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Slow Starter11



「でも、本当に間に合って良かった。」
カカシはイルカの眼を見ると改めて言った。
「あの時、もう少し遅かったからイルカは・・・。」
眉を雲らす。
「すみません。」
イルカは再び謝ったものの、少々疑問が沸いた。
「でも、何でカカシさん、俺のことを見つけられたんですか?」
「え・・・と。それはね。」
途端、視線を逸らしたカカシは思いついたように言った。

「それは・・・。あ、見回り!見回りかな?隊長として、皆が無事かどうか確認する義務があるしね。別にイルカの後をつけて隠れて見ていたとかじゃないんだよ。」
歯切れ悪いカカシの、とって付けたようないい訳だったがイルカは得心してしまう。
「そうだったんですか。皆が無事か、常に確認するなんて思いやりに溢れているんですね。」
そして感動している。
「隊長を務める方はすごいですね。」
「そ、そうかな。あ、ははは。ありがと。」
カカシは非常に複雑な表情をしていた。



「と、ところで。」とカカシは、ごほんと咳払いをすると「あのさあ。」と言い難そうに言葉を発した。
「イルカは、今、独り身?」
「ええ。一人暮らしですけど。」
「ああ、そう。でも、そういうんじゃなくて。」
どう言えばのか、とカカシは眉根を寄せている。
「えーとね。その、誰か気になっている人とか、いる?」
「気になっている人?」
イルカは暫し考え込んだ。
「えーとですねえ。」
頭を捻って考えてみる。
「今度のアカデミーの低学年のクラスを実習で受け持つですけど、その子供達と仲良くなれるか心配です。」
「あ、子供ね。」
カカシは心なしか安心したようだった。



そして微笑んでイルカの頭を撫でた。
「今、イルカはアカデミーにいるんだね。」
「はい、先生になりたいんです。」
「そうなんだ〜。」
カカシは、にこやかに目を細めて「偉いね。」と褒めそやす。
イルカが可愛くて堪らないように。
頭を撫でられて、イルカは擽ったそうに肩を竦めた。
「カカシさんは?ずっと里には帰って来られないんですか?」
里にカカシさんがいれば、例え、頻繁に会うことはできなくても、里にいるってだけでいいのになあ、と心の中でイルカは、そんなこと考えていた。

「うーん、そうだねえ。」
カカシは首を傾げる。
「もう、里には随分帰ってないからねえ。多分、あと三年位したら帰れると思うんだよねえ。」
「そしたら、里で会うこともできますか?」
目をきらきらさせて、嬉しそうにイルカは聞く。
「そうだね。イルカ、俺のこと独りで待っていてくれる?」
「はい。」
やはりイルカは嬉しそうに頷いた。




「よう、もう大丈夫か?」
カカシのテントから出ると煙草を銜えた副隊長のアスマが声を掛けてきた。
「はい、もう大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました。」
イルカは深々と頭を下げる。
「すみませんでした。」
「なーに、いいってことよ。」
アスマは、にやりと笑ってイルカの後ろに聳え立つカカシを指差した。
「俺は何もしていないからな。その、後ろの馬鹿が大騒ぎしてたほうが大変だったぜ。」
「余計なこと言わないの。」
カカシはアスマを睨む。
「おお、怖い怖い。」
口とは裏腹に、ちっとも怖くないようでアスマは笑って煙草の煙を吐き出した。



「しっかしなあ、まさかなあ。」
遠慮なくアスマはイルカを頭の天辺から爪先まで、じろじろと見た。
その視線に居心地悪くなりながらイルカは、どうしたのものか、と助けを求めるように後ろのカカシを見上げると、怖い顔をしたカカシがイルカの前に、ずいっと出てアスマからイルカを隠す。
「イルカのこと、あんまり見ないでよ。」
「はいはい。」
アスマは、やはり、にやりと笑っている。

