それはいわゆる一つの恋愛感情 12
「れんあいかんじょう・・・」
イルカはカカシに言われたことを復唱した
「れんあい・・・」
「そうなんです」
カカシは重々しく頷いた
「イルカ先生が俺と二人でいる時だけ緊張してどきどきしたり、食事が食べれなかったりするのは俺のことが好きだからです」
「すき・・・」
「イルカ先生は俺を好きだという感情と他の人を好きだという感情は同じだと思っていたようですが」
確かにイルカは、そう思っている
「イルカ先生は俺が、とっても好きなんです、俺に恋しているんです」
「でも」と反論しようとするイルカにカカシはイルカの尻尾を注す
「犬の尻尾は顕著に感情を表します、イルカ先生は俺のことが好きだから大きく尻尾を振ったんでしょう?」
それは事実だ
「好きというのは恋愛、つまり恋とか愛とかの意味で俺のことが好きなんですよ」
諭すように、子どもに言い聞かせるようにカカシは、ゆっくりと言葉を吐き出した
「でなけりゃあ」
カカシはイルカの手を、ぐっと握り締めた
「俺のこと、そういう風に意識しないでしょ」
「う、まあ・・・」
言われてみればイルカも何となくだが、そう思いつつあった
カカシのことは好きだけど好きって、ただ好きじゃなくて特別な感情が入っていたのかと納得してしまう
だからカカシと二人になると、無闇矢鱈に、どきどきしてしまっていたのか・・・
「それに」とカカシに、ぐっと迫られる
カカシの顔が間近に迫っていて真剣な顔に不覚にもまた、どきどきしてしまった
「運命の悪戯からか、今、イルカ先生に生えている、その耳と尻尾からイルカ先生の気持ちが俺には手に取るように解ります」
「え」
「だって俺、忍犬使いですから」
妙に説得力があった
「犬のことなら木の葉の里で三番目くらいに詳しいと自負しています!」
そのカカシの言葉に「里で一番じゃないのか?」と綱手が、ぼそっと突っ込む
「ほら綱手さま、木の葉の里には犬使いの一族がいるじゃないですか」
シズネがフォローした
「ね、だから」とカカシは穏やかに微笑んでイルカの耳に手を伸ばした
柔らかな耳裏を撫でる
軽く引っかくように撫でるとイルカが、リラックスしたような表情になった
自然、イルカの顔が嬉しそうに変化した
耳が、ぱたぱたと動いて、もっと撫でてと、せがんでいる
カカシは怯えさせないように、ゆっくりとした手つきで耳を撫で続けた
「今日は一緒に帰りましょう、俺と」
優しく、あやすように言う
「俺と一緒にいて、どきどきしてもいいんですよ」
どちらかと言うと大いに、どきどきしてもらいたいカカシである
ずっと繋いでいた手を僅かに引くとイルカは反射的に体を強張らせた
「怖くないですよ〜」
楽しそうにカカシは言って笑う
「ほらほらイルカ先生、こっちにいらっしゃい」
子犬を懐かせているような感じだ
イルカは、ぱたぱたと尻尾を振ってはいてカカシに傍に行きたがってはいるものの躊躇っている
恋だ愛だ、恋愛感情だと言われても、すぐには受け入れられないのかもしれない
解っていても体が動かないこともある
「あ、そうだ」
思いついたようにカカシは、わざとらしく言った
「お腹空いたでしょう?帰りにラーメンでも食べて帰りましょうか」
ラーメンはイルカの大好物である
「ラーメン!」
その言葉にイルカの耳と尻尾は、正に顕著に反応した
耳と尻尾は、ゆらゆらと揺れている
ラーメンを前にしてカカシに対しての警戒心も薄くなっているようだ
そこを逃すカカシではない
「じゃ、火影さま、俺たちはこれで」と退室しようと素早く任務の報告書を提出した
「俺とイルカ先生は今日は休みでいいんですよね」
カカシは念を押して確認してきた
「ああ、そうだよ」
綱手は親心を出してかイルカを心配そうに見遣る
「カカシ、イルカに手荒なことなんてするんじゃないよ」
釘を刺した
「そんなことしませんて」
カカシは喜びで、はち切れんばかりの笑顔だ
イルカを無事にお持ち帰り出来そうなので殊の外、嬉しいらしい
「イルカ先生には、恋愛感情なるものについて俺から、よーく教えるだけですから」
懇切丁寧にね、と出ている片目でウインクするとカカシはイルカを連れて火影室から出て行ってしまった
「あの二人、大丈夫でしょうか」
シズネが危惧する
「まあ、多分ねえ」
はああ、と綱手は大きく息を吐き出した
朝っぱらから、ラブシーンと思えるような光景を見せられて気力が著しく削られている
これから今日の仕事が始まるのに
それはシズネも同じようであった
「恋愛感情って当人たち以外にとっては諸刃の剣ですね」と、げっそりした顔で呟いていた
後日
綱手は幸せそうなカカシとイルカを目にした
二人して一緒にいて楽しそうに笑っている
ああ、上手くいったんだなあ、と
幸せっていいもんだよなあ、と、しみじみ思ったのだった
終わり
それはいわゆる一つの恋愛感情 11
それはいわゆる一つの恋愛感情 余談
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