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好きじゃなくてもいい、嫌わないで 3



次の日、カカシは自慢していた。
上忍の控え室で同じ上忍師仲間のアスマと紅に。
「俺ね〜、友達出来たんだ〜よ」
「友達!」
「友達?」
アスマと紅は同時に言って眉を顰めた。
「ここは現実の世界よ、妄想の世界じゃないわ」
「夢と現実がごっちゃになっているな」
散々な言われようだ。
「失礼な!」
むっとしたカカシは言い返す。
「何で俺に友達が出来ると駄目なわけ?俺だって、この広い世界に気の合う人が一人くらいいるとは思わないの?」
「まあ、一人くらいならねえ」
「その一人の犠牲者が気の毒だな」
やっぱり、散々なことを言うアスマと紅。
カカシの性格を、よく知っているからこその発言なのだろう。
「人の好みが激しいカカシに、いったいどんな友達が出来たのよ?」
「そうだそうだ、誰が友達なんだ?気難しいカカシの友達って誰だ?」
「あーのーねー」
付き合いの長い二人の言葉にカカシは長く深い息を吐いた。
「それは昔の話でしょ。若い頃みたいにツンツン尖っていませ〜ん、俺は大人になって丸くなったの」
性格は楕円形になっています、と言うカカシ。
そして言った。
「友達になったのはねえ、イルカ先生だ〜よ」
「イルカ!」
「イルカ?」
アスマと紅は、また仲良く同時に言って目を見開いた。



「イルカ先生って、アカデミーの?」
「イルカ先生って、受付に時々いる?」
「そうだ〜よ」
ふふん、とカカシは勝利の笑みを浮かべる。
「俺はイルカ先生と友達なの」
「・・・うそ〜」
「・・・有り得ねえ」
「何で嘘?何で有り得ないの?」
流石に、ここまで言われるとカカシも不機嫌にならざるを得ない。
「だってねえ」
アスマと紅は顔を見合わせた。
「イルカって、自分が仕事で疲れていても、いつも笑顔で癒してくれて、自分のことより相手のことを心配してくれて気遣いも最高」
「だけど」
ふうーっとアスマが煙草の煙を吐き出した。
「プライベートでは、その性格が一変してポーカーフェイスでミステリアス、人を寄せ付けない。そのギャップが一部で、結構受けている」
「・・・なに、それ」
「仕事とプライベートでは大きく違うから、気になるヤツは気になるらしい」
言われてみると・・・。
カカシの前と受付所の皆の前では、全く態度が違う。
「だから、そんなイルカと友達になったって言われてもなあ」
「すぐには信じられないわよね」
アスマと紅は頷き合う。
「本当に本当だから」
虚構でも勘違いでもない。
本当にカカシとイルカは友達になったのだ。
まだ、日は浅いけれども。
「俺とイルカ先生は友達なの」
とっても気の合う、そして大切な友達。
「イルカ先生のためなら、何でもするし出来るよ」
そして守ってあげたい。
カカシの手で。
そんなカカシをアスマと紅は不思議そうに見ていた。



「ま、友達の件は解ったわ」
一応ね、と紅はそこで話題を変えた。
「そうそう、今夜ね、親睦会という名の顔合わせがあるから必ず出席してね」
「親睦会?」
「懇親会とも言うな。所謂、飲み会だ」
新しく上忍師に就任したので、それの顔合わせを兼ねての飲み会だと説明される。
「中忍、上忍、入り乱れての飲み会だ。これから、何かと色んな人間と接触があるだろうし、付き合いの上では飲み会は欠かせないからな」
「えー、面倒・・・」
カカシが顔を顰める。
「そう言うな。ここは里なんだから、里には里の付き合いがある」
「そうよー、郷に入っては郷に従えよ」
どうやら、不参加やドタキャンは出来そうにない雰囲気だ。
・・・あ、もしかして。
カカシの頭にイルカの顔が浮かぶ。
・・・中忍も出席ならイルカ先生来るかもな。
イルカが来るなら、話は別だ。
面倒がっていた飲み会が、途端に待ち遠しくなってきた。
現金なカカシであった。