そんなアスマを無視してカカシはイルカの方に向き直った。
「イルカ、そう言えば、あの時、つけた親愛の印って誰かに見られた?」
「親愛の印・・・。」
「俺がイルカの首筋や手首に口付けて残した跡。」
横で聞いていたアスマが、盛大に煙草の煙を吸い込んで、げほげほと咳き込んだ。
「ああ、あれですか?里に入る前に忍服に着替えましたから誰にも見られていませんよ。」
忍服の襟元はタートルネックになっていますし長袖ですから、と言うイルカの返事を聞いて、カカシは曖昧に笑って少し肩を落とした。
かなり残念そうである。
「そ、そう。誰にも見られなかったんだ・・・。」
「はい。」
「じゃ、じゃあ、さっきのこと覚えておいてね。俺が里に帰るまで独り身で待っていてくれるってやつ。」
「ああ。はい、俺、一人暮らしが長いし、家も狭いので誰かと同居はしないと思います。」
「・・・ああ、うん。」
なんだか遠い目をしているカカシの横でアスマが、何故かげらげらと笑っていた。



「うっさい。」
カカシは、そんなアスマに蹴りを入れるとイルカの肩に手を置いて、溜め息混じりに苦笑した。
「イルカは本当に、まだまだ子供なんだねえ。」
沁み沁みと言っている。
そんなカカシを、きょとんとした目でイルカは見た。
どうも意味が分かってないらしい。
「そうですねえ。俺、まだ、十九歳で成人していませんし。」
明後日な方向に返事をしていた。
「それがイルカらしいよね。」
カカシは諦めたような納得したような微妙な顔で笑った。



「体は本当に、もう平気?」
「はい、大丈夫です。」
元気に返事をしたイルカが頷くとカカシは優しい顔になった。
「里まで気をつけて帰るんだよ。途中、無理しないでね。」
「カカシさんも。」
また会えなくなるのか、と思うと急にイルカの中の寂しさが押し寄せてくる。
「・・・お元気で。」
「そんな顔しないの。」
カカシは力付けるようにイルカを、ぎゅううと抱きしめた。
「イルカこそ、元気でね。」
そして体を離すと「もう行きなさい。」と一緒に来た仲間が待っている方を指差す。
「はい。じゃあ、さよなら、カカシさん。」
「うん。またね。」
手を振って駆け出したイルカだったが、ふと何を思ったのか、くるりと身を翻してカカシの方にもう一度来た。



「どうしたの?」
「あの、もう一回、お呪いしてもらえませんか・・・。」 ちょっと恥ずかしそうに、自分の口元を触る。
「お呪いしてもらうと元気が出るから・・・。」
駄目ですか?と上目遣いで聞いてくるイルカにカカシは、ふっと密やかに息を吐いた。
ここはテントの外で周囲には人の目があるというのに、こういうことを言ってしまうイルカはカカシが思っているより子供なのかもしれない。
でも、しかし、カカシは了承した。



イルカの口元に自分の顔を寄せると、ちゅっと口付ける。
皆が注目していたようだったがカカシは躊躇しなかったし、イルカも特に深く意味を考えていないようだった。
「ありがとうございます。」
明るく笑ってイルカは言うと今度こそ、一緒に来た仲間の元に行ってしまい帰還のために里に向けて出発した。




道中、仲間から興味津々に聞かれた。
「イルカ、はたけ隊長と、どういう関係なんだ?」
「知り合いなのか?」
「うん、知り合いだった、最初は分からなかったけど。何年か前の任務で知り合ったんだよ。」
「ふーん。」と仲間は不思議そうにしている。
「でも、すごく親しそうだったじゃないか。」
「イルカが劇薬吸い込んだ時なんて真っ青になって心配していたぞ。」

「そっか・・・。」
イルカは一瞬、目を伏せてから、一緒に来た仲間に謝った。
「ごめんな、迷惑掛けて。」
「いいよ、なんとかなったし。」
「時には失敗もあるさ。」
「本当にごめん。」
もう一度、謝ってからイルカは、後は黙って里まで走り続けた。



カカシのことが何回も頭を過ぎる。
「優しい人だからな。」
声に出さずに呟いた。
お呪いをしてもらった口元に触れる。
自然と元気が出てきた。
カカシさんが早く里に帰ってきますように。
そんな願いを心密かにしたイルカであった。




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