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Slow Starter5



「じゃ、俺、行きますから。」
荷物を抱えてイルカは立ち上がった。
「宿は今日で引き払う手はずになってます。支払いは、昨日済ませてあるので、カカシさんは、そのまま出て行って大丈夫ですよ。」
「了解。」
「夕方、宿場町の東の出口で落ち合いましょう。そこで総ての情報をお渡ししますから。」
「うん、分かった。」
カカシが頷いたのを見て、イルカは一礼して部屋を出て行こうとした。



その時、カカシに、ふと悪戯心が湧き上がった。
イルカの手首を、はしっと掴んで引き止める。
「まだ、何か?」
首を傾げるイルカにカカシは、少々、人の悪い笑みを浮かべた。
「あのねえ。いいこと、教えてあげるよ。」
「いいこと?」
「うん。」
そのまま、もう片方の手を腰にイルカの回して自分の方に、ぐいと引き寄せた。



「何をするんですか?」
本当にイルカは不思議そうな顔をしている。
状況が、よく分かっていないらしい。
背の高いカカシの胸に引き寄せられて、胸の中からカカシの顔を見上げている。
特に危機も感じていないのか、逃げようともしない。
ふふ、とカカシは口元だけで笑うとイルカの耳に囁いた。
「ターゲットが恋人がいるのかって、しつこく聞いてきて困っているんでしょう?」
「はあ、まあ。」
「だからね、困らないようにしてあげる。」
カカシはイルカの手首を掴んでいた手を、イルカの頭を固定するように項に当てると、ちゅっと音を立てて、耳たぶより少し下の皮膚に吸い付いた。



暫く、吸い付いて唇を離すと柔らかい皮膚には赤い跡が残った。
所謂、キスマークだ。
「あの、カカシさん?」
戸惑うイルカに構わず、カカシは首筋の何箇所かと鎖骨の辺りにキスマークを増やしていく。
何だか、ひどく楽しかった。
大き目の服から出ている、イルカの二の腕の内側にもキスマークを付けていく。
最後に、イルカの手首を、もう一度掴んで、一際、目立つように手首の内側にもキスマークを付けた。



カカシがイルカに付けたキスマークは、総て、外側から見える位置にあった。
イルカが今、着ている服では丸見えで、キスマークだと一目で分かる。
そして、それが何を意味するのかも、大人であったら分かるだろう。
恋人がいることの証明になるものだ。



やっと、カカシから開放されたイルカは二の腕の内側や手首に付いたキスマークを興味深げに眺めていた。
擦ってみても消えないことが分かるとカカシの方を見て、無邪気に聞いてくる。
「これが、何か?」
「・・・・・・え。」
「これがあると、恋人がいると聞かれても困らないんですか?」
「・・・・・・そうだけど。」
「これって何ですか?」
「えーとね。」とカカシは言葉を濁して、一歩、退がった。
「本当に知らないの?」
背中に冷や汗が流れ落ちる。
ものすごく余計なことをしたのかも、と今更ながらに思った。



「あのねえ。」
カカシは苦し紛れの言い訳をする。
「それは親愛の情を表すためのもの、かな?」
「親愛?親しい人同士が付け合うものってことですか。」
「そ、そうだね。」
「へええ。」
イルカは珍しそうにキスマークを見てから、思いもかけぬ一言を言った。
「でも、父さんも母さんも、俺に、こんなの付けたりしませんでしたよ。」
家族同士では付けないのかな、と首を傾げいている。
「ああ、そうね。そうかもね。」
そりゃそうだろう、家族の間ではキスマークなんて付けるはずがない。
カカシは無垢なイルカの瞳から目を逸らしながら、神様、俺が悪かったです、と心の中で懺悔した。



「じゃ、俺、本当に行きますから。」
イルカはカカシに手を振ると、あっさり、部屋を出て行ってしまった。
キスマークの本当の意味も知らずに。
カカシはひどく後悔したのだが、同時にイルカにキスマークを付けたことに何故か満足もしたのだった。



夕方、カカシが宿場町の東の出口で待っているとイルカが駆け寄ってきた。
「待ちましたか?」
「いや、大丈夫・・・。」
そんなに待ってないよ、と言い掛けて、イルカの顔を見たカカシは言葉が止まってしまった。
「どうしたの、それ?」
「ああ、これですか。」
イルカの口元は切れていて、頬が少し腫れている。
殴られたような感じであった。
「大したことないですよ。」
そう言って笑ったのだが、カカシの目には痛々しく映った。



「それより、これ。」
イルカは巻物と一枚の紙をカカシに手渡した。
「巻物には情報が纏めてあります。こちらは建物の見取り図です。」
「ああ。」
受け取りながらもカカシはイルカの顔から目が離せなかった。
喋る度にイルカの口元の引き攣り、血が滲んでいるのだ。



カカシは手を伸ばすと、そっとイルカの口元に触れた。
「痛そうだけど、本当にどうしたの?」
理由が知りたかった。
「うーんとですね。」
イルカは少し迷うと顛末を話してくれた。
「カカシさんが、朝、親愛の印ってやつを付けてくれたじゃないですか。」
「うん。」
キスマークのことだろう。
「そしたら、それを見たターゲットが『俺の純情返せ!』と言って俺に殴りかかってきて。」
イルカは素直に殴られたらしい。
「でも俺のこと、殴ったと思ったら急に泣いて謝ってきて、建物の見取り図を俺の手に押し付けて『幸せにな!』って走り去って行ってしまったんです。」
なんでか、よく分からないんですけどね、と本当に意味の分かってなさそうな顔でイルカは言った。
殴られた原因はカカシがイルカに付けたキスマークだったのだ。



「ごめん。」
イルカが不本意な暴力を受けたと分かってカカシは消沈して肩を落とした。
カカシが余計なことをしなければイルカは殴られなかったかもしれない。
「これくらい平気です。カカシさんが謝ることじゃないですよ。」
笑ってイルカは、自分より背の高いカカシの肩を慰めるように、ぽんぽんと叩く。

イルカの笑顔が、やけに眩しく見えて、カカシは引き寄せられるようにイルカに近づくと腕の中に、しっかりと抱きしめた。




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