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ただ愛しいだけなのに3



カカシが里外の任務に出てから一ヶ月が過ぎた。
最初は一週間の予定が二週間に延びて、更に三週間に伸びて、更に一ヶ月になったのだ。
カカシは焦っていた。
早く里に帰りたい。
里の方角を見る。
一人の人の顔を思い浮かべる。
会いたいなあ。
そう思うのは、たった一人の恋人イルカである。
恋人関係にはなったものの、その付き合いは希薄で強い繋がりがない状態だ。
そんな状態で離れ離れになるのには危険が付きまとう。
イルカ先生、どうしているかなあ。
恋人になってから、夢見ていたような甘い空気が漂ったことがない。
俺とイルカ先生、恋人らしくないよね。
普通の知り合いみたいな感じで。
カカシは焦る心の下で思う。
早く帰ってイルカ先生に会って、もっと・・・。
もっと一緒にいたい、それだけだ。



ようやく里に帰れることになった。
任務に出てから一ヶ月以上を経過していた。
逸る心を抑えながらカカシは里の大門を潜り、急いで受付所に向かった。
もしかしてイルカがいるかもしれないと期待を持ちつつ行ったのが、そこにはイルカの姿はない。
思い切りがっかりした。
イルカ先生に会いたかったなあ。
はあ、と肩が下がる。
受付所にいないということはアカデミーで仕事をしている可能性が高い。
しかし、アカデミーにまで押しかけてイルカに会うというのは、どうかと思う。
そんなことしたらイルカ先生に迷惑が掛かるし・・・。
仕方がない。
カカシは今はイルカに会うことを諦めた。
いったん、自宅に帰って休息をとってからイルカの仕事が終わる時間ころにでも迎えに来よう。
だがイルカがカカシと一緒にいるのを躊躇っている節がある。
任務に出掛けのイルカとの会話が鮮明に思い出された。
まあ、いいや。
一ヶ月以上も会えなかったのだから。
恋人に会いたいというのは正当な理由だと思った。



幻かと思って、カカシは目を擦る。
幻ではない。
目の前にいるのはイルカであった。
ただし、誰かと一緒にいる。
それはカカシが受付所から自宅への帰り道。
喫茶店、もしくは甘味処のような店の前を通ったときだった。
店の前のオープンスペースで開放的な場所にあるテーブルに。
誰かが俯き加減で座っているのが目に入った。
肩までの黒くて真っ直ぐな髪を下ろしている。
綺麗な黒髪だ。
イルカ先生の髪みたいだ。
ぼんやり、それに見とれていると俯き加減の人物が顔を上げたのだ。
顔には横一文字に走る傷、そして少し悲しげに微笑む人が。
イルカ先生!
普段、結っている髪を下ろして服装も忍服ではなく、年相応な格好をした青年で。
それが、とても新鮮に映った。
イルカ先生、格好良くて、でも可愛い。
新たに惚れ直した瞬間だった。



なんで、ここにイルカ先生が?
今日は仕事は?
疑問が浮かび上がる。
それにイルカは誰かと二人きりでテーブルに座っていた。
イルカの前には、クリームやらアイスやらがどっさり盛り付けてある餡蜜が鎮座している。
相手は、と見るとカカシも知っている人物だ。
くノ一のアンコだ。
アンコは両脇に空いた皿を大量に重ねている。
どうやら、団子を食べ続けているらしい。
甘味ならば無限に食べれると自負しているのを噂に聞いた。
それは、ともかくとして・・・。
イルカ先生がアンコと二人きりで何を?
イルカの表情は曇っていて目の前の餡蜜には手をつけていない。
対してアンコは、ぱくぱくと団子を食べながらイルカに何やら話している。
二人の会話が知りたくてカカシは、そっと近づいた。



