それはいわゆる一つの恋愛感情 3
「あのさ、イルカ」
言葉を選びながら綱手は慎重にイルカに言った
「えーとだねえ、もしかして・・・」
「はい?」
「うーんとさ」
じれったくなって、ずばり綱手は指摘する
「カカシのことが好きなんじゃないのかい」
言われたイルカは目を、ぱちくりとさせた
「え、好きって、誰が誰をですか」
「イルカがカカシを、だよ」
「俺がカカシさんを?」
「そうだ」
もちろん、綱手の指摘は恋愛感情を含んだ意味での好きということだ
だがイルカは・・・
嬉しそうに笑みを浮かべると綱手の言ったことを、あっさりと肯定した
「はい、好きです」
「だから好きっていうのは・・・え、好き?」
てっきり否定すると思っていた綱手は出鼻を挫かれた
イルカはカカシのことが好きだと、はっきりと言っている
「あ・・・、そうなのかい」
拍子抜けだ
「はい!」
しかし元気溌剌でカカシが好きだと言うイルカは恋愛の要素とは、程遠い感じがした
なんとなく嫌な予感する綱手
おそるおそる訊いてみる
「イルカ、カカシが好きだって言うのは本当の本当かい?」
「はい、とても信頼できる立派な上忍でいらっしゃいますし、子どもたちには優しいですし」
やはり恋愛感情とは、ちょっと違うような気がする
恋愛につきものの恥じらいとか躊躇いが見受けられない
「お慕いしております」とイルカは言い切った
慕う・・・
綱手は密かに溜め息を吐く
慕っているだけの相手に対して、どきどきしたり目の前にするだけで食べ物が喉を通らないと有り得るだろうか
イルカはカカシに恋愛感情を持っていると思うんだけど、どう説明したらいいものやら・・・
それは綱手の年の功ともいえる直感だ
「じゃあ、イルカ」
綱手は別のことを訊いてみた
「私のことは好きかい?」
「はい、大好きです」
「私はイルカに慕われているってことだな」
「はい、火影さまのことはお慕い申し上げております」
「じゃああ」
綱手はイルカに、びしっと人差し指を突きつけた
「イルカは私といて胸が、どきどきしたり飯が食べれないってことはあるのかい?」
「え、それは」
言われたことにイルカは戸惑っている
「火影さまといても、そんなことはありません」
首を振った
「ふーん」
綱手は考える
イルカにカカシに恋愛感情を持っているけれど
その可能性が限りなく高いと思うが幸か不幸かイルカは、そのことに気がついていないようだ
好きは好きなのだけど、綱手のことが好きということとカカシのことが好きということの違いが解っていない
人前で好きだと公言してしまうのがイルカらしいとイルカらしいけれど
微笑ましいなあと綱手は、つい和んでしまう
そんなイルカに己の感情について気がつかせた方がいいものか、綱手が真剣に悩み始めた時だった
「綱手さま、仕事捗っていますか」
外に出ていたシズネが帰ってきた
シズネは綱手の付き人をしている
「あー、さぼっていますね!」
目を三角にして怒るシズネの前で綱手は考えていたこと中断して仕事をすることになりイルカの件については、そのままになってしまった
一方、カカシは食堂でイルカに逃げられた次の日の夕方、報告書を受付所に出しにいったもののイルカとは行き違いで会えず、しょげていた
カカシとは行き違いでイルカは既に帰宅してしまったということだった
イルカ先生、帰っちゃったのか
とぼとぼと歩きながらカカシは一人で帰宅の途に着く
会えないとなると会いたくなるんだよなあ、なんでか知らないけど
イルカと話したいという欲求も高まっている
俺って逃げられると追いかけたくなる性分だったのか・・・
自分の性格に新しい発見もあった
・・・となると
カカシは不穏なことを計画してしまう
サプライズでイルカの家を訪問して夜通し話してみるとかね
ちょっと面白そうで楽しそうとカカシは自分の計画に、わくわくしてしまう
突然、訪ねたらイルカ先生、どんな顔するかなあ
ちなみに、この時点でカカシはイルカの家の場所を知らないのを、すっかり忘れていた
とりあえずイルカの家に行く前に腹ごしらえをしようと、カカシは通りすがりにあった店に入ったのだった
「あ!」
入った店でカカシは偶然にも目当ての人の姿を発見した
イルカがいたのだ
しかも寝ている
イルカは座敷の部屋で数人に囲まれて飲んでいたらしく、隣に座っている人間の肩に凭れて目を閉じていた
几帳面にも正座したまま頭だけ、こてっと隣の人間の肩に預けている
そのイルカの姿を見た途端、カカシの胸の内に、もやっとしたものが湧き出てきた
正体は不明だが、寝ているイルカの無防備な姿を見て非常に腹が立ってしまったというのに近い
そんなところで寝ちゃって、まあ・・・
すやすやと子どもみたいに寝ているじゃないの
イルカが頭を預けて寝ている人物は、そんなにイルカの信頼を勝ち得ているのか
そんなのずるい!
カカシは感情の赴くままに、ずかずかと、その座敷に乗り込んでいったのだった
それはいわゆる一つの恋愛感情 2
それはいわゆる一つの恋愛感情 4
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