トラトーレ 3
「で?どう思う?」
カカシから一連の話を聞かされて、発言を求められたアスマは、ゆっくりとタバコの煙を吐いた。
「で、って?」
「だから、俺とイルカ先生だよ。」
面倒だなあ〜、と心中思いながらアスマは言う。
「いんじゃないか。」
適当だった。
なのに、カカシは顔を綻ばせて「だよね〜。」とご機嫌になる。
「これで念願叶って、恋人になれそうだよ。」
「念願だったのか?」
「うん。」
「いつからだよ?」
「今年の春くらいかな。」
今年の春から今日まで三ヶ月くらいしか経ってないが、それでも念願と云うのだろうか?
確か同棲まがいの生活を始めたのは三ヶ月くらい前で、とっくに恋人関係になっていると思っていたんだがな、と思ったがアスマは賢明にも口を閉じていた。
一つだけ気になっていたことを聞いてみた。
「何でイルカは虎が好きだったんだ?」
「あー、あの人ねえ。動物っていうか、生き物全般が好きなの。」
だから、下心ありで近づいていった俺を警戒しないで、ほいほいと受け入れちゃったんだよね〜、と言うのは聞くべきではなかったか。
ちょっとアスマは悩んだ。
恋人付き合いのようなものが始まってから。
イルカはカカシに虎になってくれるように強請ることがことが多くなった。
今日も今日とてイルカの家に行くと、食後や入浴後のちょっとした時間に強請られたりする。
「カカシさん、虎になってくださいよ。」
ね、と両手を合わせて、お願いされると断れない。
印を切って、ぽんと虎に変化すると、イルカは大喜びで抱きついてきた。
「わー、可愛い。」
いつも、ぎゅーっと抱き締めてくれるのは心地よいのだが。
でも。
人間の時にはしてくれないなあ、とカカシはぼんやり思った。
どうやら、イルカは虎のカカシの方がお気に入りらしいのだ。
ちょっと切ない。
そんで、このまま就寝コースになっちゃうんだよね。
イルカは暫く抱きついて満足したのか、すっと離れて、いそいそとベッドの準備をする。
できると、ベッドの布団をぽんぽんと叩いてカカシを呼んだ。
「カカシさん、寝ましょう。」
一緒の布団で寝れるのは大変いいのだが。
「俺、このままですか?」
本当は人間の姿がいいんだけど。
口まで出かかった言葉を飲み込んで、カカシは聞く。
イルカは、ちょっと悲しそうにして。
「駄目ですか?」と言うので。
そうなると、もう駄目だった。
「いや、ぜーんぜん、オッケーですよ。」
心にもないことを言ってしまい、後悔しながらイルカのベッドに潜り込む。
イルカは、再び遠慮なく抱きついてきた。
「おやすみなさい。」
にっこりと笑ってから、幸せそうに目を閉じる。
「ん、おやすみなさい。」
虎になると、ちっとも甘い雰囲気にはならず恋人らしくもない。
こんなはずじゃなかったのになあ〜、と思いながらカカシも目を閉じた。
「で、どう思う?」
カカシに聞きたくもない話を聞かされたアスマは、またまた意見を求められていた。
「こういうのって、恋人同士なのかな?」
虎と俺、どっちが好きなんだろ、と真剣な顔になっている。
人の恋路はどうでもいい、とは顔には出さずアスマは言った。
「違うんじゃないか?」
「そうだよね。」
これって恋人じゃないよな、と暗い目をする。
「どこで間違っちゃったんだろ。」
「あー、虎にならなきゃいいんじゃないのか。」
「駄目だよ、そしたらイルカ先生、抱きついてくれないもん。」
あの抱きついてくる時の顔や腕が堪らないんだよねえ、とカカシは思い出して和んでいるが。
そこが違うんじゃ、と言いかけてアスマは止めた。
これ以上口を挟むと、間違いなく巻き込まれる。
きっと何とかなるだろうさ。
助言しようとする自分を押し止めて「どうにかなるさ。」と言うだけにした。
それから話の流れを変える為に、今晩の予定を言ってみた。
「あ、カカシ。今日の夜は、飲み会だから出席しろよ。」
「飲み会?」
「猛暑だから涼を求めて納涼会ってやつだ。ちなみに五代目が主催だ。」
「ふーん。」
カカシは気のない返事をする。
興味がなさそうだ。
「イルカは出席らしいぞ。」
「行く。」
一瞬で決まる。
アスマは場所と時間を伝えて、やれやれとタバコに火を点けた。
トラトーレ 2
トラトーレ 4
text top
top