地球征服物語 4
その次の日。
イルカに刀を返そうとしたカカシだが、昨日のイルカの行動を考えると刀を返すのを躊躇ってしまった。
まずは落ち着いて理由を聞くべく、イルカを探して回る。
案外、すんなりとイルカは見つかった。
アカデミーで授業をしていたのである。
カカシはイルカの様子を、そっと隠れて見ていることにした。
イルカは、子供達を熱心に指導している。
穏やかな顔つきからは、しっかり学び身につけて欲しいということと子供たちが好きなんだなというのが伝わってくる。
いい先生じゃない。
カカシはイルカの笑顔に知らず見蕩れてしまっていた。
子供達に向かって笑顔を見せているが、あんな顔初めて見た。
意外に可愛いじゃん。
俺の前でも、あんな顔すればいいのになあ。
そんなことを思っていた。
昼休みになったようだ。
子供達がばらばらと教室から出て行く。
人けが無くなった教室にカカシは、ぽんと降り立った。
「カカシ先生!」
イルカが驚いた声を出し、直ぐに表情が強張った。
唇を噛みしめて悲愴な顔つきになる。
「まあまあ、イルカ先生。」
カカシは何とか場を和ませようと試みた。
「お茶でも飲みませんか?」
まるで、ナンパのようになってしまった。
「ど、どうぞ。」
イルカが震える手でお茶の入った椀を差し出してきた。
茶請けに和菓子も出される。
「あ、ども。」
場所はアカデミーの職員室だった。
応接セットのソファーに通されて、職員室の全員から注目されて、カカシは聊か居心地が悪かった。
そわそわと落ち着かない心を宥めてカカシはイルカの入れてくれたお茶を飲むことにした。
イルカに昨日のことや一昨日のことの理由を聞くつもりでいたのだが。
これじゃあ、無理だよね。
諦めて出直すことにした。
後で、二人きりになれて邪魔がはいらない所を探しておこう。
入れてくれたお茶は緑茶で香りが良い。
口をつけようとしたとき、又してもイルカがお茶を取り上げた。
弁当のときと同じパターンだ。
きっとお茶に毒が入っているに違いない。
「ごごごめんなさい。俺のと間違えました。」
カカシが取り上げるよりも早く、又もや同じパターンでイルカはお茶を飲み干す。
やはり、その場に倒れ付してしまった。
ばたんと音を立てて倒れてしまうイルカ。
その音とイルカの様子にで騒めく職員室。
何人かが立ち上がり、こちらを伺うのが分かった。
イルカに手を伸ばそうとするカカシを見ている。
睨んでいる目もある。
何か誤解されたかもしれない。
しかし、誤解を解くより今はするべきことがある。
「イルカ先生?」
カカシはイルカの上体を抱えて首筋で脈を取り、口元に顔を寄せた。
微かに毒薬の匂いがした。
この匂いは、カカシは眉根を寄せた。
厳しい顔になる。
即効性ではなく、持続性の方が強い毒薬。
かなり強いな。
イルカがどこで手に入れてきたかは分からないが、とにかく解毒薬を飲ませなければいけない。
カカシは速攻で決断し、虫の息になりつつあるイルカを抱くと職員室から消えた。
向かった先は自分の家だった。
イルカが使った毒は特殊で多分、アカデミーの医務室にもない。
解毒薬を携帯している上忍も少ないと思えるから、解毒薬が確実にある自分の家に向かった。
家に着くとベッドにイルカを寝かし、急いで薬を棚から取り出して水と共に飲ませる。
特に水を多く摂らせるようにした。
水分を摂るとこの解毒薬はよく効くのだ。
だが、イルカは解毒薬は飲んだものの、更にぐったりとして反応がない。
水を飲ませたいのだが口から零れてしまう。
「うーむ。」
カカシは唸って考えた。
効率よく水を飲ませるのにはどうしたらいいか。
「緊急事態だしね。」ということで、口移しで水を飲ませることにした。
夕方になり、イルカは漸く目を覚ました。
「うーん。」と唸って薄く目を開けた、と同時に飛び起きる。
「ここは?」
「俺んち。」
はっとして、イルカは声がした方に振りむいた。
「カ、カカシ先生・・・。」
狼狽えるイルカをカカシはベッドに押し戻した。
「ほら、まだ寝てなさい。毒が抜けきってないから。」
傍にあった解毒薬と水差しを手に取りイルカの口元に持っていく。
「はい、もう一度、解毒剤飲んでね、でないと毒が完全に抜けないから。」
しかし、イルカは顔を背けた。
「入りません。飲みたくありません。」
強い口調ではっきり言った。
「必要ないです。」
その口調にカカシは、むっとなる。
「必要ないって、死にたいの?」
カカシも口調が強くなり問い詰める風になった。
「人に散々迷惑掛けといて死ぬって、どういうことよ?」
イルカは唇を噛みしめ、視線をあらぬ方向に向けている。
カカシの方を見ようとしない。
「あー、そー。」
そうくるわけなんだ、なら、実力行使だな。
カカシは思うと同時に、忠実に実行に移した。
イルカは多少、暴れたもの毒を飲んだために体力が落ちていたのでカカシに簡単に組み伏されて、あっさりと解毒剤を飲んでしまった。
抵抗しても無駄だと分かると、イルカはカカシの指示通りに水も飲んだ。
「はい、いいよ。」
再び、イルカをベッドに寝かせるとカカシの耳に低い呟き声が聞こえてきた。
「・・・もう迷惑にはならなかったのに。」
「え?」
「俺が死んだら、もうカカシ先生の迷惑にはならなかったのに。」
地球征服物語 3
地球征服物語 5
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