夜になり、カカシはアスマと紅に連れられて、飲み会へと出席していた。
出席をせざるを得ない状況であった。
飲み会は広い座敷で行われるらしく、人が大勢いて、ざわざわとしている。
カカシが座敷に入ると、視線が一斉に集中した。
「・・・・・・ちょっと、すっごく居心地悪いんだけど」
「少しの我慢よ。飲みが始まれば、どってことないわ」
酒が入るまでの我慢ということだ。
はああ、と心中、溜め息を吐きながらカカシは広い座敷内でイルカの姿を探す。
中忍と上忍は、何となく分かれて固まっている。
その中忍の集合体を中心にカカシはイルカを探したが・・・。
「あれ?」
どう見ても何回見ても、イルカがいない。
結った黒髪が見当たらない。
「どうしたの?」
粛々と飲みが始まった座敷内で不審な動きをしているカカシに紅が訊く。
「何か探しているの?」
「え?ああ、イルカ先生がいない・・・」
カカシのがっかりしたような声を聞いて、紅が面白そうに目を細めた。
「何よ、友達なのに出欠のこと聞いてないの?」
からかっている。
「・・・そんな暇なかったから」
苦し紛れのカカシの言い訳にアスマと紅は酒が入っていることもあり、大いに笑う。
そして、衝撃に事実を告げられる。
「イルカ先生は飲み会苦手だから来ないわよ、きっと」
「たくさんの人が集まる場所が苦手だからな〜」
「ええっ!」
「お酒は飲めないことないけど、好きそうじゃないし」
「仕事以外で子供は別として、人と話す時は一歩引いている感じだしな」
イルカは仕事を離れると、遠慮がちで控えめで人前に出ることを良しとしないらしい。
「知らなかった・・・」
イルカが来ると思ったから、全く気の進まない飲み会に来たのに。
イルカ先生が来ないんだったら来なかったのに〜、と消沈したカカシは自棄になって酒を飲んだ。
飲み会も中盤、皆、出来上がってきている。
座敷は、わいわいと盛り上がっていた。
ふと、その時。
カカシの視界の隅に、ぴょんと跳ねた黒髪が飛び込んできた。
思わず、そちらを見ると、そこには・・・。
待ち侘びていたイルカの姿があった。



イルカは遅れてきたことを詫びるように、周囲に頭を下げていた。
周りの人間と言葉を交わしているが、その間、カカシがいる方を一度も見ない。
カカシが痛いほど視線を投げかけているのに気がつく様子はない。
すとん、とイルカは座敷に一番隅に正座し、話しかけられて時々、相槌打つくらいで大人しくしている。
手には酒ではなくソフトドリンクなのか、オレンジ色の液体が満たされ、ストローが刺さったグラスを持っていた。
ストローでソフトドリンクを飲むイルカは妙に可愛らしい。
何人かの酔っ払いがイルカを取り囲み、イルカの姿がカカシに視界から消えた。
酔っ払いはイルカの肩に気安く触り、顔を近づけ距離を詰めているのをカカシは目撃した。
何だか、イライラとしてくる。
「あらあら」
イルカの姿を見た紅が酒を飲みながら、柳眉を潜めた。
「イルカ先生も大変ねえ、偶にこういうところに来ると」
「だなあ」
アスマも同意している。
「滅多に来ないから、来たら来たで構ってほしい輩が群がるなあ。酒の勢いもあるしな」
カカシに構ってほしいヤツらは遠巻きにして見ているがな、とアスマが余計なことを付け加える。
カカシのイライラが本格的になってきた。
苛立ちが募ってくる。
イルカがいるのに、カカシの傍にいないから。
イルカがカカシを見ないから。
友達なのに。
友達になったのに。
とんとんとん、と忙しなくカカシの指が膝の上で叩かれた。
イルカがいると思われる方を見ていると一旦、酔っ払いの輪が乱れ、イルカが現れた。
手にはソフトドリンクではなく、別のグラスを持っている。
否、持たされたのか。
そのグラスに、どんどんと酒が注がれて、イルカが困ったように笑い、口を付ける。
一口飲んでは注がれて、更に一口飲んでは注がれる。
永遠とループしているようだった。
手を振って、もういいとジェスチャーしても酔っ払いには通じないようで。
イルカは手にしたグラスの酒を持て余している。
しかし、飲め飲めと促されているのが手に取るように分かった。
何しろ、四方八方、酔っ払いばかりだから。
酔っ払いたちはベタベタとイルカに触りまくり、そのうちの誰かがイルカの肩に手を回した。
その光景を見たカカシの中で、何かが切れた。
ぶちっと。



