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ただ愛しいだけなのに6



突然のことに呆気にとられてイルカの話を聞いていたカカシだったが「別れてください」という言葉を聞き、はっと自分を取り戻した。
「ちょっと待ってください」
頭の中が混乱している。
順番に整理しなければいけない。
「イルカ先生の話を聞いて訂正させてほしいことが多々あります」
「訂正?」
イルカが訝しそうな顔をして眉をひそめた。
「第一に俺に昔の恋人なんていません。イルカ先生と出会う以前に付き合っていた人も恋人関係だった人もいません。誰にも交際を申し込んだこともありません」
イルカの目を見て、しっかりと伝わるように言う。
「付き合ってほしいと申し込んだのはイルカ先生が初めてです。後にも先にもイルカ先生だけです」
眉をひそめたまま、イルカはカカシを見つめている。
「イルカ先生に会うまで任務で忙しかったし。最初に俺たちが会ったのを覚えていますか?怪我した俺をイルカ先生が見つけて助けてくれたんですよね?」
イルカは頷く。
「それで、翌年に今度はイルカ先生が怪我したところを俺が見つけて助けた・・・」
「そうです」
何かを思い出したのか、イルカが辛そうな表情を見せた。
「あのとき・・・」
「あのとき?イルカ先生を助けたときですか?」
「はい」
あのときのことは感謝しています、と改めてイルカが礼を述べる。
「でも、カカシさんは俺を助けてよかったんでしょうか?」
変なことを言われた。
「よかったって・・・。よかったに決まっているでしょ。怪我している里の同胞を助けないなんてあり得ないですよ」
「そうなんですか」
顔は曇っている。
カカシの隠れ家に来てからイルカは、ずっと沈痛な顔ばかりしていた。
笑ってほしい。
イルカの笑った顔が見たいとカカシは思った。



「病院の方に、カカシさんの手を煩わせるなと言われたものですから」
「えっ!ほんと?」
「カカシさんを助けるのはいいけれど、カカシさんに助けられるのはカカシさんにとって迷惑以外の何物でもないと」
里でも屈指の忍であるカカシさんは忙しいのだから、ときつく言われたらしい。
「それは・・・」
言ったほうがおかしいだろう。
「おかしな理論ですよ。俺は同じ里の忍ならイルカ先生でなくても怪我をしているなら助けますよ」
思い出してみれば、あのとき助けたイルカの態度が時間とともに硬化して素っ気無くなり、違和感を感じたのはカカシの知らないところでイルカが第三者に何かを言われたからだったのだ。
発言からして、へりくだったものになっていたので、よく覚えている。
それにイルカを助けたのが切っ掛けで、イルカと恋人としても関係を持てたのだ。
まだ、恋人としての範疇かどうかは分からないが。
少なくともカカシはイルカのことを恋人だと思っている。
愛しい気持ちが強くある。
「イルカ先生を助けてから俺、イルカ先生が忘れらなくなって、いつでもどこでもイルカ先生のことを考えていましたもん」
こんなことを言うのは非常に照れくさかったが言わなければ分からないと思い、カカシは言う。
「辛いときも苦しいときもイルカ先生が俺の心の支えになっていて。里に戻る機会があれば、陰からイルカ先生を見ていました」
「俺を?」
信じられない、とイルカの目が言っている。
「そうですよ」
カカシは強調した。
「一年間くらいかな?幾度となく里に帰ってきてはイルカ先生にバレないようにイルカ先生を付け回して、遠くからだけどイルカ先生だけを見てました」
ちょっと怖い感じもするが。
「そして里に帰ってこれることになったのでイルカ先生とお近づきに、あわよくば、より親しい関係になれないかと思ったのです」
カカシは正直に話した。



今度はイルカが呆気にとられたようにカカシを見ている。
思いもよらぬ告白だったのだろう。
まさか、長期に亘ってカカシがどこからかイルカを見ていたとは思わなかったのであろう。
「だから、今の俺とイルカ先生の関係が恋人であるんですけどね」
ずいっとカカシは身を乗り出した。
「ねえ、イルカ先生、全部教えて、全部」
「ぜ、全部?」
「そう。何も隠さないで俺に全部話してみて」
俺たち、とカカシはイルカの手を握る。
イルカは嫌がる素振りは見せなかった。
「恋人でしょ。俺、イルカ先生が好きだから好きな人が悲しんでいたり苦しんでいたりしたら、やっぱり俺も悲しくて苦しい」
「カカシさん・・・」
「だから、それらを取り除くことができるなら俺はどんなことでもするから」
イルカのためなら何でもする。
イルカが喜ぶならどんなことをする。
イルカが幸せになるためなら、どんな努力も惜しまない。
・・・そこには俺がいることが前提だけどね。
ふっと。
ひそめられていたイルカの眉が下がった。
泣く一歩手前のような顔。
「カカシさん、俺が好きなんですか?」
「好きですよ」
これは自信を持って言える、どこでもいつでも誰にでも。
世界中に言いふらしたって全く問題ない。
「それ・・・」
仄かに頬を染めたイルカが呟くような声で言う。
「初めて聞きました」
頬を染めたイルカは恥ずかしそうではあったが、どことなく嬉しそうでもある。
そんなイルカを見たのは初めてでカカシは、どきどきしてしまっていた。
「え、言ってなかったでしたっけ?」
「言ってません」
きっぱりとイルカは言い切る。
「付き合ってほしいと言われたときも、その言葉がなくて。なんでカカシさんは俺と付き合うのか、一週間ほど悩みましたから」
「ああ、それで・・・」
それでイルカの返事は一週間後だったである。
「散々、悩みましたけど俺もカカシさんが好きだったから、お付き合いできたらと思っていましたし」
「そっか」
心の底から嬉しくなってカカシは握っていたイルカの手に力を入れた。
「嬉しいです、イルカ先生」
それから、とイルカを見つめる。
「言うのが遅くなってごめんね。イルカ先生、好きです、大好きです、愛してます、愛しいです」
遅くなった分、自分の気持ちを表す言葉をたくさん並べた。
「言葉以上にイルカ先生を愛しく思っています。だから別れるなんて無理です、物理的にも心理的にも不可能です、できません」
イルカの頬に赤みがさした。
「ねえ、イルカ先生」
警戒されないようにカカシは、優しく優しく言った。
「イルカ先生が好きで堪りません。大好きです、だから」
抱きしめてもいいですか?
イルカに触れてみたい。
この手で触りたい。
この腕で抱きしめてみたい。
イルカが好きだ。
あらん限りの情熱を込めて訴えた。
「カカシさん」
瞬きをしたイルカは、こくりと首を縦に振ったのだった。





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