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Slow Starter8



「イルカ、大丈夫か。」
心配した仲間が背中を摩ってくれた。
「ほら、水。」
差し出してくれた水で喉を潤したイルカは、はあっと息を吐いた。
そして、ぽつりと本音が出てしまう。
「怖かった。」
心臓は未だに、どきどきしている。



「そうだよな、いきなりイルカをテントの中に引っ張っり込んで、なあ?」
「いったい、何をしようとしたんだろう?」
仲間がイルカも思っていたことを口にする。
「イルカ、もしかして、さっきの隊長と知り合いなのか?」
「いや、そんなことないよ。」
イルカは首を、ぶんぶんと振った。
「あんな人、一度会ったら忘れないよ。」
「そうだよなあ。」
「でも、イルカの名前を知っていたみたいじゃないか。」
「それは、俺にもよく分からないんだけど。」
確かに、さっきの隊長、はたけ上忍はイルカの名前を知っていた。
教えた覚えもないのに、なんでだろう?
イルカが考え込んだ時、先ほど、イルカを庇ってくれた髭の副隊長がやって来た。



「よう、さっきは悪かったな。」
もう一度詫びてから、副隊長は口に銜えていた煙草の煙を吐き出す。
「俺はこの隊の副隊長のアスマだ。あの馬鹿には、こいつに。」
と、イルカの頭をぽんぽんと軽く叩く。
「近づかねえように、きつく言い含めておいたから安心してくれ。」
「・・・はい。」
漸く、気持ちが落ち着きイルカの体の震えも止まってきた。

「でだな、肝心のトラップのことだがな。早速、取り掛かってもらいたい。」
アスマが話し出した。
地図を広げて、トラップを仕掛ける範囲を示す。
「ここから、ここまで。頼んだやつを仕掛けてもらいたい。」
「はい。あの、例のですね。」
仲間の一人が頷いた。
「そうだ。殺傷能力の高いトラップを頼む。トラップの仕掛けが終了次第、俺達も動くつもりだ。」
作戦を実行するということらしい。
「了解。」
イルカを含む三人の表情が一変した。
真剣な目付きに、きりりと顔が引き締まる。
トラップを専門にしている人間が必要で呼ばれたのだ、役に立たなければいけない。



「じゃ、とりあえず、手分けしてやろうぜ。」
「だなあ、範囲が広いから、その方が早いだろう。」
イルカたちは地図を見ながら、自分の手持ちを区分した。
「今回のトラップは防御レベルは低いけど、その分、攻撃レベルが高いから慎重にな。」
「分かってるって。」
「集中力が欠けたと思ったら、休憩しろよ。一回、手順を間違ったら、最初からやり直しだからな。」
「やり直しはきついよな・・・。」
三人は顔を見合わせ一度、頷くと一瞬で消えた。




「いてっ。」
ぱちんと切った銅線が弾かれて、イルカの指先がスパッと切れた。
途端、血が滲み出てくる。
血の出た指先を、ぺろりと舐めたイルカは、簡単に応急処置の止血した。
さっきから、こんなことを何度もやっている。
トラップ作りも全然捗らない。
溜め息を漏らしたイルカは額に手を当てた。
集中できない。
一人になると、先ほどのことが思い出されて、しょうがないのだ。
先ほどの、訳の分からない、はたけ上忍の行動がだ。



何で、いきなり、俺にあんなことしたんだろう。
あんなこと、を思い出して、知らずイルカは口元を触っていた。
カカシから、呪いと称して触れてもらった口元だ。
触れると安心する唯一のものだった。
「カカシさん・・・。」
あの時から、終ぞ、言ったことのない言葉が口から出た。
カカシと別れた時からだ。



「元気かな・・・。」
はたけ上忍をカカシさんと似ていると思ったけど、やっぱり他人の空似だった。
カカシさんは、あんなに乱暴じゃないし、それに雰囲気が全く違う。
もっと、のんびりしていて、やる気のなさ全開だった。
あの、はたけ上忍のように切れ者って感じじゃなかったし。

多少、カカシに失礼なことを思いながらもイルカは、ふっと微笑んだ。
「カカシさん、優しかったもんな。」
確か、とイルカは想いを馳せる。
寝相が悪くて離れて布団を敷いて寝たのに、朝、起きたらカカシさんが俺を抱きしめて一緒に寝ていてくれて、びっくりしたけど嬉しかったな。
誰かと一緒に寝るなんて久しぶりで、誰かに抱きしめてもらったのも両親がいなくなってから初めてだった。
すごくあったかくて、ずっと胸に、ぽっかりと空いていた何かの隙間が埋まったような感覚だった。



「でも。」とイルカは、はたけ上忍の言葉を思い出した。
気になっていた背中の傷、とか言っていたような。
現在、イルカの背中に傷はない。
背中に傷を負ったことはあるけど、それは二、三年前の話だ。
起爆札の実験に失敗して背に火傷を負ったことがある。
その時のことを言っているのだろうか。
だったら、と再び疑問が沸き起こる。
何故、それを知っているのだろうか。



その時、がさり、と茂みの中を誰かが歩いてくる音がした。
考えに夢中でトラップを作る手を止めてしまっていたイルカは、びくっと体を震わせてから音のした方を振り返る。
そこには件の、はたけ上忍の姿があった。




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