台風少年3
カカシは結構、いや、かなりピンチだった。
敵が想像以上に強い。
侮っていた訳ではないが、思いのほか強敵だったのだ。
俺、里に帰れるかな〜。
血を流す右腕を押さえながら、次の手を考える。
どうしたら倒せるか。
里を再び、この目で見るために。
突然。
カカシと敵の傍らの池で、水しぶきが上がった。
高く上がった水しぶきは、雨のように落ちてきてカカシを濡らす。
そして、水しぶきの他にイルカも落ちてきた。
「助っ人、参上!」
イルカはカカシの前に軽やかに降り立つと敵と向かい合う。
「どっかでも、かかって来い!」
服や髪から雫がポタポタと滴っていたが。
気合充分、格好良かった。
煌く長刀を振りかざして、敵から目を逸らさず。
しばらく睨み合いが続いて。
やがて、敵は消えた。
「すっごいねー、イルカ。」
カカシが感嘆の声を上げる。
イルカが現れた時点で、安心とばかりに地面に座り込んでしまっていたのだ。
「気合で敵を退けるなんてさ。」
「偶々だろ。」
イルカは素っ気無く返事をすると、カカシの腕の傷を素早く処理していく。
「あっちは戦ってチャクラも減っていたし。そこへ、チャクラも体力も十分な応援が来たら、形勢逆転で逃げるって。」
「そう?」
「そうだよ。」
疑問を投げかけるカカシに答えを返し、イルカは立ち上がった。
「もう、一人で帰れるよね。ここから北に向かって、しばらく行くと仲間がいるから合流するといい。」
「イルカは?」
「俺はこれから、まだ任務があるからさ。」
「ふーん。」と、言いつつ、気になることを聞いてみた。
「何で池から出てきたの?」
「ああ。俺さ、水を媒介とすれば、空間移動の術が発動できるんだ。つまり、俺が出現できるほどの水溜まりがあればオッケーなわけ。」
「便利な術だねぇ。でも、危なくないの?」
「うん。一度失敗して、深い湖の底に移動して溺れた。」
カカシは眉を顰める。
「アスマは知ってるの?」
「アスマさまが知る必要はない。」
イルカはきっぱりと、言い切った。
「俺の任務は俺の責任だ。」
目には、強い意志が宿っていた。
イルカの言うことは、最もで反論の余地なく、そうだけど。
でもさー。
カカシは思った。
アスマはイルカのことを、とても心配していた。
少しくらい、心配させるのが親孝行ってもんじゃない?
ま、親子じゃないけど。
カカシの考えも知らず、イルカは術の印を組み始める。
また、水から水へと移動するつもりらしい。
「じゃあ、俺、行くから。」
術が発動し始めたのか、イルカは池の上を滑るように歩き。
そして、カカシの方を振り返った。
「ちゃんと里に帰るんだぞ。腕の治療もしろよ。」
まるで、カカシより年が上のように気遣う。
そのまま笑って手を振りながら、見る間に体が池に沈んでいった。
「またな。」
「ねえ、ちょっと。今、どこの部隊にいるのさ、教えてよ。」
「応援、援護のとこ。」
ちゃぷん、と音がして。
その言葉を最後に、イルカの体は池に沈み消えた。
「会いに行くから・・・。」
相手に聞こえるはずもない言葉をカカシは呟いた。
「イルカに会いに。」
この気持ちは何なのか、どうして会いたくなるのか解らないけど。
自分がピンチの時に助けに来てくれるなんて、これは巡りあわせとしか思えない。
「うん、運命の人ってやつだな。」
アスマが聞いたら怒りそうだ。
「さて、と。」
カカシは走り出す。
まずは、イルカに言われたとおりに、味方に合流して里に帰ろう。
里に帰ったら、イルカを探して会いに行こう。
会ったら、まずは何をしようかな。
知らずと、走る速度が上がる。
カカシは、しばらくぶりに楽しい気分になっていた。
台風少年 2
台風少年 4
text top
top