「イルカ先生!」
盛り上がり騒がしい座敷に大きな声が響き渡った。
カカシが、こんな大きな声を出したのは初めてかもしれない。
瞬間、座敷が静まり返る。
そこを逃さず、カカシは叫んでイルカの名を呼んだ。
「イルカ先生!」
カカシに注目が集まり、次いでイルカが注目される。
「イルカ先生、こっち来て!こっちに!」
ちょいちょいとカカシは手招きして、自分の隣の席の座布団を叩く。
カカシの隣に座っていたアスマは、とっくに除けられていた。
「俺の隣に!イルカ先生!」
カカシに呼び声が聞こえたのか、イルカが立ち上がる。
その際に、ふらっとよろめいたが、すぐに体勢を整え、ゆっくりとカカシの方へと歩いてくる。
イルカは酒が回っているのか、ふらふらとしていた。
傍に駆け寄って支えたい、と思いつつも、注目を浴びている中で、そんなことをしては後で何を言われるか解らない。
イルカが。
カカシは何を言われようとも、何とも思わないけれど。
広い座敷を歩いて、漸くカカシの元に辿り着いたイルカに手を伸ばす。
そのカカシの手をイルカは取った。
ぎゅっと握られる。
よろめくイルカの体を、もう片方の手で支えながら、慎重に座らせた。
カカシの傍らに。
「大丈夫?イルカ先生?」
遠目からは判らなかったがイルカの顔は、だいぶ赤くなっていた。
お冷を取ってイルカに渡すと、ごくごくと飲み干してしまった。
ふーっと息を吐いたイルカの目は、とろんとしている。
「・・・すみません、カカシ先生」
言葉は、しっかりとしているが・・・。
「遅れて来たので、駆けつけ三杯とかやらされてしまって」
見知った顔のアスマと紅にも律儀に挨拶をするイルカ。
「いいのよ、気にしなくて」
何杯飲んでも変わらない紅。
「こっちでは気楽に飲めよ」
マイペースで飲んでいるアスマ。
「だけど」
紅が興味深そうにカカシとイルカを眺めた。
カカシは甲斐甲斐しく、イルカの世話を焼いている。
「本当だったのね、カカシとイルカ先生が友達って」
「・・・カカシ先生と友達だなんて、おこがましい限りです」
友達だなんて恐れ多い、と謙遜していた。
「そんなことないでしょ」
やっと望み通り、イルカが傍にきたカカシは酒の所為もあって、気が大きくなっていた。
こんなことは稀だ。
イルカがいることで、飲んでいた酒が利いてきたらしい。
「俺たち友達だもんねー、イルカ先生」
にこにこと笑うカカシはイルカを腕に抱きこんだ。
「俺とイルカ先生は固い絆で結ばれた友達なんだよね!」
大勢の、皆の前でカカシはイルカと友達宣言をしてしまった。
多くの人間に聞かれたのは間違いない。
そして、カカシの腕の中のイルカは・・・。
俯いていて、どんな表情をしていたのか、カカシは終ぞ知ることがなかった。




好きじゃなくてもいい、嫌わないで2
好きじゃなくてもいい、嫌わないで4




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