台風少年6
「アスマ、イルカに何教えてんの?」
カカシは先日のイルカが発言した清らか云々について問い質していた。
「清廉な魂って何だよ?好き嫌いせずに食べろって、明らかに逃げ口上じゃないか。」
「うーん。」
アスマは難しい顔をして唸り、明後日の方向を見る。
「だってなあ。・・・じゃあ、お前が事細かに教えればいいだろうが。」
そう言ってカカシを指差す。
「清らかが何たるかの説明を自分ですればいいだろ。」
「嫌だね、そんなことするやつは鬼だ。」
さっきまでアスマに言っていたこととは違うことを言い、カカシはそっぽを向いた。
「イルカの夢を壊すようなことはできないよ。」
「あのなぁ、カカシ。お前言ってること目茶苦茶だぞ。」
そして、アスマはわざとらしく溜め息をついた。
「自分にできないことを人に押し付けるなよ。それになあ。」
アスマは続けた。
「イルカは大人になったら結婚式は海辺の教会でしたいとか言ってたぜ。」
「え!イルカ、結婚するの?誰と?」
カカシが慌てふためいて聞くと、アスマは首を振る。
「大人になったらの話しだよ。だからイルカの思ってる清らかってのは、どうも俺達が考えている清らかとは違う気がするんだ。」
「ふーん。」
カカシは考え込む。
違うと言われても、じゃあ何なのかと考えても分からない。
「ところで。」
カカシが辺りを静かに伺い見る。
「敵が周りににわんさか、いるみたいだけど。そんでもって俺達のこと狙ってるみたいだけど。」
「さっきから気配はあったが。ちっ、数が増えていやがる。」
「どうすんの?」
答えは分かっているが聞いてみる。
「勿論、突破だ。」
アスマが両手のクナイを持ち直す。
「そうだよね〜。」
のんびりと言うカカシの手にも強力な武器となる長刀が煌いていた。
「じゃ行く?いつもいつもイルカに助けられてちゃ世話ないしね。」
「ああ。でもな、イルカは当分来ねえよ。」
「ええ、何で?忙しいの?」
二人は敵の間を走りながら余裕で会話をする。
「忙しいっちゃ忙しいと思うがな。遠くに行っちまったんだよ。」
「はあ?何、それ。」
「任務に失敗して責任取らされてな、遠隔地に長期任務だ。」
「本当?」
アスマは苦い顔をして頷き、切りかかって来た敵を薙ぎ払った。
「半分は本当だ。イルカは馬鹿だからな、色々あって他のやつの失敗を被っちまったんだよ。」
「どういうことさ。」
カカシは殺気を漲らせて勢いよく刀を振った。
敵が数人、一度に吹っ飛ぶ。
「イルカが失敗したわけじゃないんでしょ、何でそんなことになるのさ。」
本当バッカじゃないの、とカカシは言い捨てた。
「そうは言っても俺も後で知ったんだ。全てが決定した後でな。」
悔しそうにアスマは唇を噛みしめる。
「でもなあ。」
アスマは溜め息をついて肩を落とした。
「任務出発前のイルカに会って言われたんだよ。もっと強くなって帰ってきます、ってよ。」
だから待っていて下さい、なんて笑って言われたら大人気ないことできないだろ、と言葉とは裏腹にアスマは腹いせのように、これでもかと邪魔な敵を蹴飛ばした。
「だから俺も笑顔で見送ってやったさ。顔で笑って心で泣くってやつだ。」
「つまり、イルカが遠くに行ったのが寂しいわけね。」
「当たり前だろ。」
話しているうちに敵も少なくなり、大分走りやすくなってきた。
「心配なんだよ。まあ、イルカと一緒に任務に行く知り合いに、それとなく頼んでおいたけどな。」
「なんて?」
「イルカが、これ以上馬鹿なことをしないようにだ。」
「ふーん。馬鹿ねえ。」
ぽん、とカカシは両手をうった。
「あ、それを言うならアスマは親馬鹿じゃん。」
名言だった。
敵はいなくなり二人の足は快調に進む。
もうすぐ味方との合流地点だ。
「でさ、イルカはいつ里に帰ってくるの?」
「一年後だ。」
「ふーん。」
イルカは多分強くなって帰ってくるはずだ。
会うのが楽しみだとカカシは思う。
しかし、自分にも一言くらい別れの言葉があってもいいのではと少し不満だったりもする。
「あー、あとさ。イルカに失敗を被らせたのって誰?」
「聞いて、どうすんだ。」
「あー、ちょっとね。」
カカシが言い淀むと、アスマが滅多に見せない笑いを見せた。
ニヤリとして。
「安心しろ、ちょっとって言うのは俺が済ませた。」
ちょっとがどういうものか分からないが、多分カカシがやろうとしたことと同じことをしたのだろう。
「じゃ、いいや。」
カカシはあっさり言って空を見上げた。
「元気かなぁ。」
アスマも空を見上げる。
「元気さ、きっと。」
この空の遠くにイルカがいるはずだ。
早く戻って来いよ。
カカシは心の中で呟いた。
台風少年 5
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