うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子16
カレーはイルカに大好評だった。
イルカは、ものすごく嬉しそうな顔をして、カカシの作ったカレーを食べている。
にこにこにこにこ、とそんな形容詞が似合うくらい顔が笑っていた。
「美味しい!すっごく美味しいです!」
何回も、そんなことを言ってくれる。
「そう、なら良かった。」
心からカカシは、そう思い自分も嬉しくなった。
こんなに喜んでくれるなら何回だって作っちゃうぞ、とか思ってしまう。
それに少なめに盛り付けたのもよかったのかもしれない。
カカシの皿より量をかなり少なめにして出したら、全部、食べてくれた上にイルカはお代わりまでしれた。
そのことにカカシは、ちょっと感動してしまう。
あんなに食べるの苦手だったのに、お代わりするなんて・・・。
お代わりを装ってやるとイルカは、これまた、にこにことして食べ始める。
そして食事の合間に話し出した。
「カレーって家で作れるんですね。」
「え、まあ。俺も作ったのは初めてだったけど。」
「俺、料理ってしたことないから。」
「そうみたいだねえ。」
イルカの家には調理器具がなかったし。
「家で料理なんて母ちゃんじゃないとできないと思っていました。」
そういえば、とイルカは、ふっと懐かしそうな顔になる。
「忘れていたけど母ちゃんの作ってくれたカレーも甘かったような気がします。」
大人のような顔をして笑った。
「カカシさん、ありがとう。」
「・・・どういたしまして。」
イルカは子供のはずなのに、時折、大人のような仕草や顔をする。
そんな時、カカシは何も言えなくなってしまうのだ。
どうしていいのか解らなくて・・・。
「ねえ、カカシさん。」
食事が終わり後片付けを終えるとイルカが話しかけてきた。
「今日も泊まっていくの?」
なんとなく遠慮がちだ。
「あー、そうだね。」
さっき、イルカにどこにも行かないと言ったばかりだ。
本当はカカシの家の方が生活用品がたくさんあるので、出来たらイルカを自分の家に招いて過ごした方が楽なのだが、生憎と暗部に所属している間は何事も秘密裏に運ばねばならないので誰にも、イルカにも自分の家の場所を教えることはできない。
「泊まるけど、俺の家から少しだけ着替えとかに荷物、持ってきてもいい?」
カカシはイルカに尋ねた。
先ほど持ってきたのは調理器具と食器だけだ。
「うん、いいよ。」
イルカは素直に頷いた。
「そしたら、ずっと俺の家にいるの?」
「・・・うん、多分だけど。」
休暇が終わったらイルカに何て言おう、と悩みながらもカカシは、そう言ってしまった。
「じゃあ、俺、カカシさんのこと待ってるね!」
カカシの言う事を少しも疑わない純真な瞳が、そこにあった。
それから、十日後。
またまた、暗部の単発の任務で呼び出されたカカシの手には一冊の本があった。
任務の合い間に真剣に読んでいる。
その本のタイトルは如何わしいものではなく『子供の好きなおかず百選』とかいう本であった。
「カカシ、その本は何だ?」
見咎めた暗部の仲間が呆れたように声を掛けてくる。
「けったいな本、読んでんだなあ。」
「え〜、だってさ〜。」
本のページから目を離さずにカカシは答える。
「子供が何が好きなのか分からないからリサーチしてんの。」
「ふーん。」
「この前、イルカにカレーを作ってあげたんだけど、それから十日間、ずっーっとカレーばっかりリクエストされて、俺がカレーに飽きてきたからさ〜。」
そこへ以前、カカシにアドバイスしてくれた暗部二人がカカシに何冊か本を差し出してきた。
その数は十冊を超えている。
「ほら、これ差し入れ。」
「俺も。」
カカシの読んでいるのと似たような本である。
『成長期の子供のご飯』とか『子供と美味しく楽しく食べる食事』とか『子供の好きな簡単なおかずの作り方』とか、そんなタイトルが、ずらっと並んでいる。
「・・・どうしたの、これ?」
暗部に似つかわしくない本を渡されて面食らったカカシが訊くと二人の暗部は、照れくさそうに笑った。
「俺たちもカカシと同じく休暇中だろ。でも暇でなあ。偶々、本屋に行ったら目に付いたんで買ってきた。ちびっ子のことを思い出したんでな。」
「俺は、偶然、本屋に居合わせたので本を選ぶのに付き合ったんだ。俺も、ちびっ子のことが何となく気になるんでな。」
そんなことを言っている。
すると別の暗部もカカシに本を差し出してきた。
「これ、やるぞ。」
本の表紙には『レース編みの基礎 初心者用』と書かれている。
前に楽しい食卓について語っていた暗部であった。
「これで食卓のテーブルクロスを作れ!手編みのレースのやつを!」
「・・・遠慮しときます。」
その本だけは丁重にお断りしたのだった。
「でもさあ。」
カカシは渡された大量の本を受け取ったはいいものの、困ってしまう。
「こんなに、たくさん、いっぺんに読めないって。一緒に読んで、いいと思う箇所をピックアップして付箋でも貼っておいてよ。」
「む、それもそうだな。」
「じゃあ、手伝うか。」
居合わせた他の暗部たちも何故か巻き込まれて皆で子供の食事についての本を読み始めたのだった。
本を読みながら、以前、カカシにアドバイスした暗部は訊いてきた。
「ミキサーでジュースは作ってやったのか、ちびっ子に。」
「それがさあ。」
カカシは本のページを、ぺラッと捲りながら憂鬱そうな顔になる。
「最初の果物のチョイスを失敗したみたいで、一度、作ってあげたら飲まなくなって困ってる。」
「何の果物を使ったんだ?」
「グレープフルーツ。俺は、さっぱりとして美味しいと思ったんだけど、イルカには苦かったみたいで。」
「大人と子供の味覚は違うからな。オーソドックスに蜜柑とか林檎にすればよかったのに。」
「そっかー。その後、ランブータンとかライチとかスターフルーツとかでやってみたんだよね。」
「なんで、そんな果物にしたんだ・・・。子供はおそらく苦手だぞ。」
「珍しい方がいいかと思ったんだよねえ。」
形も面白いから興味を持つと思ったんだけど、と言うカカシにはカカシなりの考えがあったらしい。
「色々と大変だな。」
「でも、楽しいよ〜。」とカカシは、のんびり答えた。
「成り行きで今、イルカと生活しているんだけど、とっても楽しいんだ、これがまた。」
「そうか。よかったな。」
アドバイスをした暗部は言った。
「カカシにとっても、ちびっ子にとってもよかったな。」
そう言ったのだった。
余談だが、それから暫くして里の中の一部の忍の間で、ある噂がたった。
「なんでも暗部が奇行に走っているらしいぞ。」
暗部が、みんなして真剣に子供向けの料理の本を読んでいるところを目撃した者がいたらしい。
「気孔?へえ、すごいな。何か新しい術でも開発しているのか。」
「なんでも料理を研究しているらしい。」
この発言は普通に食べる料理のことを指していた。
「えっ、料理!敵のか?」
こちらの料理は敵を処理するの意味を指していると思われる。
そうやって暗部の知らないところで間違った噂が広がっていったのであった。
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