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ただ愛しいだけなのに4



だけどもカカシがイルカに謝る機会は訪れなかった。
こんなときは間が悪いものでイルカが任務に出てしまい、入れ違いにカカシもまた任務に出てしまったのだ。
間が悪すぎた。
「あー、ったく、もう」
苦虫を噛み潰したような顔になりながらカカシは任務を遂行する。
「こんなことやっている場合じゃないのになあ」
任務が大事なのは頭では分かっているのだが。
最後に見たイルカの顔が何度も何度も脳裏に蘇える。
あれからイルカの姿を見られなかったし、もちろん話もできていない。
謝ってもいない。
今、イルカはどんな気持ちでいるのだろう。
もう、嫌われたかな・・・。
考えれば胸が痛くて堪らなくなる。
早くイルカ先生に会いたい。
謝りたい。
そして焦れば焦るほど任務は上手くいかず、帰還は延びてしまう。
「どうすりゃあいいのよ」
いらいらしながらカカシは敵にクナイを投げつけた。



「やっと帰ってこれた」
カカシが里へ戻れたのは任務に出てから一ヶ月以上過ぎてからだった。
「これじゃ、前回の二の舞じゃない」
まさしく、そうだった。
「報告書出したらイルカ先生を探さなきゃ」
受付所にいたらいいけど、と受付所に急いだがイルカの姿は、そこになかった。
受付所にいないならばアカデミーにいると思う。
家に帰る気にもならず、とぼとぼと上忍の控え室に向かった。
体は疲れていたがイルカに会わずには、とても帰る気にもなれない。
ため息を吐きながら、控え室の扉を開けると、そこには例の二人がいた。
「あら、カカシ。久しぶりね」
「なんだか疲れた顔しているじゃん」
「たった今、任務から帰ってきたところなの」
相手をする気にもなれず、カカシはどさっと控え室のソファーに沈み込んだ。
ポケットに手を突っ込んだままで態度が悪い。
おまけに機嫌も悪い。
「やあねえ、怖い顔〜」
「そうだよ、雰囲気悪くなるから笑え、カカシ」
二人のリクエストに応じて、黙ったままカカシは笑った。
何の表情も出さずに・・・。
「やっぱり、怖い顔のままでいいわ」
心臓を押さえた紅が言う。
「笑った顔が超凶悪なんだけど」
アンコから物言いがついた。
「あんたらが笑えって言ったんでしょうが」
むかっとしたカカシが言い返すとアンコが「はいはい」と手を振った。
「機嫌が悪い理由も知っているってば。あれからイルカと会えてないんでしょ」
「・・・そうだ〜よ」
ただの怖い顔に戻った不機嫌丸出しでカカシが返事をする。
「じゃー、いいこと教えてあげる」
にこっと笑ったアンコは何かを企んでいるようだ。
「いいこと?」
カカシは眉根を寄せた。
「そう、いいことだ〜よ」
アンコは、わざとカカシの口真似をする。
「今日の夜ね、飲み会」
「なんだ・・・」
カカシにとっては、どうでもいいことだったので、がくーっとテンションが下がる。
「どうでもいいよ、いつも欠席だし」
「そんなこと言っていーのかなあ」
アンコが、にやーっとする。
「上忍特別上忍中忍やらの入り乱れての飲み会だよ〜」
別名懇親会。
別名交流会。
名目は飲み会。
「この時期にいつも開催しているのよ」
紅が説明を付け加えた。
「カカシは里にいなかったから知らなかったでしょうけど」
「ふーん」
そこまで聞いて、はたと思い当たる。
「それって、イルカ先生も参加するってこと?」 「そうだよ」
やっぱり、アンコがにやっとした。



