地球征服物語 2
翌日。
昼の時間に、イルカは上忍控え室のカカシの元に来た。
手作り弁当を携えて。
「カカ、カカシ先生。良かったら一緒にお昼ご飯食べませんか?」
すごく緊張していた。
弁当作ってきたんです、と云う声は震えを帯びている。
ドキドキしているのが、上人控え室にいる全員に分かってしまう。
控え室にはカカシの他にも何人か上忍がいて、其其がカカシとイルカに好奇の目を向けてきた。
皆の目が語っている。
イルカがカカシに手作り弁当?どういうことだ?説明しろ!
説明しろ、たってねえ。
イルカはカカシの返事を行儀よろしく待っていた。
目が真剣で必死な様子が伺える。
昨日から、この人はちょっと必死過ぎる、とカカシは心の中で小さく溜め息をつく。
「あー、いいですよ。」
カカシは返事をして、イルカの手を引いて控え室から退出した。
控え室から離れた場所に行く。
外に出て適当な木陰に座って弁当を開いた。
色取り取りで美味そうな、おかずの数々。
イルカ先生って料理が上手なんだな。
そんな感想を抱いていると、イルカが揚げ物を箸で摘んでカカシの口元に持ってきた。
「あ、あの、良かったら・・・。」
多分、あーんと口を開けろということだろう。
だがカカシには、その揚げ物の中に薬物が含まれているのが分かった。
微かな匂いがした、ごく僅かだが、殺傷能力のかなり高い薬物の匂いがする。
でも、まあ、俺、この毒物の耐性あるし、解毒剤持っているから食べたら飲めばいいか。
カカシは、そう思い口を開けた。
イルカの手料理が食べてみたい。
どちらかというと、そちらの方に興味があった。
なのにイルカは、ぶるぶると震える手でカカシの口元まで揚げ物を持ってきて、今、正に口に入るというところで。
「ご、ごめんなさい。そ、そういえば、あ、味見がまだでした。」
目をギュッと瞑って、その揚げ物を自分の口の中に放り込んだのだ。
イルカは、その揚げ物を咀嚼して飲み込んでしまう。
「ちょっと、イルカ先生!」
驚いたのはカカシの方だった。
上忍のカカシならば、その毒には耐性があるが中忍のイルカはどうだろう?
一気に不安が襲ってきたカカシは、イルカの顔を掴むと口を開けさせようとした。
「イルカ先生、吐きなさい。食べちゃ駄目だって!死ぬよ!」
しかしイルカは、ぎゅっと口を閉じて開こうとしない。
同時にイルカの体から力が抜けて、カカシの腕に中に倒れこんできてしまった。
顔色は真っ青で体がひどく震えて、体中から冷や汗が滲み出ている。
「イルカ先生!」
カカシは懐から解毒薬を取り出すと、イルカに急いで服用させた。
幸い、処置が早かったお蔭でイルカは事無きをえた。
夕方まで、医務室で点滴をするはめにはなったが。
その間、カカシは本来なら要らぬ罪悪感を持ってしまいイルカに付き添ってしまった。
上忍の自分が一瞬早く行動していれば、こんなことにはならなかったよね。
命を狙われた相手を看病するなんてアレだけどさ。
放っておけばいいのだけど寝ているイルカが時折、苦しそうな表情を見せると額を冷やしているタオルを変えてしまったりしてしまう。
これも因果か奇妙な縁か。
夕方になり、漸く目が覚めたイルカはカカシがいることに大変に驚いていた。
「カカシ先生?え、夢?」
目の前にカカシがいることが信じられないようだ。
「夢じゃないですよ。」
カカシはイルカに額の汗を拭ってやりながら答えた。
「体調はどうですか?もう大丈夫?」
薬は抜けたみたいだけど、体がふらふらするんじゃない?
そう聞くと、それには答えずイルカは肩を落とした。
「ごめんなさい、カカシ先生。」
イルカは謝る。
謝るイルカは、本当に心から悔いているようだ。
だったら、あんなことしなければいいのに。
カカシは小さく息を吐いた。
「イルカ先生。」
肩を落とすイルカを見ていられなくて、カカシはつい、お説教してしまう。
「あんな強い毒薬、食べちゃ駄目でしょ?死んじゃうよ?」
俺ならいいけどね、と軽く付け加えた。
それを聞いたイルカは哀しそうに目を伏せた。
「俺・・・・・・。」
何かを言いかけている。
「ん?なに?」
カカシは優しく問いかけた。
「どうしたの?」
言いたいことがあるなら言っていいよ?、とニュアンスもこめて。
だけどイルカは、口篭ってしまう。
「俺は・・・。」
言いたいことがあるようだけど、言えないのか上目遣いだけでカカシを伺ってくる。
「俺・・・。」
言いかけては、何度も口篭ってしまうイルカを見てカカシは溜め息を付いた。
イルカはカカシの溜め息を聞いてビクリと肩を揺らす。
「すみません。」
イルカが何回もと頭を下げ始めた。
「すみませんすみません、カカシ先生、すみません。」
叱られた子供のようなイルカを見て怒る気をなくしたカカシは、ベッドの横に置いてあったイルカのベストを肩に掛けたやった。
「帰りましょうか、一緒に。」
なんとなく可哀相に思ってしまったカカシはイルカを家まで送っていった。
次の日。
愛読書を読みながら道を歩いていたカカシは後ろから付いてくる気配に気がついた。
最初から分かっていたが、敢えて気づかない振りをして、いつもの通り飄々と歩く。
カカシはいつも通りだったけど後ろの気配は、半端ではない強い緊張と大きな不安を漂わせている。
殺気など微塵も感じないのだが、何かを決死の覚悟でやろうとしているようだ。
イルカ先生。
カカシは心の中だけで呟いた。
何をやろうとしているのか、分からないけど。
カカシは、ちらと目線だけで後ろを見た。
そんな危ないもの持っちゃって、怪我だけはしないでよ。
後ろの徒ならない気配はイルカだった。
しかも結構な業物を思える、刀を両手で握り締めてカカシの後を隠れる様に付けてきている。
刀を握る両手は震えているが顔は真剣極まりない。
大丈夫かな。
多分、俺を倒そうとか襲おうとかだと思うんだけど。
それがイルカ先生の意思なのかは分からないけど。
後ろのイルカをとても気にしながら、カカシは余計な心配をして歩いている。
あの刀でイルカ先生、怪我なんてしなきゃいいんだけど。
かなり、イルカのことを心配していた。
地球征服物語 1
地球征服物語 3
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