うちの子どんな子かわいい子、おれのあの子はかわいい子11
自分がイルカの名前を知っているからイルカも当然自分のことを知っていると、いつの間にやら思ってしまっていたが、考えてみればイルカはカカシのことを知らないのだ。
道端で会った知らない人で、いきなり声を掛けられて食事に誘われて一緒にご飯を食べた、というだけなのだ。
おまけにイルカは名も知らぬ大人に手を握られていて、人によってはカカシが危ない人に見えるかもしれなかった。
「あ、俺ね。」
カカシは簡単に自己紹介した。
「カカシ。」
「案山子?田んぼの?」
イルカが復唱する。
「あ、その案山子じゃなくて、カカシ。」
「ふーん。」
イルカは面白そうにカカシを眺める。
「じゃあ、なんて呼べばいいの?カカシおじさんとか?」
「お、おじさん・・・。」
イルカに、そう言われてカカシは、ちょっとショックを受けた。
「そんなに俺、老けてる?何歳くらいに見えるの、イルカには。」
「え?えーとねえ。」
首を傾げたイルカは答えた。
「二十八歳くらい?」
十三歳のイルカには二十八歳は、おじさんなのか・・・。
カカシは遠い目になる。
どっから、その数字が算出されたのか解らないがカカシは、きっちりと訂正をいれた。
「俺はピチピチの十七歳だから!」
「ピチピチ?」
その言葉にもイルカは首を傾げている。
「ピチピチってなに?それって、すごいの?」
「それは、その・・・。すごいとか言われても・・・。」
イルカの言葉にカカシは、たじたじとなってしまう。
それに無邪気な質問はストレートにカカシの胸に突き刺さった。
更に無邪気な瞳に見つめられると、ピチピチの意味を説明するのが恥ずかしくなる。
「と、とにかく!」
カカシは年上として威厳を取り繕った。
「俺は若いの、おじさんじゃありません。お兄さんです!」
分かった?とイルカに確認するとイルカは、こくりと頷いた。
「分かった。おじさんよりは若いんだね。」
本当に分かっているのか怪しい返事をする。
「カカシお兄さんて、呼べばいいの?」
「いいよ、お兄さんは・・・。普通に、さん付けで呼んで。カカシさんって。」
「はーい。」
にこっと笑うとイルカは初めてカカシの名を呼んだ。
「カカシさん。」
「うん、そう呼んで。」
イルカに名を呼ばれることが嬉しいと感じた瞬間であった。
「ところで、どこに買物に行くの?」
「あ、いつものお店。」
イルカはカカシに手を引き歩いている。
「いろんな物が売っているんだよ。」
「へええ〜。」
里に滅多に帰ってこない上に、カカシは買物にも滅多に行くことはなかった。
買っても里で過ごす時間は余りないからだ。
店には程なくして着いた。
いわゆる、普通のスーパーのような感じの店だった。
店に入るとイルカはカカシと繋いでいた手を離して、慣れた様子で店の籠を取った。
そこに商品を入れるシステムだ。
カカシはイルカが何を買うのか興味を持ってイルカの後ろをついて行く。
イルカは最初に菓子類が売っているコーナーへと行く。
まあ、子供だからお菓子が好きなんだなあとカカシは思った。
幾つかの菓子を籠に入れると今度は飲料水が売っている場所にイルカは移動する。
そこでは色が鮮やかな炭酸入りのジュースを何本か籠に入れた。
・・・ま、まあ、子供はジュースも好きだよな。
イルカの行動を見ているカカシの眉は潜められる。
顔も曇ってきた。
そして最後にイルカは冷凍食品が売られている場所へと行く。
ここで今度こそ、何か食べ物を買うのかと思いきや、カカシの期待は裏切られた。
イルカは冷凍食品のコーナーで一緒に売られているアイスを買っていたのだ。
アイスを籠に入れたイルカの買物は終了したようだ。
レジに行って会計をしようとしている。
そのイルカの肩をカカシは掴んだ。
「もしもし、イルカさん。」
「はい、カカシさん。」
イルカは振り返ってカカシを見上げた。
「どうしたの?」
「どうしたも何も。」
頭が痛くなってカカシはイルカの買い物籠の中味を指差した。
「食料を買いに来たんじゃないの?」
「え。」とイルカは不思議そうな顔をする。
「これ、食料ですよ、俺の。」
「・・・・・・は?」
今度はカカシが不思議そうな顔になった。
「ご飯は?食事になるような食べ物とかは?」
イルカの籠の中にはお米だとかパンだとか主食のようなものが一切ない。
もしかして家にあるのかな、とカカシが考えた時、イルカが籠の中から何かを出してカカシに見せた。
「ああ、それなら。」
イルカが手には小さなカップに入った何かが乗っていた。
「ヨーグルトありますよ。これで足ります。」
菓子やシュース、アイスの他にイルカは、いつの間にかヨーグルトを籠に入れていたらしい。
だが、たったの一つだけ。
カカシはイルカの食生活が俄然、不安になってきた。
この分じゃ家に米とかパンなんてある訳がない。
俺より食生活駄目な人がここにいた・・・。
食生活に関してはカカシも結構、いい加減な面があるがイルカは、その上をいっている。
ヨーグルトを手に持って、にこにこしているイルカ。
そんなイルカを見て、頭が痛いのを通り越して目眩を感じるカカシであった。
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