任務から疲れて帰ってきて飲み会と聞いて家に帰りたくなったものの、イルカが参加すると聞いてカカシも、その飲み会とやらに出ることにした。
そこでなら確実にイルカに会える。
イルカに会えるなら、気は進まないが飲み会に出ることもやむを得ない。
飲み会の席でなら、酔っ払いばかりだからどさくさに紛れてイルカに接触できるだろう。
どさくさに紛れて、あわよくばイルカを連れ出し二人きりになれるチャンスもあるかもしれない。
カカシは希望を胸に夜になるのを待ちわびたのであった。



控え室で本を読む振りをして仮眠した後に、カカシは初めて大勢が参加する飲み会とやらに出席した。
しかし、カカシの目論見は外れた。
大外れもいいところだ。
まず座敷が広すぎてイルカがどこにいるのか、よく分からない。
人が多すぎて移動ができない。
カカシが珍しく飲み会に出たからか、カカシの周りには人だかりができていた。
主に女性の。
次々に酌をされて鬱陶しくて、しょうがない。
・・・イルカ先生に会いたいだけなのに。
きょろと辺りを見てもイルカらしき人影はない。
・・・イルカ先生、どこだろう。
ようやく人が途切れてイルカを探してみるが、イルカはどこにもいなかった。
途端に不機嫌さが溢れ出したのだろう。
傍にいたアンコが「そういえば」と言い出した。
「イルカは仕事が立て込んでいて遅れて来るって言っていた」
「・・・聞いてない」
「言うの忘れていたから。少し遅れますってカカシに伝言を頼まれていたっけ」
「・・・そういうことは早く言えよ」
「ごめーん」
しかし・・・。
カカシは少し安心した。
アンコに自分への伝言を頼んでいたということはイルカはカカシのことを針の先ほどかもしれないが気に掛けていてくれたということだ。
「他に伝言は?」
「ないよ」
あっさり言われた。



イルカの姿が見えたのは飲み会も終盤といった頃だった。
飲んで場が盛り上がっている座敷へ、そっと入ってきたのだ。
それを目ざとく見つけたイルカの同僚らしき人間に招かれて、そちらの方へ行ってしまった。
カカシに背を向けた形で座っているのでイルカの顔が見えない。
久しぶりに見たイルカの姿にカカシの目は釘付けだ。
イルカが背を向けているのをいいことにイルカの後ろ姿に、じっと見入ってしまう。
イルカの後ろ姿を見ているだけで、飲んでいる酒が美味く感じられるのは何でだろう。
「カカシ、顔がにやけているよ」
アンコが指摘してきたが構わない。
「べっつに〜、いいでしょ」
イルカが、そこにいるだけで嬉しくなるのは止められない。
髪を結っているイルカの項が、よく見える。
普段は見えない場所だ。
肩のラインや背中もなだらかさも見ることができて得した感じだ。
もちろん、顔は見たいけど。
結った髪が垂れている様もいい。
「かわいいなあ」
思わず、口に出てしまい紅とアンコが二人で目配せをして「やってられない」と同時に呟いていた。



ほどなくして飲み会はお開きとなり、カカシは二次会とやらに誘われていた。
「え、まだ飲むの?」
びっくりする。
カカシの周りには人の壁ができていた。
飲み会が終わった後に店の外に出ると、人垣が出来てしまい身動きが出来ない。
執拗に二次会とやらに誘われる。
はっきり言って二次会なんて、どうでもいい。
「俺、そういうの興味ないから」
一刻も早くイルカの傍に行きたいのに。
別々に店の外に出てきたのが間違いだったのか。
イルカは、まだ店から出てこない。
「もう帰るから」
カカシが幾ら言っても、後から後から誘われている。
誘ってくるのは何故か女性ばかりで、余り強く出れないのもあった。
女性に対して乱暴な振る舞いをするのは本意ではない。
男性なら良いわけではないが、そんなことをしてイルカに目撃されて嫌われでもしたら元も子もない。
「じゃ、俺はこれで」
ずっと聞きたかった声が聞こえてきた。
はっとして振り向くとイルカが同僚らしき人間たちに手を振っている。
「今日は帰るから」
同僚らしき人間たちは「お疲れー」とか「またなー」と言って手を振り返していた。
イルカはカカシの方も見ずに、てくてくと歩いて行ってしまい、すぐに姿が見えなくなってしまった。



