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Slow Starter16



それから外でイルカに会うとカカシは「イルカ先生。」と声を掛けた。
イルカもカカシのことを、すんなりと「カカシ先生。」と呼んでくれる。
先生とを付けて呼ぶことは、中々に新鮮だった。


二人が、そう呼び合うことに特に疑問を抱く者いず、自然に呼び合っていた。
それととも、関係も少しずつ親密になっていく。
カカシが食事やらに誘えばイルカは、数回に一回は誘われてくれた。
断られる理由は諸々あったがカカシの観察したところによれば一番の理由がイルカが多忙だったということだ。
アカデミーで授業をしているかと思えば、次には受付け所で受付けをしていたりもする。
また、どちらもにいないかと思えば、三代目に呼び出されて執務の手伝いをさせられていたりと、里にいるはずのイルカの居場所を掴むのには、カカシは結構苦労していた。



「あ〜あ、もっと、一緒にいられると思ったのになあ。」
カカシは上忍の控え室で待機しつつ頬杖をつきながら、アスマ相手に愚痴っていた。
「なんでえ、毎日、楽しそうに過ごしているのに不満があるのか?」
アスマは煙草を吸いながら面白そうにカカシを見る。
「里に帰ってきて、恋焦がれる人の傍にいるのに不満ってか?」
「不満なんてないけどね〜。」
口を尖らしてカカシは言う。
「不満じゃないよ。不満じゃないけど、もう少し、こう俺との時間があればいいなあって思うだけ。」
「なんだ、やっぱり不満じゃないか。」
呆れたように言ってアスマは紫煙を吐き出した。
そして思い出したように言う。



「だいたい、カカシが誰かを一途に想うなんて似合わないことしてるなあ、とよく思ったものだが。続いているよな、なぜか。」
「なぜかって失礼なやつだな。」
じろっとカカシはアスマを睨んだ。
「俺の想いは概ね、純粋だ〜よ。でもさあ。」とカカシは両手をソファーの背もたれに広げて足を組んだ。
「実際、誰かを好きになるなんて切っ掛けは些細なことなんだよね。好きになって、それからの気持ちが大切なんだと思うよ。」
「へええ。」
アスマはカカシの言葉を聞いて目を丸くする。
「カカシが真面目なこと言っているぜ。」
「本当に失礼なやつだな。」
「悪い悪い。」とアスマは楽しそうに笑って謝った。
「カカシにとって、イルカは本当に大事な人なんだな。」
アスマは真面目な顔で言った。
「よかったじゃねえか、そんな人間に出会えてよ。」
「まあね。」
照れくさくなったのかカカシは、そっぽを向く。
「多分、イルカに会ってなかったら、俺、今日まで誰も好きになっていなかったと思うよ。」
他愛ない会話の一つだったけれども、カカシの言ったことには真実が含まれていた。



「じゃあ、そんなカカシにいいこと教えてやるよ。」
アスマは煙草を持った手でカカシを指差した。
「いいこと?」
「そうだ。」
アスマは声を潜めた。
「カカシ、お前、自分が目立っているって自覚あるか?」
「それなりにね。」
つまらなさそうにカカシは答える。
「で、だ。お前が誘うのはイルカだけ。他の人間が誘っても、いっつも答えは否だろう。」
「俺が一緒にいたいのはイルカだけで、他の人間には興味ないもん。」
事も無げにカカシは言った。
「イルカとだけ一緒にいたいのに、他のことに時間を割くなんて嫌だ。」
「はっきりしているな。」とアスマは半ば諦めたように溜め息をついた。
ある意味、潔いと言ってもいいかもしれない。



「もしかして、それでイルカに何か文句でも言う奴がいるわけ?」
ぴくりとカカシの眉が跳ね上がったが、アスマは「違う違う。」と手を振った。
「文句のある奴らも勿論いるだろうが、カカシが自分で断りをいれている訳だし、お互いに大人なんだからイルカに矛先を向ける奴はいねえよ。専ら、恨み言はカカシだけに向いているって話しだ。」
「なーんだ、ならいいよ。」
カカシはソファーに上で踏ん反り返った。
「そんなの俺の愛の力での跳ね返しちゃうもんね。」
「だが、問題はそこじゃねえ。」とアスマは、ちっちっちっと右手の人差し指を立てて振る。
「どこよ?」とカカシは窓の外を見てみたが、すかさずアスマは「そこじゃない。」と寒いギャグに一応、突っ込みを入れてくれた。



「ちゃんと聞け。」
少し怖い顔になってアスマは話し出した。
「カカシが里に帰ってきてイルカを誘うようになったってことはだな、じゃあ、自分もイルカを誘おうって輩が出てきたってことなんだからよ。」
「イルカを誘う?」
「お前、前に幼いイルカが想いを寄せられていても気がつかないと話したことあっただろう?」
確かに、随分前にイルカに告白したが、お父さんと呼ばれて振られたと嘆いていた忍がいたような、とカカシは記憶を手繰る。
「そういう輩はイルカが、まだ未成年だからと遠慮していた。そしてイルカは成人してからも特定の相手はいなかったし、下心ありで誘っても、その類の誘いは一律断っていたから、皆、なんとなく遠目から見ていたが。」
ふう、とアスマは煙草の煙と肺に入れて吐き出した。
「そこでカカシの登場だ。イルカはカカシの誘いは断らない時がある、じゃあ、俺の、私の誘いにも断らない時があってもいいんじゃないかって考えたわけだ。もっと言えば、なんでカカシだけなんだっていう嫉妬が多分に含まれている。」



「それって。」
カカシの声が低くなり僅かだが殺気が洩れて、部屋の中が冷え冷えとしてきた。
「イルカが誰かに無理強いされるかもしれないってこと?」
「落ち着け、カカシ。」とアスマは手で制す。
「そういうことがあっても、おかしくはないんじゃないかって、とりあえず、仮定の話だから。な?」
「ふーん。」
殺気を収めたカカシであったが、どうにも面白くない。
渋面になって眉間に深い皺が寄っている。
「だから、ちょっと気をつけろって話だから。分かったな。」
アスマは念には念を押した。




それからカカシは出来る限りイルカの周囲の気を配っていた。
アスマに、あんな話を聞けば心配にもなる。
「どうかしましたか?」
久しぶりにイルカと二人で食事に来たカカシであったが、どうにも周囲の目が気になってしまう。
「いや、なんでもないよ。」
落ち着かないカカシを見てイルカは眉を潜めた。
「具合でも悪いんじゃないですか、帰りましょうか?」
「大丈夫だよ。」
安心させるようにイルカに微笑んでカカシは、イルカとのひと時を楽しむことにした。
考えすぎだ、きっと。
イルカだって忍だし、もしもの時は対処できるはずだ
いや、それよりも、きちんと告白して自分との仲を周囲に知らしめた方がいいような気がする。
食事をするイルカの顔見ながらカカシは考えた。


自分へのイルカの気持ちは正確には分からないが、食事の誘いに応じるということは少なくとも嫌われてはいないはずだ。
どちらかというと好意の気持ちが強いと思う。
嬉しそうに好物を口に運ぶイルカを見てカカシは、だんだんと気持ちが軽くなっていった。
こんな楽しい時間がいつまでも続けばいい、そう思った。




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