Slow Starter13
飲み会の場にイルカの姿が見えないことにカカシは、いらいらとしていた。
懇親会は顔合わせの意味も兼ねているのか、さっきから知らない人間がカカシの元に何人も挨拶に来ているのだが、カカシの待っている肝心の人が姿を現さないのだ。
表には出してはいないが、隣に座っているアスマには手に取るようにカカシの苛つきが伝わってきて、うんざりしていている。
「あのよう、カカシ。落ち着け、酒が不味くなるだろう。」
アスマの取り成しにカカシは、ふいと横を向く。
「だって、飲み会が始まって一時間も経つのに待ち人が来ないんだもん。」
「来ないんだもんって、子供じゃねえんだからよ。」
溜め息をついたアスマが近くにいた中忍に聞いてみた。
「ちょっと聞きたいんだが。」
「なんでしょう?」
「アカデミーの海野は来ないのか?」
「ああ、海野ですか。」
その中忍は何かを知っているように頷いた。
「海野は、昼間のアカデミーの授業の演習中に治りかけていた怪我の傷口が開いてしまったので病院に行き、そのまま帰宅しました。今日の懇親会は急遽、欠席だそうです。」
「傷口!」
会話にカカシが無理矢理、割り込んできた。
「怪我してたの?どうして?いつ?なんで?どこで?」
「ああ、あの怪我だろ。」
アスマは訳を知っているようでカカシを押し返すと、聞いた中忍に礼を言ってカカシに事情を簡潔に説明する。
「つまりだな。イルカは、以前ちょっとした事情で背中に深い傷を負って、それがまだ完治していなかったんだな。で、多分、アカデミーの授業で無理して傷が開いた、と。」
そういうやつだからな、イルカは、と妙に納得して、うんうんと頷いている。
アスマはカカシより少し先に木の葉の里に帰ってきており、イルカともが面識あるらしくイルカのことを理解している風である。
昼間のカカシが感じた血の匂いは、やはりイルカからだったのだ。
それに気がつけないなんて、と自分に腹が立ちカカシは怖い顔になった。
唐突に、すっくと立ち上がる。
そして「俺、帰る。」と宣言した。
「まだ飲み会の途中だが、どこに行くんだ。」
「イルカの家に行って看病してくる。」
「ああ、分かった分かった。」
行け行け、とアスマは面倒くさそうに手と振った。
そして座敷を出て行こうとしたカカシは立ち止まる。
「どうした?」
「あああ〜。」と、がっくりと膝をついた。
「まだ、家の場所も聞いてないよ。」
「・・・・・・教えてやる。」
見かねたアスマが、さらさらとイルカの住所を書いた紙をカカシに渡した。
「ほらよ。」
「アスマ、ありがとう!お前って、本当は良いやつだったんだな。あ、でも、何で家の場所を知っているのか後で聞くからな。」
「いいから、早く行けって。この場は俺が適当に言っておくから。」
「ああ。じゃ、な。」
嬉しそうなカカシを送り出してアスマは、ふーっと煙草の煙を肺に吸い込んだ。
すごく美味しく感じる。
「ふう、やれやれだぜ。」と呟いた。
アスマにイルカの家の住所を聞いて、急いでイルカの家に向かったカカシだったが思わぬハプニングが起こっていた。
「・・・やばい。」
住所が書かれた紙を必死で見るのだが、如何せん、カカシは木の葉の里に帰ってきて日が浅く里に慣れておらず、道に迷っていたのだ。
「ここ、どこだ・・・。」
なんだか、全然、知らない所に行き着いてカカシは途方に暮れる。
道は真っ暗で、道を尋ねようにも人っ子一人いない。
「どうしよう。」
今、この時もイルカが苦しんでいるかもしれないのに。
途方に暮れたカカシが夜空を見上げると星が、さんさんと輝いていた。
こういう時は、決まっている。
「お星様、イルカの家の場所が分かりますように。イルカに会いたいんです。」
両手を合わせてお願いしてみた。
きらり、と星が流れ落ちる。
その時だった。
「カカシさん?」
自分の名を呼ぶ声がする。
振り向くと、そこには待望のイルカがいた。
「イルカ!」
お星様は願いを叶えてくれたのだった。
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