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ネコは人にあらず10



家を出てイルカが向かった先はカカシと行ったことのある薬品開発の部署のある施設であった。
この施設は森の奥にカモフラージュしてあるかのごとく作られていて、一見、森の中に溶け込んでいるように錯覚してしまう。
夕方の薄暗い森の中では知っている人間でなければ、そこに施設があると判別できないだろう。
何回か来たことがあるイルカは迷わず、その施設の入り口に行き着いた。
施設の入り口の扉の暗号を難なく開けて中に入った。
中は迷路のようになっているがイルカの足取りに迷いはない。
一度も迷うことなく、先日、来た部屋に到着した。
扉をノックする。
コンコンコン。
返事はない。
もう一度、ノックしたが結果は同じであった。
「いないのかな」
扉を押すと、すんなりと開いたが部屋の中は、がらんとしていて人の気配はなかった。
「あれ?」
きょろきょろと見回していると通りかかった誰かに声を掛けられた。
「そこの部屋のやつは昨日から任務に出ていて不在だよ」
「え?任務ですか、いつ帰ってきますか?」
「さあねえ、二、三日か、四、五日か、六、七日か、そこらじゃないか」
そう答えると通りかかった誰かは行ってしまった。
「困ったな・・・」
何とかしてもらうために来たのに肝心の人間がいないとは。
腕を組んで考えていたイルカは、ふと部屋の中のテーブルの上の紙に気がついた。
テーブルと同色だから気がつくのが遅れてしまった。
二つに折られた紙を広げると、そこにはイルカの名前が記されていた。
イルカへ、とある。
置手紙だった。
目を通したイルカは読み終わると思わず、ぐしゃと手の中で置手紙を潰した。
「あいつめ〜」
ちょっと怒っている。
「なんてことしてくれたんだ、全く」
それから大きく肩を落として深い溜め息を吐く。
「はあああ、何を考えてんだ、いったい」
疲れきった声だった。



手紙は簡潔に書かれていた。
『いつも手伝ってくれるイルカにハッピーサプライズプレゼントだ!楽しんでくれ!』
バカバカしい文言の下にはイルカにネコの耳と尻尾が生えた理由とカカシに懐く理由が記されている。
そして隅っこに小さく解毒薬はないからね、と小さな小さな字で見つけられないように書いてあった。
「もう〜、なんでこんなことを・・・」
置手紙を読み頭が痛くなった。
「余計なことをするなって」
もう一度、深い息を吐いたイルカは部屋を出た。
目的の人間がいなければ、ここにいる意味がない。
自分の家に帰るしかない。
それから・・・。
「あいつが帰ってくるまでカカシさんと接触しなければいいんだよな」
施設の中を出口に向かって、とぼとぼと歩く。
ようやく出口に着いた。
ちなみに施設は防音防壁防チャクラで、外の気配は一切解らない。
外界と完全に遮断されている。
だからイルカが、その気配に気がつけなくても仕方がなかった。
意気消沈して出口の扉を開けたイルカは目の前の人物を見て固まった。
そこにいたのは腕を組み、仁王立ちしたカカシだ。
イルカを見たカカシは、にやりと笑った。
怖ろしい顔で。
「見つけましたよ、イルカ先生」
カカシの方こそ、獲物を見つけたネコのようであった。



「カ、カカシさん・・・」
カカシの姿を見たイルカは後ずさりをした。
だが、すぐに追い詰められて施設の扉に背が当たる。
できたらカカシに近寄りたくなかった。
カカシの傍にいることでネコの耳と尻尾が生えてしまうから。
薬を飲む前に最後に見た動物が黒い猫だということと薬を飲んで最初に見た人間がカカシであったことが大きく関係している。
すなわち最後に見た動物に一部分が変化して、最初に見た人間に懐くという極めて厄介な薬だった。
傍にいればいるほど動物の本能ともいえる部分で懐くのだ、しかも警戒心を解いて。
自分の本来の性格よりも本能が強く出てしまう。
つまり、それはカカシの傍にいればいるほどネコのように懐いてしまうわけで。
昨日のようなことになったら不味い!
あんな自分は思い出すだけで恥ずかしくなる。
現にカカシを見ただけで羞恥のために、かああっと顔に熱が集まり火照っていくのが分かる。
「あ、あの、オレ・・・」
一歩、カカシがイルカに近づいてきた。
下がろうとするイルカに後はない。
「え、えと、その」
またカカシが一歩、イルカに近づく。
一歩、一歩、距離が縮まっていった。
どうしよう、カカシさんが来たら、また・・・。
ネコの耳が生えて尻尾が生えて、カカシさんに撫でてもらいたくなるじゃないか!
撫でてもらうのは気持ちいいが如何せん、今は理性が邪魔をする。
「カカシさん、とりあえず止まってください!」
イルカは懇願したのだがカカシは、あっさりと拒否した。
「や〜だよ」
そして一歩、近づいて、とうとうイルカとの距離まで手を伸ばせば届く距離になってしまった。
万事休す。
イルカの頭に、そんな言葉が浮かんだ。



「捕まえた」
カカシが腕を伸ばすとイルカは僅かに抵抗を見せた。
施設の中に逃げ込もうとしたのだ。
中に逃げ込まれてはカカシも追いかけられない。
扉の暗証番号を知らないから。
だけどもイルカを逃がすカカシではなかった。
逃げられる前に、がっちりと腕を掴みイルカの体を捕らえた。
「は、離してください!」
イルカはカカシの腕の中で暴れて、必死に抵抗している。
「まあまあ、落ち着いてイルカ先生」
耳元で囁けばイルカは、ぴたりと暴れるのを止めた。
そこに更に甘く囁いた。
「イルカ先生がいなくなって寂しかったんですよ、オレ」
腕の中のイルカを、ぎゅっと抱く。
「待っててくれるって言ったのに」
急にいなくなってしまって、オレがどれだけ探したと思っているんですか、と優しく宥めた。
「ご、ごめんなさい」
しゅんとイルカは項垂れた。
「ごめんなさい、カカシさん」
項垂れるイルカの頭にはネコの耳が生えていた。
耳もイルカを同じく、しゅんとしている。
「ね、帰りましょう、オレの家に」
カカシの言葉にイルカは大人しく頷いたのだった。




ネコは人にあらず9
ネコは人にあらず11



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