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至難のわざ6



その次の日、イルカは受付けではなくアカデミーで仕事をしていた。
カカシのことを考えると胸が苦しく溜め息しか出ないので、あえて考えないようにしている。
もうカカシと個人的に会うのは止めよう。
そう決めた。



休憩時間、何気なくアカデミーの職員室の窓から外を見ると、誰かが連れ立って歩いているのが見えた。
真っ先に目に飛び込んできたのはカカシの姿だった。
横には同じ上忍で、顔見知りのアスマと紅が歩いている。
イルカは思わずカカシの姿に釘付けになってしまい、窓に近寄ると遠目から、まじまじとカカシを見てしまっていた。
会うのは止めようと、さっき決意したばかりなのに、どうしてもカカシから目が離せない。
だって好きなんだから、しょうがないじゃないか。



自分に、そんな言い訳をしながらイルカはカカシを見詰める。
見るだけなら構わないだろう。
一心不乱にカカシを見詰めていると、カカシの歩みが、ぴたりと止まりカカシの顔がある方向を向いた。
そして、ひらひらと手を振り始めた。
誰に手を振っているのか、とイルカは一瞬、考える。
しかし、すぐに分かった。



カカシが手を振っている方向とは、イルカが外を見ているアカデミーの方向、そのものだったのだ。
俺を見て、手を振っているのか!
びっくりしたイルカは、恐る恐る手を振り返してみた。
カカシの手を振る速度があがる。
にこにこ、として上機嫌な雰囲気が、遠目からでも伝わってきた。



あんな遠くからイルカを認識して、手を振っているのか・・・。
カカシの目の良さに驚きながら、心のどこかで自分に手を振ってくれているのを嬉しく思ってしまう。
これじゃあ、嫌いになるなんて無理だよ。
振っていた手をイルカは、そっと下ろした。
イルカが手を振るのを止めてもカカシは、いつまでも、そこに立ち止まって手を振り続けている。
やがて、カカシを待っていたと思われるアスマが、痺れを切らしたようにカカシを引きずって行ってしまった。



行っちゃった・・・。
なんだか取り残されたような気持ちになってイルカは職員室の天井を仰いだ。
今の自分の気持ちは考えたくない。
振り切るようにイルカは休憩時間を終わらせて、仕事に戻った。



カカシを会わないように注意して過ごして、何日かが過ぎた。
幸い、今の時期は受付けの仕事からも外れていて、今はアカデミーだけの仕事になっている。
さすがに、アカデミーにはカカシさん、来ないしな。


心穏やかになるというわけではないが、カカシと会わないことで告白を否定された傷も徐々に癒えつつ、あるような気がする。
カカシに会えば嫌いになってほしい、とか言われるけど、なら会わなければいいんだよな、そうすれば好きな人を好きなままでいていい。
イルカの中で、そう答えは出つつあったのに。




ふと、アカデミーの仕事が終わり帰る間際になって同僚がイルカに言ってきた。
「久しぶりに飲みにでも行くか?」
「あー、そうだなあ。」
お酒で気分を変えるのも悪くないかもしれない。
同僚はイルカの肩を叩いて、同僚の好みでイルカの肩に手を回し、肩を組んでくる。
特に意味はなく、友達同士の延長の行為であった。
「行こうぜ。いいじゃん、給料出たばっかだしさ。」
屈託なく、笑顔で誘われてイルカは、まあ、いいかと頷いた。
「うん、いいよ。行こう。」
「よし!そうと決まれば話は早い。俺、ぐるっとアカデミーの教室、見回りしてくるから、イルカは職員室頼むな。」
「分かった。」
同僚は、ささっと職員室を出て行った。
イルカは、その間、職員室の戸締りをして、書類を片付ける。



その時、不意に何かの気配を感じた。
もしかして、お化け?
そう思ってしまうほど背筋が慄き、凍り付いてしまうような冷気を放っていた。
どきどきしながら、ゆっくりと振り向くと、そこにはお化けではなく、カカシが立っていた。
人間だった、と、ほっとしたイルカだったがカカシの表情は、ひどく沈んで浮かなく、恨めしそうである。



唐突に喋りだした。
「イルカ先生。・・・さっきのやつと付き合うの?」
「えっ?」
「あいつと仲がいいの?」
喋るごとにカカシは一歩イルカに近づいてくる。
「仲って言われても・・・。」
ただの同僚で、それ以上の意味はない。
「あいつはねー、友達に金を借りて未だ返さないようなやつなんですよ。」
「あ、あの・・・。」
カカシが、どんどん近づいてきてイルカは壁際まで追い詰められてしまった。
「昨日、友達にジュース代を借りて、まだ返してないんです。」
「ジュース代くらい・・・。」
なんでカカシが、そんな細かいことまで知っているんだろう、と疑問に思いながらもイルカは口に出せない。


もうカカシが目の前で迫っていて、今にも顔がくっ付きそうだ。
「あいつは、イルカに相応しくないよ。」
その言葉でイルカは、むっとしてしまった。
別に、さっきの同僚とは疑われるような仲ではないけれど、カカシの言うことは一々おかしい。



ずっと腹の中に溜まっていたものが、ついに出てしまった。
「カカシさん・・・。」
「ん?」
「おかしいですよ、言ってること。」
今までのことを思い出すと挫けそうになる気持ちを奮い立たせて頑張って言う。
「嫌いになってほしいとか言っておきながら、俺を飯に誘ったり、自分の呼び方を変えるなとかって・・・。」
目の前のカカシの顔を見ているのが辛くて、自然とイルカは視線は下を向いてしまった。
「だって、俺、告白したんですよ。なのに・・・。」
イルカの声が掠れていき勢いがなくなった。
声を出すのが、ひどく辛かった。
こんなこと言ってもカカシは解ってくれないかもしれない。


「なのに、嫌いになってほしい相手のことを何で干渉するんです。離れればいいのに、近くにいて構われると・・・。」
嫌いにはなれない。
イルカは、ぽつりと自分の気持ちを打ち明けた。



暫く、間があって名を呼ばれた。
「イルカ。」
名前を呼ばれて顔を上げるとカカシが口布を下ろして、イルカを見ていた。
カカシの手がイルカの頬に伸びて、柔らかな仕草で頬を撫でる。
「俺がイルカから離れればって?そりゃあ無理だよ、」
カカシの視線とイルカの視線が重なり合う。
そしてカカシが思いも寄らぬ、衝撃的な一言を放った。



「だって、俺、イルカのことが好きだから。」



至難のわざ5
至難のわざ7



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