それはいわゆる一つの恋愛感情 2
疑惑を確信にするため、試しにカカシはイルカに言ってみた
少々、期待もして誘いをかけてみる
受付所は幸い人も少なく混んではいないので少しくらいの雑談をしても構わないだろう
「ねえ、イルカ先生」
「はい」
イルカが顔を上げて、こちらを見たので無邪気を装って、にこと笑って見せる
「もしよかったら、今日、受付の仕事が終わったら、ご飯でも食べに行きませんか?」
「ご飯・・・」
「ええ、まあ、夕飯でも、どうかなと」
そう言うとイルカは、あっさりと首を横に振った
「大変、申し訳ありませんが」
丁重に断りを入れてくる
「受付の仕事が終わったら火影さまのお手伝いをすることになっておりますので」
誘っていただいたのにすみません、とイルカは頭を下げてきた
「そうですか」
ちょっと、いや思ったより残念だった
イルカの隣に座る綱手を見ると綱手はカカシを、じろりと見返してきた
「なんだい、その目は!イルカには前々から手伝いを頼んでいたんだからな」
「・・・もっと計画性を持って仕事したら如何です?」
「うるさい」
あっち行け、と綱手はカカシを追い払うように手を振った
「もう用はないだろ、帰って寝ろ」
「はあ、まあ、そうします」
その日は大人しくカカシは家に帰ったのだった
次の日
昼食を食べるためにカカシは偶々、受付棟にある食堂に立ち寄った
そこでイルカが一人で昼食を食べている姿を発見した
時間が遅いためか食堂は人影が、まばらで早く言えば、がらがらだ
イルカはカカシに気づかないのか一人、もくもくと昼食を食べている
カカシは適当にメニューを選ぶと、それを持ってイルカに近づいた
「イルカ先生」
呼びかけるとイルカは弾かれたように顔を上げた
口の中のものを、ごくりと飲み込み目を瞬かせている
「カ、カシ先生・・・」
ひどく驚いたような表情だった
「あ、どうして」
「俺も昼、食べに来たの」
カカシは持っていた昼食をイルカに見せる
「ここ、座っても?」
了解を取ってイルカの正面の席に腰を下ろした
見るとイルカの食べている昼食も半分ほど残っている
食べながら、ゆっくりと話が出来るかもしれない
実はカカシはイルカと、じっくり話したことがない
立ち話ならするんだけどなあ
だが昼食に箸をつけカカシが食べ始めるとイルカの箸が止まってしまった
「食べないの?イルカ先生」
「あ、え、そ、そうですね」
カカシに指摘されて箸を持つイルカだったが、どこか、そわそわとしていて落ち着きがなくなっている
昨日、受付で見たような人懐こさのようなものが皆無だった
どちらかというとカカシから離れたがっているような気がする
・・・あれ?
おかしいな、とカカシは眉を微かに潜めた
イルカ先生、昨日、見たときと感じが違うかも、と
なんでだろう、と原因と突き止める前にイルカが勢いよく立ち上がってしまった
「お、俺、そういえば火影さまに呼ばれていました」
「また、仕事を手伝わされているんですか?」
「いえ、そんなことは・・・何分にも忙しいものですから」
イルカは半分ほど残っている昼食を持ってカカシに、失礼します、と頭を下げると逃げるように食堂から出て行ってしまった
「・・・どうしたのかな、イルカ先生」
ぽつり、と呟いた
一人残って昼食を食べ続けるカカシ
遅い時間に独身男性一人で飯を食べるのは、とても侘しい
「さ、寂しい〜」
イルカ先生とご飯食べたかったなあ、とカカシは心の底から思ったのだった
火影室の扉が、ばたんと音を立てて開きイルカが息を弾ませて入ってきた
「あれ、イルカ」
綱手は首を傾げた
「今さっき、昼を食べに行ったはずじゃないのか」
帰ってくるのが随分、早いじゃないかい、と綱手はイルカに訊く
「え、いや、はい、あの」
イルカの答えは要領を得ない
顔を上気させて息をする度に肩が大きく上下している
「どうしたんだい?落ち着いて話してごらん」
はい大きく息を吸って吐いて〜と言う綱手の言葉通りにしたイルカは、やっと落ち着きを取り戻したようだ
落ち着いた頃を見計らって綱手はイルカに再度、訊いた
「で、昼は食べてきたのかい?」
「は、はい、一応」
「一応?」
「半分くらい残してしまったんです」
「ふーん、美味しくなかったのかい?」
「ま、まさか」
イルカは首を、ぶんぶんと横に振った
「食堂の飯は、いつも美味しくて好きです、そういうんじゃなくてですね」
「じゃー、どういうんだい?」
仕事に飽きていた綱手は、これ幸いとイルカを追求する
目が好奇心で輝いていた
「えっとですね」
イルカは言い難そうにしていた
「食堂に行ったら、ある人と偶然、会いまして」
「ふむふむ」
「普段、その人と普通に話す分には平気なんですけど二人きりになったりしたりすると何故だがすごくどきどきしたり、
その人が目の前にいると何故だか食事が喉を通らなくなってしまったり」
ある人とか、その人とかいう人間に綱手は薄っすらと心当たりがあった
「それで、その人と会った途端、飯が食べれなくなって戻ってきたってことかい、イルカ?」
「はい、そうです」
イルカは素直に頷く
「・・・あのさ、その人って誰だい?」
見当はついていたが綱手は尋ねてみた
思ったとおりの答えが帰ってくる
その人とは・・・
「カカシさんです」
綱手の勘は的中したのだった
それはいわゆる一つの恋愛感情 1
それはいわゆる一つの恋愛感情 3
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