うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子1
少年のイルカは森の中を走っていた。
体は大人としては、まだまだ未成熟で手足が細く、体全体が成長期で発達途中にある。
まだ下忍のイルカは物資を運ぶ任務を割り当てられて目的地まで急いでいたのだ。
ランクは低いが初めて任された単独任務で張り切っている。
「えーと・・・。」
イルカは目的地周辺で、きょろきょろと辺りを見回した。
「確か、この辺だって言われたんだけどなあ。」
しかし目的地は見つからない。
うーむ、とイルカは考え込んでしまった。
「暗部の人たちが待機している場所って、どこだろう?」
集まっている場所に結界でも張ってあるのか、と考え込む。
イルカは食料として米百キロを背中と両手に持ち、それを森のどこかで待機している暗部たちに届ける任務だった。
「暗部の人って、すごいんだよなあ、きっと。」
だったら、とイルカは思う。
「そんなすごい暗部が結界を張っていたら、下忍の俺じゃ場所が解らないんじゃないか?」
米百キロを持ったまま、イルカは途方に暮れてしまった。
森は暗く静かで生き物の気配はない。
ひゅるる〜っと生ぬるい風が吹いてきてイルカは背筋を慄かせる。
まるで幽霊でも出そうな雰囲気だ。
そしてタイミングよく、どこからか男とも女とも判らぬ、か細い声が聞こえてきた。
「迷子はどこだ〜、どこにいる〜。攫って行こうか〜、あの場所へ〜。」
その声に、ぎくと身を強張らせたイルカの背後に何かが、すっと降り立った。
気配がないのに気配がある。
お化けか!
咄嗟に、そう思ったのだが怖くて後ろを振り向けないイルカだ。
ひっそりと、お化けの声がした。
「見〜つけた〜。」
お化けの声はイルカの、すぐ耳元でする。
なにやら楽しげだ。
「こ〜んなところにいたんだ〜。」
お化けは後ろからイルカの細い腰を掴み、ひょいと軽々と自分の肩に担ぎ上げた。
米百キロとイルカの体重を持ち上げても、びくともしない感じで。
「もう〜、探したんだからね〜。」
そう言った途端、お化けとイルカの姿は、その場から一瞬で消えた。
お化けはイルカを、いずこへと連れ去ったのだった。
森の中で暗部たちは腹を空かせたいた。
里に食料を届けるように式を飛ばし、すぐに届けると返事が来たのだが、その食料が一向に届けられない。
「・・・腹減った。」
誰かが不機嫌そうに呟いた。
「これじゃ、次の任務に行けやしない。」
「腹が減っては戦ができぬってか。」
「そうだ、力が出ないぞ。」
腹が減っていると誰しも機嫌が悪くなる。
暗部も例外ではなかった。
暗部の中でもリーダー的な役割をしている一人が、年若い暗部を指差す。
「迎えに行って来い、食料を。」
「ええ〜、俺が〜。」
指差された年若い暗部は気だるそうに声を上げる。
頭には銀色の髪が揺れていた。
「面倒くさいなあ。」
「いいから行って来い!」
再度、強く言われて銀色の髪の暗部は仕方なさそうに肩を竦めて消えたのだった。
イルカが連れて行かれた場所は、勿論、暗部たちが待機している森の一角であった。
米百キロを持ったイルカを肩に抱えた暗部は、片手で結界をくぐる印を組み、森の景色と同化していた待機場所へとイルカを誘ったのだ。
「すっごーい!」
暗部の結界術に感心するイルカだ。
「暗部の術ってすごーい。」
素直に感嘆の声を漏らしている。
「とーちゃく。」
銀色の髪の暗部はイルカが運んできた米を、イルカの両手から取り上げて近くの暗部に渡す。
次いでイルカの背中にあった米も奪い取る。
米を受け取った暗部たちは黙々と、しかし手際よく炊き出しを始めた。
「ん、なんだ、そりゃ。」
銀色の暗部が肩に抱えているイルカに暗部の誰かが気がついた。
「そのチビっ子は何だ?」
「里から食料を運んできた子だよ〜。」
「へええ〜、この子がね〜。」
「小さいのに偉いなあ。」
物珍しそうにしながら暗部たちがイルカを見るために、ぞろぞろと集まってくる。
「え、あー、俺・・・。」
銀色の暗部はイルカを担いでいた肩から降ろし、腕へと抱っこし直した。
抱っこなんて、と子ども扱いに少々不満なイルカであったが初めて見る暗部に、ちょっと怖い気持ちもある。
全員がお面を被っているのにも関わらず、隅々まで見られているような感覚に陥ってしまう。
イルカを抱っこしているのも暗部なのに、大勢の暗部に見られて緊張するイルカは自然、自分を抱っこしている暗部に身を寄せた。
不安からか、イルカの両手が抱っこされている暗部の首元に回る。
ぎゅっと銀色の暗部の首に抱きついた。
そんなイルカの様子を察したのか、銀色の髪の暗部がイルカを庇うように声を出す。
「もう、いいでしょ。ほら、怖がっているじゃない、この子。」
イルカを抱っこしている暗部が、あっち行けと寄ってきた暗部を手で追い払った。
暗部が、ばらばらと散って行く。
見られることから開放されたイルカが、ほっと安堵の息を吐くと銀色の暗部の手がイルカの頭に触れた。
「驚かしてごめ〜んね。」
その手は労わるような仕草で撫でてくる。
優しい暗部の手であった。
うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子2
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