それはいわゆる一つの恋愛感情 7
それから数日
カカシは任務の都合等で受付所に顔を出すことが出来ず、それは当然イルカに会えないことを意味する
あー、イルカ先生に会いたいな〜
会って何がしたいって訳じゃないけれど
好きだと判明した人に会いたいと思うのは世の通りだ
イルカ先生も俺のこと気にしていてくれたかな・・・
少し期待をしてしまう
会わない数日間、イルカがカカシのことを考えていてくれていたら
少しでもカカシのことを意識してくれていたら、と
そんなことを考えつつ、カカシは数日振りに受付所の入り口をくぐった
受付にはイルカと五代目火影の綱手、他に数名の者がいた
迷わずカカシはイルカに報告書を提出する
しかしイルカの態度はは、いつもと変わりがなかった
「カカシさん、お疲れ様です」
にこにこと笑みを絶やさない
柔らかい雰囲気も、いつものままだ
「任務、お疲れ様でした」
明朗快活に言うと、すぐに報告書チェックします、とテキパキと仕事をこなしていく
この間のことなんて、なかったの如く
酒の席でカカシと抱き合ったことなんて、なかったかのように
もちろん抱き合ったと思っているのはカカシだけであったが
「あの〜、イルカ先生?」
「はい、なんでしょうか」
にこり、と笑みを絶やさずイルカがカカシを見上げてきた
「報告書のチェックなら、もう少しです」
「あー、そうですか、いや、そうじゃなくてですね・・・」
「はい」
「この前の、あのことで・・・」
「この前と言いますと?」
カカシが何を言おうとしているのかイルカは、まるで分かっていないらしい
しかし、この前のことを、ここで話すのは、どうだろうとカカシは少し考えた
俺とイルカ先生の以外の人がいるし、ちょっとデリケートで
プライベートなことなので聞かれるのはどうかなあ、と
自分は別に構わないけれど
でも、ここで話したことで恥ずかしがってイルカに逃げられたら元も子もない
始まってもいない恋というか、始まりそうな恋が下手したら、この場で玉砕する可能性も無きにしも非ずだ
何をどう言おうか、迷っているうちに報告書のチェックは終了してしまった
「報告書のチェックは完了です」
無残にもイルカから、終了です、と告げられた
「え、あの、イルカ先生、俺ですねー」
運の悪いことに受付所は混雑する時間帯になりつつあった
カカシの後ろにも何人か並び始めているので早くイルカの前から退かなければならない
「あ、イルカ先生」
駄目元でカカシは誘ってみた
「受付所が終わったら飯でもどうですか」
「すみません」
イルカは申し訳なさそうな顔になってカカシに頭を下げた
「受付が終わったら別の仕事が入っておりまして」
「じゃあ、それが終わったら」
カカシは頑張って粘ってみる
だがイルカは手強かった
「本当に申し訳ないのですが」
再び、その頭を下げられた
「その後は火影さまのお手伝いをさせていただくことに」
さすがに、その言葉にはカカシの眉が、ぴくりと上がった
「またですか」と言いつつ、傍らに綱手を睨んだ
「私じゃないよ」
カカシに睨まれた綱手は、ちっとも動じずに肩を竦めた
「イルカに手伝いを頼んだのはシズネだよ、
余りにも仕事が過多でどうしようもなくてイルカに泣きついたらしい」
「やっぱり火影さまが悪いんじゃないですか」
「違う!私は悪くない、仕事が多すぎるんだ」
「だから計画的に仕事をしたら如何ですか、ってアドバイスしたじゃありませんか!」
「もう忘れたね」と綱手は、すっとぼける
カカシと綱手の間の空気は束の間、険悪になってしまった
その空気を、さり気なく取り成したのはイルカであった
「まあまあ、お二人とも落ち着いてください」
和やかな雰囲気を醸し出しながら穏やかな声をイルカは出す
「火影さまも連日、仕事が忙しくてお疲れでしょうし、
カカシさんも任務が終わって里に帰ってきたばかりで疲れがお疲れでしょうから」
険悪な空気が変わり、場が和んでいくのが分かる
「火影さま、ここはもう私たちだけで大丈夫です一旦、火影室にお戻りになってください」
「分かった、すまないね」
「カカシさんもご自宅にお帰りになってお休みなられてください」
「そうします」
真面目に一生懸命に仕事をしているイルカに言われては面目がない
カカシと綱手はイルカの勧めに従って受付所を後にした
受付所を出たところでカカシは綱手に、ぽんと肩を叩かれた
「まだ、なにか?」
不審そうに思って訊くと綱手が同情するような目でカカシを見ている
「悪い悪い、さっきは、つい、あんなこと言ってしまったがね」
「なんですか、本当に」
綱手は、やれやれと言った風に溜め息を吐いて腕を組んだ
「あれだろ、カカシはイルカのことが恋愛感情で気になるんだろ」
ずばり言われた
「え、なんで、それを」
「そりゃあ、見てれば分かるさ」
長い人生を生きてきた年上の貫禄を綱手は見せる
「それにイルカはカカシが受付所に来ると雰囲気が変わるからな」
「えっ!」
カカシが嬉しそうな声を上げた
「カカシが来ると、すっごく嬉しくて嬉しくて仕方がないって風にさ」
「そうですか〜」
でれっとカカシの頬は緩んだ
「でも、本人は解ってないみたいだけどな」
「そうですよね〜、本人だけが解っていなくてですね〜」
カカシも困ったものだ、と腕を組む
しかし綱手の次の発言にカカシは色めきたった
「この前、イルカはカカシのことが好きだと言っていたのになあ」
好き!
イルカ先生が俺を!
俄然、気持ちが盛り上がってきたカカシなのであった
それはいわゆる一つの恋愛感情 6
それはいわゆる一つの恋愛感情 8
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