地球征服物語 3
人けのない場所に来た。
里の繁華街から少し離れた場所である。
来るかな?
カカシが、そう予想した時。
「カカシ先生!」
背後からイルカの声がした。
「ごめんなさい。」という小さな声も。
カカシは後ろから切りかかってイルカを難なく避ける。
避けながら刀を蹴り飛ばして、イルカの両手首を軽く捻って地面に倒した。
動かないようにイルカの背に膝を乗せて固定する。
イルカは観念したのか、真っ青な顔でぎゅっと目を閉じている。
さて、どうしたもんかな。
イルかを見下ろしてカカシは考え込む。
切りかかってきたけど、本気ではなかったようだし。
ともかく、まあ、理由を聞いてみるか。
腕を離すと逃げられそうだから、このままでもいいか。
そして「イルカ先生。」とカカシが呼びかけた時。
甲高い声がした。
「カカシ!何しているの?」
現れたのは、カカシの知り合いの上忍の夕日紅だった。
「え、何って。」
紅の突然の出現に驚くカカシだが、今の状況は如何せん、カカシに分が悪かった。
カカシがイルカを力で地面に捻じ伏せている。
傍には刀が落ちてはいたがカカシの下で、ぶるぶると震えているイルカを見ると。
どうしても、カカシの方が悪役になってしまう。
「あ、あのさ。紅。」
弁解しようとするカカシを目で黙らせた紅は、イルカをカカシの足元から救い出した。
「大丈夫、イルカ先生?」
イルカは項垂れたまま頷いた。
「怪我はない?」
紅の問いかけにイルカは無言で頷く。
「ちょっと、怪我なんてさせるはずないでしょうが!」
「煩いわね、カカシ。」
紅のきつい視線がカカシに突き刺さる。
「中忍相手に、しかもイルカ先生に何やってるのよ?」
「何って何にもしてないって、むしろ、やられそうになったのは俺の方だし。」
「カカシがやられそうになるなんて、あるはずないでしょ。」
「本当なんだって。」
カカシと紅が口喧嘩を始めそうになった時、おずおずとした声が聞こえた。
「すみません。」
イルカが二人に向かって頭を深く下げている。
「紅先生、カカシ先生の仰っていることは本当なんです。」
「ええ?」
「ほらね。」
イルカは傍にあった刀を拾い、胸に抱き締める。
「俺が、この刀でカカシ先生に切りかかって・・・。」
一度、沈黙してから続けた。
「処分ならお受け致します。ご命令なら・・・。」
イルカが鞘から刀をすらりと抜く。
刀身が日の光を浴びて、きらりと光った。
「この場で命を絶つことも。」
イルカはさっきのカカシを狙ったのも必死なら、今も必死のだ。
真剣な眼差しをしている。
いったい、イルカ先生は何をしたいのだろう?
カカシは訝しく思う。
目的は何なのだろうか?
もしかして、誰かに操られているのかもしれない。
カカシは、じっとイルカを見てみたが術の痕跡は見当たらない。
写輪眼で視てみるか。
カカシが左目を出そうとした時、素早く、紅がイルカから刀を奪っているのが見えた。
「ちょっと、イルカ先生。」
紅は奪った刀をカカシに押し付けてきた。
しょうがなく刀を持つカカシ。
「落ち着いてちょうだい。もし、イルカ先生の言っていることが本当だとしても理由があるでしょ?理由も分からず処分なんてできないわ。」
正に、その通りである。
「それとも何か悩みでもあるの?こんなことしてしまうほどの。」
イルカは悲しげな目をしていたが、何も言う気配がない。
言おうとして何度か顔を上げては俯いてしまうのだ。
顔を上げて悲しそうな目をして唇を震わせて、何かを言おうするのだが黙ってしまう。
そんなイルカに、紅とカカシは掛ける言葉が見つからない。
何となく、二人してイルカを苛めているような錯覚に陥ってしまう。
拉致が飽かないな、そう思ったカカシは一先ず言ってみた。
「イルカ先生。」
警戒させないように、極力、優しい声を出す。
「ねえ、これだけ教えて。何か理由があるのは確かなんだよね?」
イルカがカカシのことを、そっと見た。
「ややこしくて複雑な理由があって、そしてイルカ先生の本意はそこにはない。違うかな?」
イルカは目を瞬いた。
「言えないなら、頷くだけでいいから。」
ね?と安心させるようにカカシは微笑んで見せる。
果たしてイルカは微かに頷いた。
「そう。なら、今はいいよ。」
え?と云うように、イルカはカカシを見た。
驚いた顔をしている。
「言えるようになったら言ってくれれば。悩みがあるなら、いつでも相談にのるから。」
行っていいよ、とカカシが促すとイルカは迷いながらも一礼してから姿を消した。
「はあ、何なんだろ?どう思う、紅?」
イルカを見送ってからカカシは、今の遣り取りを聞いていたであろう紅に意見を求めた。
「紅?」
返事がないので紅を見てみると口を開き目を見開き、ぽかんとした表情でカカシを見ていた。
美人が台無しである。
「何?紅、変な顔だよ?」
「驚いているのよ。」
紅が不気味そうに言う。
「カカシの優しいところなんて初めて見たわ。」
「俺は、いつでも優しいけど。」
「あんな声、どこから出すのよ。まるで、イルカ先生のお父さんみたいよ。」
「あのね、俺の年齢でイルカ先生が俺の子供だったら、幾つの時の子供よ?」
「カカシでも優しいこと言えるのね〜。へ〜。」
紅は妙に感心している。
「それより、イルカ先生。何か、悩んでいるみたいね。」
「・・・そうだね。」
話は紅のペースで進む。
カカシは紅に自分の言い分を聞いてもらうのを諦めた。
「どうしたのかしらね、あんなに真面目な人が。」
何かを考え込み、カカシを振り返った。
「少しイルカ先生の行動には気をつけましょう。じゃ、私、もう行くわ。」
任務に行く途中だったから、と紅は言う。
「この刀はどうするのさ。」
カカシは未だにイルカの刀を持っていた。
「解決するまでカカシが持っているといいわ。」
そして紅も消えた。
「もー。」
カカシは頭を掻く。
「いったい、何なんだろうねえ。」
はあ、と深い溜め息を付いたカカシも、どろんと消えた。
地球征服物語 2
地球征服物語 4
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