「もー、何を渋っているのさ。はっきり言えばいいじゃないか」
アンコが厳しい顔をしている。
「あんたたちに口出しされる覚えはないって。いい加減にしろってさ」
イルカは黙っている。
「仕事面に関しては支障がないからって、あんなにたくさんの仕事をイルカ一人で負担しているのはおかしいよ」
ずばずばとアンコは言っていた。
仕事、と聞いてカカシは思い出した。
任務に行く前にイルカは書類の束を一人で片付けていた。
それでカカシとの約束が反故されたことを。
「それは分かっているけど・・・」
イルカが、やっと力なく答えた。
声に元気がない。
「分かっているなら、聞けばいいんじゃ・・・」とアンコが言いかけてイルカが遮った。
「聞いて、そうだと肯定されたら終わりじゃないか・・・」
イルカの答えに、今度はアンコが黙る。
気まずい顔をしてアンコは団子を平らげて、追加の注文をした。
しばしの沈黙の後にアンコは言った。
「ごめん、今日はこんな話をしたかったんじゃないんだ。イルカが元気ないからさ、心配で」
「うん、分かっている。俺こそ、ごめん」
「いいよ」
ふっと笑ったアンコはイルカに勧めた。
「ほら、イルカの好きな餡蜜食べなよ、今日は奢るから。スペシャルグレートなクリーム&アイスの餡蜜だよ」
「ありがと」
こくん、と頷いたイルカはスプーンを手に取り、クリームを一口掬う。
口に入れると「おいしい」と微笑んだ。
嬉しそうに。
傍から見ると話の内容は、ともかくとして、どう見てもデート中の男女のカップルにしか見えない。
しかも仲のいい。
話の内容で気になることは、たくさんあったのだがイルカとアンコの様子を見ているカカシは嫉妬で胸が熱くなる。
非常にムカムカとしてきた。
・・・俺でさえ、イルカ先生とデートしたことないのに。
アンコのやつ、と怒りを覚える。
これって浮気?
もう我慢できなかった。



「イルカ先生、お久しぶりですね」
にっこりと笑ったカカシはイルカの前に、いきなり姿を現した。
「カ、カカシ、さん」
びっくりしたイルカは大きく目を見開く。
「いつ・・・。いつ、帰ってきたんですか?」
「うん、ついさっき」
「さっき・・・」
「そう、さっき」
「あ、あの・・・。お疲れさまです」
イルカが労いの言葉を掛けてくれたのは嬉しかったのだが、その思いとは全く違う言葉が出た。
「恋人の俺が疲れて帰ってきたのにイルカ先生は、こんなところでデートですか?」
出たのは嫌味だ。
「いいですねえ、女と二人きりで甘いものなんて食べちゃって。あー、もしかして浮気?それとも二股かけられた?」
大きく見開いたイルカの目が瞬いた。
そして伏せられる。
「そんな、つもりじゃ・・・」
ぎゅっと噛み締められたイルカの唇が今にも切れそうで。
泣きそうな顔になっている。
イルカを泣かせたいわけではなかったので、カカシはものすごく慌てふためいた。
「あ!ち、違うんです、イルカ先生。違います、あの、その俺・・・」
がたん、と椅子の音を立ててイルカが立ち上がった。
決してカカシを見ない。
両の拳が握り締められている。
「イルカ先生!」
引き止めようにもイルカの体の、どこを触っていいか解らずカカシは、おろおろと手を彷徨わせた。
「ごめんなさい、俺が言いたいのはイルカ先生が浮気しても何しても絶対に恋人の関係を解消する気も絶対に別れる気もないってことで。それに俺はまだ、イルカ先生とデートもしたことないのにアンコと二人きりで、こんな店にいるから妬けて妬けて妬けちゃって、どうしようもなくて、その嫉妬なんです、ただの嫉妬で」
「・・・俺、失礼します」
「あ、イルカ先生!」
待って、と手を伸ばしたのだがイルカはカカシの手をすり抜けて行ってしまった。
よっぽど追いかけようと思ったのだが今のイルカに、それは逆効果に感じた。
時間を置いて冷静になってから会おう。
自分は頭を冷やさないといけない。
イルカ先生、ごめんね、とカカシは心の中で謝った。
「あーあ、やっちゃったー」
背後から、のんびりとした声がして振り返ったカカシはアンコを睨みつけた。



