AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する


ネコは人にあらず9



ぬくぬく、ふわふわ。
あったかくて心地よい。
イルカは目を閉じたまま笑顔になる。
ああ、なんて、ここは気持ちが良い場所なんだろう。
ずーっと、ここにいたい。
大好きな、あの人と。
大好きな?
あの人!
そこまで無意識に考えて、はっとイルカは目を開けた。
次いで、ばっと上半身を起こした。
そこはベッドの上。
今の今まで布団に包まれて眠っていたのだ。
ここは・・・。
すーっとイルカは青褪める。
背には大量の冷や汗が流れ落ちた。
「オレ・・・」
ごくり、とイルカは唾を飲み込んだ。
「オレ・・・」
青褪めていた顔が白くなり、みるみる血の気を失っていく。
イルカは両手で顔を覆った。
「な、なんてことを・・・」
何事かを思い出しているのだろうか。
ぶるぶると体を震わせてイルカは声にならない声を上げた。
「なんてことをカカシさんにしてしまったんだ」
悲愴な声を出したイルカにネコの耳と尻尾はない。
だがネコの耳と尻尾は消えても、耳と尻尾が生えていた時の記憶は消えてないらしい。
カカシにした数々の行為を思い出したイルカは正に穴があったら入りたい気分だ。
いや、消えてなくなってしまいたいという方が正しい。
「恥ずかしいっ!」
叫んだイルカは海より深く後悔し撃沈したのであった。



それから時計を見たイルカは更に動揺した。
夕方に近い時間帯だ。
カカシさんが帰ってくる!
カカシが帰ってきたら、おそらく多分、イルカにまたネコの耳と尻尾が生えてしまうのだろう。
それは昨日の風呂で実証済みだ。
風呂に入って少しの間、カカシと離れたことでネコの尻尾は消えた。
尻尾が消えると高揚した気分が少しは落ち着きを取り戻して、自分がした行動に対して恥ずかしさが沸き、風呂から出たら自分の家に帰ろうと思っていたのだが・・・。
カカシの顔を見たら、途端、そんな思いは吹き飛んでしまった。
無性にカカシに構ってもらいたくて懐いてしまった。
これではいけない、と心の隅で警鐘はなっているのは解っていたのだが、抗いがたい誘惑にイルカは勝てなかった。
カカシがイルカを撫でてくれるということに。
耳や尻尾をカカシに撫でられると、なんとも言えない気分になる。
子供が親に甘えるような、守ってもらえるような安心がイルカを支配した。
いつまでもカカシに甘えていたい。
大の男が何を言っているんだと自分でも思ったがカカシに撫でられる気持ち良さには格別で総てを忘れてしまったと言うのも過言ではない。
それほどカカシの手は気持ち良かった。



あの薬が原因だ、絶対に!
急いで着替え、部屋の中を綺麗に整頓しながらイルカは心の中で毒づいた。
あいつめ〜、と思う、あいつとは例の薬品開発の部署にいる知り合いのことだ。
昔からの付き合いだから薬の試薬を引き受けたけれど。
はあ、とイルカは盛大に溜め息を吐いた。
まさか、こんなことになるなんて・・・。
カカシまで巻き込んでしまって、本当に申し訳なかった。
日頃から尊敬する忍として密かに敬愛して、できたら、いつか親しくなれたらと思っていたのだが。
こんな形で親しくなるのは望んでいなかった。
もっと緩やかにカカシさんと親交を深めたかったのに。
嘆いても後の祭りだ。
昨日の酒を飲んだときのテンションもネコの耳の所為に違いない。
もう全部、薬の所為、ネコの耳と尻尾の所為にしてしまいたかった。
一番悪いのは、あいつだけどな!
カカシの部屋の整頓は一応、終わった。
「よし!」
部屋を見渡して完全に自分の跡を消したことを確認する。
今は綺麗に片付けることしかできないけれど、後ほどカカシにはきちんと謝りに来るつもりである。
それから借りた服も返しに。
「カカシさん、ごめんなさい」
今はいない部屋の主にイルカは謝った。
「迷惑かけてすみません」
カカシさんは、とんだ災難だとフォローしてくれたけど。
迷惑を掛けたことに変わりはない。
たった一晩いただったが部屋を出るのが名残惜しかった。
「優しくしてくれてありがとうございました」
一礼するとイルカはカカシの部屋を出て行ったのであった。



家に帰ったイルカは、すぐにでも例の薬品開発の部署に行こうと考えた。
あいつに会って解毒薬か何かを貰って飲む。
確か、一週間後に来いって言ったいたが一週間も待ってはいられない。
カカシさんに会う前に何とかしなくちゃ。
ネコの耳と尻尾はカカシと会うと生えてくる。
それ以外の人に会っても何も異常はなかった。
薬の仕組みが、どんなになっているのか知らないが何と傍迷惑な薬なんだ・・・。
この薬も里の役に立つのか、疑問も出てくる。
単に面白いからってだけじゃないだろうなあ。
そんな疑惑も生まれてくる。
あいつは、そういうやつだった・・・。
否定できないのが悲しくもある。
「とにかくっ!」
イルカは自分に気合を入れた。
「薬が原因なのは一目瞭然、何とかしないと!」
勇んで家を出たのだが。
イルカに待っていたのは、がっくりと落ち込んでしまうような報せと・・・。
行く手を塞ぐ、仁王立ちした怖い顔のカカシであった。





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