてないということではないだろうか?
おまけにイルカの話し方では、食事を摂っている日と摂ってない日があるように思う。
「・・・あの、イルカくん?」
もしもし、とカカシはイルカの顔を覗き込んだ。
「今日の朝は何食べたの?」
イルカが、さっとカカシから顔を逸らした。
「朝は・・・。えーと、何食べたかな〜。忘れました・・・。」
「じゃ、昨日の夕飯は?」
「・・・それも忘れました。」
「ってか、そもそも食べたの、今日の朝食も昨日の夕飯も?」
昼食は任務の仲間を一緒だから何か食べているに違いない、とカカシは考えた。
「まあまあまあ、いいじゃないですか。」
イルカは誤魔化すように、へへへと笑うと、有ろう事かカカシに抱きついてきた。
「再開を祝して俺、ご飯、作ったんで、あったかいうちに食べましょう。」
誤魔化すようにではなく、誤魔化す気らしい。
「ね?カカシさん。」
見上げてきた顔は以前よりも、イルカの背が伸びた分だけ、だいぶ近かった。
家の中なので忍服のベストを脱いでいるイルカとは、昼間より密着度が高い。
イルカの、ほっそりとした体はしなやかな筋肉がつきつつあるものの、子供のような柔らかさも、まだあった。
無邪気な様子のイルカにカカシは動揺する心を抑える。
落ち着け、俺!と、もう一度、気合を入れた。
「・・・分かった、ご飯食べるよ。」
「うん!」
そうして小さなテーブルの上で、イルカが作った簡単メニューの食事をしながら二人は、色々なことを長々とたくさん話した。
「ところで。」
カカシは気になっていたことをイルカに尋ねる。
「イルカ、あの棚の本なんだけどね。」
前にイルカが父親の形見と言っていたビデオテープが収納されている棚の上段には見たことがないような本が、ずらりと並んでいたのだ。
『呪いの神秘』とか『真実の呪い』とか『本当のあった呪われた話』とかなんとか。
ホラービデオのタイトルに倣ったのか、おどろおどろしいタイトルの本ばかりである。
呪いという言葉がキーワードになっているようだ。
「あっ、あれは・・・、その。」
イルカは、ごにょごにょと口の中で「友達に借りたんだ。」と言い訳するように早口で言うと急いでご飯を食べ終えた。
「ご馳走様!」
そして「風呂に入ってくる。」と風呂場に逃げてしまう。
「あ、食器は後で洗うから置いといて。」と一言残して。
「友達に借りたねえ。」
本を、もう一度眺めるとカカシは興味を失ったようだった。
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