「いったい、どういうことだよ」
「あんたこそ、なんなの」
ばちっと視線と視線がぶつかった。
「イルカの名誉のために言っておくけど断じて、浮気なんかじゃないから」
「当たり前だろ、イルカ先生が浮気なんてするはずないじゃないか」
ばちばちっと、また視線と視線がぶつかる。
火花が飛び散りそうな勢いだ。
「まあ、座りなよ」
不毛な争いに嫌気がさしたのか、はあ〜と肩の力を抜いたアンコがイルカが座っていた席を指差す。
「その物騒な殺気を消してさ」
いつの間にか、殺気を出していたことにカカシは気がついていなかった。
「で、どういうこと?」
座ったカカシは早速、問い質す。
「ここで何をしてたの?」
「まあまあ、順を追って話すからさ」
アンコは団子に飽きたのか、お汁粉を注文する。
「カカシは何か食べる?」
「いや、俺は甘いものは・・・」
言いかけて、テーブルの上の餡蜜が目に入る。
イルカの食べかけだ。
アイスは溶け始めていたが、十分に食べられる。
「俺、これ食べるよ」
甘いものは苦手だが、これなら食べたい。
イルカが一口だけスプーンを手にとって、イルカと同じようにクリームを掬って食べてみる。
クリームは、とても甘かったがカカシは感動していた。
胸に、じーんとくる。
イルカ先生と間接キスか〜。
「・・・ねえ、なに考えているの?」
カカシのにやけた顔を見てアンコが不審な顔をしていた。
「ん〜、イルカ先生の使っていたスプーンで食べて、間接的だけどイルカ先生とのキスだなあと思って。初キス?」
感激していたんだというとアンコは一言。
「変態・・・」
そして白い目で見られた。



「イルカはさー、今日の仕事は夜からなんだよ。最近、特に元気がないから呼び出して元気付けようとして」
甘いものを食べさそうと思ったのに邪魔された、と口を尖らせたアンコに文句を言われた。
「大変なんだよー、イルカ」
「それだけど」
なんとか餡蜜を食べ終えたカカシは、渋い茶を飲んで一息ついた。
「なんか知っているなら教えてよ」
「うーん」
顔を顰めたアンコはお汁粉を口に入れる。
何かを知っているのは間違いない。
「教えてくれたら、お汁粉一年分奢るから」
「うーん・・・」
「団子、一年分も足そう」
「うーん・・・・・・」
アンコは魅力的な誘惑に揺れているようだったが、首を横に振った。
「教えない、イルカと約束しているから」
「・・・・・・ちっ」
「自分で聞きなよ、イルカに」
「・・・・・・そうするよ」
「まー、簡単には口を割らないと思うけど」
難関だよ、と余計で親切なアドバイスをくれる。
「イルカが口を割るとしたらねえ」
アンコはお汁粉を食べていた箸で、びしっとカカシを指した。
「カカシとイルカの二人きりのときだね。誰にも見られない誰にも話が聞こえないという保障のある安全な場所でならイルカも安心して話してくれるかもしれないよ」
今度は、本当に親切なアドバイスだった。
「ま、心の隅でも書き留めておくよ」
「それじゃあ、ダメだよ。カッコなんかつけなくていいからさー」
何にも解ってないなあ、とアンコがわざとらしく深いため息を吐く。
「恋人のことは心の隅じゃなくて、心のど真ん中にいつもいかなるときも置いておきなよ」
それにさ、とアンコが指摘する。
「大事な恋人なら、浮気とか二股とか酷いこと二度と言わない」
「・・・反省してるよ」
「カカシが任務に出て、いつまでも帰ってこないからイルカ、すっごい心配して寂しがっていたんだから」
「・・・ごめん」
イルカにちゃんと謝りなよ、と諭されてカカシは今になって後悔が押し寄せてきた。
胸が、ずきずきと痛んだ。





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