それはいわゆる一つの恋愛感情 6
「でも、俺・・・」
カカシに残るように引き止められたイルカは心底、困っているように見えた
「あの・・・」
やっぱり俯いたままで顔を上げようとはしない
カカシに握られたままの手も先ほどよりは震えは止まっているものの、ぷるぷると微かに震えている
かなり緊張しているようだ
「まあまあ、イルカ先生」
そんなイルカに緊張を解すようにカカシは一旦、握っていたイルカの手を離す
「イルカ先生、何か飲みませんか?あ、それとも何か食べますか?」と気を回した
「ここに来てからビール飲んだだけなんでしょう」
きっとお腹が空いているはずだとカカシは料理と注文しようとしたのだが、
それをイルカは遮った
「いいです、俺、腹は減っていないので」
「そう?何も食べてないんじゃないの?すきっ腹に酒はよくないよ」
「いいんです」
頑なにイルカは首を振る
「いいんです、た、食べれませんから・・・」
「食べれない?」
そのイルカの言葉にカカシは不可解だという顔をした
「嫌いな食べ物でもあるんですか?それとも、ここに来る前に腹に何か入れていたの?」
「違いますけど」
「じゃあ、なんで?」
「なんでって」
イルカは口篭る
「なんでって言われても・・・」
途方に暮れたような声を出した
「なんで?」
カカシはイルカへの追求を止めなければと思いながらも困るイルカの様子がどこか可愛らしく思えたのと
第六感とも言うべき勘が働いてイルカに質問を重ねてしまう
「ここはアスマと紅の奢りだから気にしなくてもいいのに」
勝手なことを言っていた
「いえ、そうじゃなくて」
「じゃあ、なに?」
カカシは容赦ない
「なんで食べれないの?」
的確に要点を突いて訊いてきた
カカシの容赦ない追求、それに加えて対面したまま座ったままになっていたので何だかお見合い的な雰囲気も
無駄に醸し出している
そんな雰囲気に耐え切れなくなったのかイルカが、ついに吐き出した
「だって、俺、カカシさんを前にすると」
「俺を前にすると」
イルカの答えにカカシは何故か期待して、わくわくしている
「食べたり飲んだり、できなくなるんです・・・」
変ですよね、とイルカは体を小さくして縮こまった
「普段、普通に話したりするのは平気なんですけど」
落ち着かないのか、体を揺らしながらイルカは告白を続ける
「二人きりになったり、カカシさんを前にすると喉に何も通らなくて・・・」
イルカは顔を上げてカカシを見た
不安そうな表情をしている
頼りなさそうなイルカを見てカカシは手を伸ばしたくなった
赤く染まっっている、その頬に
頬を撫でて抱きしめて、心配ないと言ってあげたい
そんな焦燥に駆られた
「どうしてなのか自分でも解らないんですけど、どきどきが止まらなくて」
そんなイルカにカカシは、どきどきする
「なんていうか、カカシさんといると緊張するんです」
説明が難しいんですけど、とイルカは締めくくった
「それって」
カカシの胸はときめいた
それってそれって・・・
恋なんじゃない!
だがイルカは、そこで限界だったのか、すくっと立ち上がったかと思うと、
あっという間に下足を履いて座敷の外に出て行ってしまった
座敷の外、安全圏に逃げたイルカはカカシ、アスマ、紅に深々と頭を下げた
「すみません!今日は、もう帰ります」
そうして、イルカは帰ってしまった
最後に「後で割り勘で精算してください」と言い残して
「いいの?帰して」
紅は一応、カカシに訊く
カカシがイルカのことを送っていくとか、ほざいていたから
アスマと紅は目の前で繰り広げられていた恋愛劇が、やっと終わったので肩の力を抜いていた
カカシとイルカの見ている者が砂を吐いてしまうような、甘ったるいムードが霧散して晴れ晴れとしていた
恋愛劇を見ている間に、かなりの量の酒を飲んでいる
カカシに睨まれてから邪魔をしないように上忍の力を最大限に駆使して気配を全力で消していたのだ
「うーん、まあねえ」
イルカを見送ってカカシは再び、酒を飲み始めた
「今は、あんまり追い詰めると駄目だと思うんだよねえ」
にやり、とカカシは笑った
何気に目が笑っていない
「それに俺、解っちゃったし」
にやりと笑いながら嬉しそうにするカカシ
「イルカ先生に触って触られて自覚したんだよーね」
何を?とアスマと紅は突っ込まずにはいられない
「えー、それはね」
楽しげにカカシは言った
「イルカ先生のことを好きだってことをね」
その深くなる笑みはまるで、お楽しみはこれからだ、と言っているとアスマと紅は思ったのだった
それはいわゆる一つの恋愛感情 5
それはいわゆる一つの恋愛感情 7
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