うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子2
しかし、その暗部はイルカを抱っこしたまま中々、降ろす素振りを見せなかった。
腕に抱えたイルカを、じっと見て観察している。
その視線に居心地の悪さを感じたイルカは居住まいを正すように、もぞもぞと動く。
地面に降りたいと暗に訴えてみた。
「ん、どうしたの?」
「あの、そろそろ、俺・・・。」
地面に降ろしてほしい、任務も一応、終わったので里に帰りたいと言おうとしたのだが銀色の暗部の気配が、ふわっと、あたたかいものに変わる。
どうやら面の下で笑ったようだった。
「あ、そーだ。」
銀色の髪の暗部の声が弾んで聞こえた。
「いいことしてあげようか?」
「いいことって・・・。」
イルカが問うより早く、銀色の暗部は抱っこしていたイルカを一旦、地面に降ろし、すぐに両脇に手を入れ再び持ち上げた。
宙ぶらりんな格好にイルカはなる。
銀色の髪の暗部とイルカは二人は向き合う形になった。
「子供は、こうすると喜ぶんでしょ。」
言うが早いが銀色の髪の暗部はイルカを空中高く、ぽーんと放り投げた。
「ほーら、たかーいたかーい。」
イルカの体は生い茂った木の天辺を軽く凌駕する勢いで、宙高く舞う。
今までいた地面が遠く見えた。
十何メートルもある木と同じくらいの高さまでイルカは飛んだ。
正確に言うと投げられたのだが・・・。
その高さからは森全体が上から見渡せた。
見たこともないような景色だったがイルカに、その景色を見る余裕はない。
一瞬、息を飲んでからイルカは叫ぶ。
「ぎゃあああ!」
悲鳴が静かな森の中に木霊した。
ものすごい高さまで、すごいスピードで放り投げられ、ひゅーっと落下してきたイルカを銀色の髪の暗部は難なくキャッチする。
落ちてきたイルカの衝撃など物ともせずに自分の胸で、がっちりと受け止めた。
「面白かった?」
尋ねられても驚きの余りイルカは答えられない。
暗部に強烈な『高い高い』をされて死にそうになっている。
ばくばくする心臓の音が自分の中で聞こえるばかりだ。
「あれ、面白くなかったの?」
銀色の暗部が首を捻った。
「子供をあやすには、これが一番いいって聞いたんだけどな〜。」
どこから聞いたのか不確かな情報を披露する。
傍で一連の流れを見ていた暗部が見かねた声を掛けてきた。
「おいおい、その『高い高い』は、ちょっと違うぞ。」
「何が?」
「その『高い高い』をしてやる子供の対象年齢は幼児くらいまでだし、だいたいにして、そのあやし方、自体が違う。」
「違うって?」
「本来の『高い高い』は子供を放り投げたりしない。自分の目の高さくらいまで持ち上げて、それで終わりだ。」
「そうなの〜?」
「そうだ。」
「そっか〜。」
のんびりと銀色の暗部は言った。
「ごめんね〜、間違えちゃった〜。」
腕の中で、ぐったりとしているイルカの背を摩る。
「びっくりしたよね、いきなり放り投げられたら。」
反省しているようでもあった。
「も、いいです。」
ようやく心臓の鼓動も正常になり、イルカの心は落ち着いてきた。
「大丈夫ですから。」
そして、銀色の髪の暗部を見上げる。
自分よりも、かなり背が高い。
それに羨ましいほど、しなやかな体躯で逞しい。
・・・悪気があって、した訳じゃないんだよな。
良い人だけど不器用なんだな〜とイルカは思った。
「じゃあ、あの〜。」
イルカは、ぺこりと頭を下げた。
「俺、荷物も運び終わりましたし、任務完了みたいなので里に帰ります。」
「ええ〜。」
銀色の暗部から残念そうな声がする。
「つまんな〜い。もっと、いてよ。」
「そう言われても・・・。」
イルカは困ってしまう。
任務が終わったら、速やかに里に帰還するのが常なのだ。
「いいじゃないの、急いで里に帰らなくても。あ、腹減ってない?もうすぐ飯も炊き上がるし、それ食べてから帰ったら。」
無茶なことを言ってくる。
「え、でも・・・。」
「いいからいいから。」
なんとなく、目の前の銀色の髪の暗部の不思議な雰囲気に逆らうことが出来なくてイルカは結局、ご飯とやらを食べてから里に帰ることになった。
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