「あっ!」
イルカに会うという目的のためだけに飲み会に参加したのに、これでは何の意味もない。
ばばっと印を結んだカカシは人垣から姿を消して、イルカを追った。
イルカは、すぐに見つかった。
夜道を一人で歩いていた。
「イルカ先生!」
後ろから呼びかえるとイルカの肩が、ぴくりと動く。
「イルカ先生、元気でしたか?」
更に呼びかけると歩みが止まった。
でも振り向いてくれない。
「あの、俺、今日、任務から帰ってきたばかりで」
先に謝らないと、と思うのだが話の切っ掛けが掴めない。
「イルカ先生に会いたくて、その・・・。今日の飲み会にイルカ先生が参加するって聞いて、それで」
とり止めもないことばかりが口から出てくる。
「アンコから、イルカ先生の伝言を聞けて嬉しくて。イルカ先生、俺のこと気に掛けていてくれたんだなあって」
酒も入っているからか、要領を得ない話が続く。
「イルカ先生」
振り向いてくれないイルカの手に驚かさないように、そうっと触れてみる。
振り払われなかったので、やはり、そうっと握ってみた。
イルカの手は大きくて、あったかい。
鍛えられた忍の手だった。
柔らかくはなかったけれども、カカシには柔らかく感じられた。
「ねえ、イルカ先生」
イルカは下を向いている。
「これから俺の家に来ませんか?」
俺の家で飲みなおしませんか?と誘ったのだ。
その他大勢との二次会なんて、どうでも良かったがイルカとの二次会はしてみたい。
「イルカ先生、遅れてきたから、そんなに飲んでないでしょう?」
ゆっくり話をしたいんです。
そう訴えると迷っているようであったが、イルカはこくりと頷いた。



カカシに手を引かれてイルカが歩いている。
信じられない思いでカカシは何回も振り返ってはイルカがいるか、確認していた。
浮かない顔をしているが確かにイルカは、そこにいた。
カカシがイルカの手を握っているのだ。
うきうき、わくわくしてしまう。
イルカ先生がいる。
大好きなイルカが。
とっても愛しい存在の。
俺の家で、と言ったが、いつものねぐらではなく里の中にある誰にも知られていないカカシだけが知る秘密の住処に向かっていた。
ここに行くまでは数々のトラップ、幻術等が仕掛けられており、並大抵の忍では突破できない。
カカシくらいの忍でなければ。
そうすると、その数は限られて、また仮に忍ばれたとしてもカカシには、すぐさま分かる。
この場所を選んだのは以前にアンコに言われたことを思い出したからだ。
『誰にも見られない聞こえないという保障のある安全な場所』
そこからイルカが安心して話す、ということを言われた。
条件に当てはまる場所は、ここしかなかった。
「着きましたよ」
鍵を開けて、久々に秘密の住処に入る。
掃除は欠かしてなかったので、一応は清潔だ。
「さ、イルカ先生、座ってください」
イルカの手を離したくはなかったが、酒の用意もあるので手を離した。
ここまで来て逃げるようなことはないだろう。
正座したイルカは膝の上で拳を握っていた。
緊張しているのかもしれない。
「はい、どうぞ」
カカシが透明なグラスに入れた酒を置くと緊張を解すためか、乾杯してから一気に飲み干して咽ていた。
「こ、これ・・・」
「お酒ですよ」
にっこり笑って応じるとイルカの黒い瞳が目に入った。
咽た所為か、潤んでいるのが悩ましい。
「やっと俺を見てくれましたね」
カカシとイルカと二人きり。
誰にも邪魔されることはない。
やっと恋人同士の時間が訪れたとカカシは胸に滾る思いを噛み締めた。




ただ愛しいだけなのに3
ただ愛しいだけなのに5





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