それはいわゆる一つの恋愛感情 8
「ええ〜」
カカシの頬は嬉しさで、ゆるゆると緩んだ
「イルカ先生、俺のこと好きだって言っていたんですか〜」
緩んだ顔で、にやにやと締まりなく笑っている
多分、カカシの周りにはハートの形をしたピンク色の何かが飛び回っているに違いない
そんなカカシを幾分、不気味そうに見た綱手は頷いた
「ああ、なんでも食堂でカカシと会ったって戻ってきた時があってさ」
「ああ・・・」
そのことなら、よく覚えている
一緒に食事でもして親交を深めようとしたら逃げられてしまったのだ
「その時、イルカは息を切らせて様子がおかしかったから、どうしたんだと訊いたら・・・」
「訊いたら?」
「カカシを前にすると飯が食えないなんて言うからさ」
そこまではカカシも知っている
それはカカシに対してだけであり、他の人に対しては特に何もない
特定の人間にだけ起こりうる現象なのだ
「で、まあ」
綱手は、その時のことを思い出したのか、はあと息を吐いた
「それって、いわゆるあれだろう?」
「あれですね」
「だろ?だからイルカに、ずばっと訊いた、カカシが好きなのかってさ」
カカシと綱手は視線を合わす
目は口ほどに物を言う
綱手が言おうとしていることが、ものすごくカカシには解った
「そしたらイルカは、きっぱりと言ったよ」
その先は聞かなくとも察せられる
「カカシのことが好きだってね、そして、とっても尊敬してお慕いしていますって」
「・・・そうですか」
カカシの盛り上がっていた気持ちが、半分ほど消沈してしまっていた
「私のことも好きだって言うし、でも私を好きな気持ちとカカシを好きな気持ちは
違うと説明しようとしたところで仕事が忙しくなってね」
それきりになってしまった、と綱手は言った
「なるほどねえ」
イルカはカカシのことが好きだけれども、それが、どういう好きなのか
自分でも理解していないということが判明した
どうやって解らせたらいいのか、とカカシは考え始める
いっけん柔軟そうで、それでいて頑固そうなイルカに恋愛感情を解らせるには、どうしたらよいのか・・・
「でもさ」
考え始めたカカシに綱手が興味深そうに訊いてきた
目が好奇心で輝いている
「カカシは、どうしてイルカのことを好きだって判ったんだい?」
女性は幾つになっても恋の話が大好きらしい
「どうしてって、それはですね〜」
カカシは顎に手をやって考える
「説明は難しいですけどイルカ先生の体に触ってみたら判ったんですよ、ああ俺、イルカ先生が好きだなあって」
「なんだい、そりゃ」
「おそらく、元々、イルカ先生が好きだったっていう気持ちが深層意識にあって、
それがイルカ先生の体に触ったことで明るみに出たっていうか覚醒したっていうか」
イルカ先生は明るくて親切で良い人で魅了要素満載ですし、もしかして俺のことが好きなのかなあ
と思った瞬間から俺も惹かれていたんでしょうねえ、としみじみと言う
「触ったってカカシが言うと含みがあるねえ」
今度は綱手が、にやにやと笑っている
「しょうがないでしょう」
カカシは、むっとしながらも、それを認めた
「好きな人に触りたいと思うのは自然の欲求です」
言い切った
「まあ、それはそれとして」
長々と廊下で立ち話としていたカカシと綱手である
「私は、そろそろ部屋に戻らないとシズネに怒られる・・・」
部屋とは火影が執務をする部屋のことだ
見たくもない、たくさんの仕事が、てぐすね引いて綱手を待っている
眉を顰めた綱手の顔には、はっきりと戻りたくないと書いてあった
しかしカカシは冷たい
「そうですか、じゃ俺はこれで」
家に帰って寝ますと気楽なものだ
「ちょいとお待ち、カカシ」
そんなカカシが癪に障ったのか綱手はカカシの首根っこを引っ掴んだ
「そういや任務が目白押しだったよ、一つ頼む」
「えー、やですよ」
「いいじゃないか、簡単な任務だからカカシならすぐに終わらせて明日の朝には里に帰って来られる」
「ご免こうむります」
「いいのか、そんなこと言って」
綱手の目が、きらりと光る
何事か計略しているように
「これからイルカは私の仕事を手伝いに来るんだぞ、きっと明日の朝まで手伝うに違いない」
「イルカ先生が・・・」
イルカの名前にカカシは素直に反応してしまう
「カカシが明日の朝までに任務を終えて里に帰って来て、
私の部屋に来ればイルカに会えること間違いなしだぞ」
なんだか魅力的な話だった
カカシは、ごくりと唾を飲む
期待が膨らんできたのだ、色々と
「で、その後は?」
「その後は」
カカシと綱手は声を潜める
密談の様を呈してきた
悪巧みでもしているようだ
綱手は我が意を得たりと微笑んだ
「カカシとイルカに休みをやろう、一日だけになるが」
イルカ先生と一緒に休み!
その言葉にカカシは、わくわくしてしまう
結局、綱手の甘言に弄されてしまった
イルカに会うために任務を頑張ってしまう
好きな人に会うためならば、と
恋する男心があるならば、時に純粋でピュアなものだとカカシは、つくづく思ったのだった
そしてイルカはカカシが任務から帰ってきた時
火影の部屋におりカカシを、にこやかに出迎えてくれたのであった
それはいわゆる一つの恋愛感情 7
それはいわゆる一つの恋愛感情 9
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