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好きじゃなくてもいい、嫌わないで 8



カカシの腕の中のイルカは微動だにしない。
胸の鼓動が更に早くなり、緊張しているのが分かる。
「イルカ先生」
カカシはイルカを驚かさないように、ゆっくりと優しく抱きしめる力を強くしていく。
とても満たされた気分だった。
胸の中の空いていた隙間が、ぴたりと収まるような。
自分が求めていたものが手に入ったような。
そんな感覚。。
イルカを抱きしめている。
イルカが自分の腕の中にいる。
この瞬間だけはイルカはカカシだけのもの。
知らず知らず、顔が綻び、笑いが漏れる。
イルカを手に入れたい。
完全に自分の手中に収めたい。
誰にも渡したくない、と思うのは何故だろう。
どのくらい、経ったのか。
不意に動いたイルカがカカシの胸を強く押してきた。
どんっと押されてイルカを抱きしめていた腕が緩む。
その隙にイルカはカカシの腕から抜け出した。



「カ、カカシせんせ・・・い」
動揺が激しいのか、イルカは心臓の辺りを手で押さえて息を乱している。
「な、なにを・・・」
するんですか、と言ったイルカの声は弱々しい。
「こんなの、こんなの」
カカシを見つめる目は何回も瞬きを繰り返す。
「こんなこと・・・」
心臓の辺りを押さえていた手を、ぐっと握り込む。
「こんなこと、何でするんですか・・・」
「何でって」
カカシは、にこっと笑って見せた。
「したかったから。イルカ先生が何も言ってくれないから、触れ合ったら何か解るかなって。何も言わないイルカ先生にも原因の一端はあります」
ちっとも悪びれていない。
「それにさ」
顔だけは、にこにことしながらカカシはイルカに近づく。 「俺たち、友達でしょ」
ね?と。
「友達なら、こんなことくらい普通にするでしょ」
「・・・友達とこんなことしません」
「そう?」
イルカに近づいたカカシは優しい声を出す。
「俺はイルカ先生しか友達いないけど。イルカ先生にしたくなったらします」
「・・・今みたいなことをですか」
「もちろん」
大きく頷くカカシ。
「だって俺、イルカ先生が好きですから」
衝撃発言をした。



カカシの発言を受けて、呆然としたようにイルカはカカシを見つめている。
「好きって・・・、友達としてですよね?」
イルカが掠れた声を出した。
「そうですよ」
カカシの顔から、すっと笑みが消える。
「そう、友達として好きです」
口を開けたイルカは何かを言おうとしたが、結局、何も言わずに口を閉じた。
じっと何かを考えている。
カカシは少し待つことにした。
イルカにも考える時間は必要だ。
友達として好きだと言ったけれども、それは違うと、もう自分で解っていた。
自分の気持ちを自覚してしまっていた。
「俺は・・・」
途方に暮れたような顔をしたイルカがカカシを見た。
「カカシ先生になろうと言ってくれたとき、嬉しかったです。恋愛上の付き合いじゃなかったら嫌われないと思ったし」
確か、イルカは嫌われるのが怖いとか辛いとか言っていたような気がする。
「喧嘩しても仲直りすればいいってカカシ先生言ってくれたし」
でも、とイルカの声が僅かに大きくなった。
「友達なのにカカシ先生のこと、どんどん好きになっていて。友達だからいいのかと安心したり」
友達のカカシの存在はイルカの中で大きくなっていったらしい。
「友達だからとカカシ先生に俺・・・、頼ったというか依存してしまって、すごく甘えたりしてしまって、これじゃいけないと反省したり」
イルカは考え考え、言葉を選びながら話している。
「両親が死んでから、ただ生きることだけに精一杯だったのに・・・。生きていれば、誰かを好きになったり嫌いになったりするんだなあと気がついたんですが」
それは例の一週間の告白のことを指すのだろう。
「・・・嫌われるって嫌ですよね」
真っ直ぐにカカシの目を見てイルカは言った。
「俺、カカシ先生に嫌われたくない・・・んです」
そのためには、どうしたらいいのかとイルカは思い悩んでいたらしい。
否、思い悩んでいる。



「今日は、もう帰ります」
すくっとイルカは立ち上がった。
「帰って一人で考えてみます、どうしたらいいのか」
「そう・・・」
引き止めたいカカシであったがイルカの意思を尊重することにした。
「お邪魔しました」
玄関で律儀に挨拶をするイルカにカカシが訊いた。
「俺とイルカ先生って友達ですよね?」
「・・・はい、そうです」
イルカは重々しく頷く。
「・・・友達です」
そう答えるイルカの顔は浮かない。
浮かない顔で呟いた。
「友達って何々でしょうね」
返事を求めていない呟きで。
そうしてイルカは帰ろうとしたのだが。
何だか、ここでイルカとの縁が切れてしまいそうだと危機感を感じたカカシは去って行くイルカの後ろ姿に向かって呼びかけた。
「イルカ先生!」
イルカが振り向く。
「また、俺の家に来てくださいね!それか、俺がイルカ先生の家に行ってもいいですか?」
振り向いたイルカが首を縦に振ったような気がした。



「あら、カカシじゃない」
紅の、のんびりとした声がした。
目だけ動かすと両手を腰に当てた紅が立っている。
「イルカ先生と仲直りしたんでしょ?」
「まあね・・・」
カカシの気のない返事を聞いて、紅は眉を潜めた。
「万事解決したんじゃないの?」
「まあね・・・」
「ふーん」
何かを見定めるように紅は、座っているカカシを見下ろす。
つと、カカシの横に座った。
場所は、いつものごとく上忍の控え室だ。
「イルカ先生と仲直りして何が不満なのよ」
「不満なんて別にない」
「じゃ、元通り友達に戻ったのね」
「・・・・・・・・・それなんだけど、友達じゃなかったんだ」
カカシが重い口を開いた。
「間違えていた、イルカ先生は友達じゃなかったんだ」
「へえー、そうなの」
「最初は友達になりたいと思っていたのは本当だけど、でも、それは間違いだった」
「そう」
紅が赤い唇の両端を上げて、にっこりと笑った。
「じゃあ、何だったのかなんて野暮なこと聞かないわ」
どうやら、紅は最初からカカシとイルカの関係が、どういうのもか気づいていたらしい。
解っていたが、傍観していようで。
女の勘は侮れない。
「だったら、いいこと教えてあげる」
人差し指を口に当てた紅はカカシの耳に何事か、囁いた。
「えっ!ほんと?」
「ほんとほんと」
「こうしちゃいられない!」
ぼんっと白煙を上げてカカシは、何処かへ消えてしまった。
「ま、どうにかなるでしょ」
紅がカカシに囁いた内容は・・・。
イルカが、どこぞの上忍に呼び出されて二人きりで、どこかへ行ってしまったこと。
付け加えて紅は言っておいた。
「私の勘だと、あれは愛の告白ね」
カカシが焦ったのは言うまでもなかった。





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好きじゃなくてもいい、嫌わないで9





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