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幸せ星9



塞がった洞窟の入り口の上部に、ぽっかりと穴が空いた。
人が一人通り抜けられるくらいの。
暗い世界に光が射す。
その光がイルカの顔を照らした。
ほっとした表情のイルカの顔が浮かび上がる。
その顔を見たカカシは言った。
「イルカ先生、先に出てください」
「え、でも」
「俺も後から、すぐ出ますから」
カカシは渋るイルカを先に暗闇から明るい世界へと送り出した。



「出られた・・・」
カカシより先に洞窟から出たイルカは、ほっとしたのか力が抜けて片膝を地面についてしまった。
閉じ込められた暗闇から外の明るい場所へと戻れたことに感謝する。
そして助けてくれた人間に礼を言わなければ、と顔を上げると例の女性がイルカの前にいた。
例の女性とはカカシと一緒にいたのと見かけたくのいちである。
カカシの恋人という。
その女性がイルカの目の前で顔を真っ青にさせている。
イルカのことを心配しているらしかった。
「よかった、イル・・・。うみの中忍、やっぱり閉じ込められていたのね。荷物だけあるから、びっくりしたわ」
「え、っと。あの」
咄嗟にイルカは口篭った。
そうだ、この人、カカシさんの恋人だって・・・。
洞窟に閉じ込められるというハプニングの所為でこのことが頭から、すっぽり抜け落ちていた。



「あ、あの、ありがとうございました、助けてくれて」
やっとのことでイルカは、それだけ言った。
どう見ても、この女性が助けてくれたに違いない。
どんな相手でも助けてもらったら礼を言うのが当たり前だ。
女性は片膝をついたイルカの目線に合わせるべく、自分も両膝をついてイルカの顔を覗き込んでいる。
「イル・・・、うみの中忍、怪我はない?」
「は、はい」
慌ててイルカは頷く。
頷いて下を見たとき女性の手が目に入り、指先に土がこびり付いているのを見つけた。
手で掘ったのではないであろうが、助けようと何らかのことをしてくれたのだろう。
「すみません、手が」
イルカは項垂れて女性の手を指差した。
「手が汚れてしまいましたね」
「そんなのいいのよ、気にしないで」
女性は朗らかに笑う。
「うみの中忍が本当に無事でよかった」
その温かい声に顔を上げると女性が、やはり温かい眼差しでイルカを見ていた。
瞳には慕情、懐かしさの色が見える。
この人と、どこかで会ったことがある?
イルカが疑問を抱いた時、女性は不意に、はっとしてイルカの首元を見つめてきた。



「うみの中忍、それ・・・」
驚愕の顔をしている。
「え、それって?」
首を傾げると女性は「ううん、何でもないの」と首を横に振った。
「あの、ね。うみの中忍・・・」
女性の両手が伸びてきてイルカの襟元を触る。
何をするのかと思えば、ただ単にイルカの忍服の襟元を正しただけであった。
「襟が曲がっているわ。ちゃんと首が隠れるように上げておかないと」
「すみません」
「これでいいわ」
女性は安心したように言いイルカの頭に、そっと触れた。
イルカより少しだけ背の低い女性はイルカの頭に触れるのも容易だ。
小さな小さな女性の呟き声が聞こえた。
「・・・ちっとも変わらないのね、子どもの頃と」



その呟きを聞いてイルカは何が、と尋ねたようとしたのだが、それよりも早くカカシの声がした。
「イルカ先生、無事ですか」
振り返るとカカシが洞窟から、ちょうど出てきてところであった。
体についた砂や土を払っている。
「あ、カカシさん!」
イルカは急いで駆け寄った。
「すみません、俺から先に出てしまって。カカシさんは大丈夫ですか?」
「俺は大丈夫ですよ〜」
「そうですか」
ほっと一息吐いてイルカは女性の方を振り向く。
「カカシさん、あの方が助けてくれたんですよ」
「あの方って」
カカシが女性を見る。
女性は挑むようにカカシを見た。
「助けたのは私よ」
「ああ」
カカシと女性は目が合った瞬間に火花と散らした、かのようにイルカには見えた。



これは、いったい、どういうことなんだ。
カカシとカカシの恋人という女性は見詰め合っているのだが雰囲気が尋常ではない。
敵対しているような気がするのだ。
そういえば、この人、一人でここに?
腑に落ちない。
他の上忍の人たちは、とイルカが考えていると後ろから声がした。
「イルカ!」
イルカと一緒に任務来た同僚であった。
荷物をたくさん持っている。
「どうしたんだ?何かあったのか」
「え、いや、そっちこそ」
「俺ははたけ上忍の」とこそっと言って小指を立てた。
「恋人と言われる上忍と一緒に帰還して来たんだが、途中で上忍の方が何かおかしいと 呟いて、突然、姿が見えなくなって探していたんだ」
「何かって」
カカシとイルカの異変に気がついて助けてくれたのは、やはり、あの女性だったのだ。
「そうだったのか」
イルカは洞窟に閉じ込めらたことを手短に要点だけ話した。



「へえ、そんなことがあったのか」
同僚は「無事でよかったな」とイルカを労う。
「うん、まあね」
「で、あの二人は喜びの再会を果たして見詰め合っているわけか」
未だ、カカシと女性は見詰めあっていた。
イルカの目には睨み合っているように見えたのだが。
そのうちに女性はカカシの胸倉を掴み上げると「ちょっと来なさい!」と 厳しい声を発してカカシを引き摺って少し離れた場所に行ってしまった。
何やら話しているようだが声は聞こえず、口元も見えないので読唇もできない。
カカシの後ろ姿に女性の姿が重なるようになっていたからだ。
「あの二人、仲が良いな〜」
同僚が暢気に言う。
見ているとカカシの背が微妙に女性の方へと屈んだ。
顔と顔が触れ合う感じで。
「あれってさ」
またしても同僚が暢気に言った。
「キスしているみたいだな、まるで」
その光景を見ているイルカは胸が詰まる。



さっき、カカシさん・・・。
俺のこと好きだって言って。
ぐっとイルカは唇を噛む。
キスしたじゃないか!
あれは何だったのか、白昼夢か幻でも見たのか。
カカシに幻術でも使われたのか。
暗闇で見た儚い夢だったのか・・・。
自分のことを言ったカカシは真面目で誠実さが感じられた。
なのに、今は・・・。
イルカはカカシと女性を視界から外した。
自分が持っていた荷物を置いた場所へと向かう。
「先に行こう」
「え、ああ」
「後は里に帰るだけなんだろ」
「うん、まあなあ」
同僚はカカシと女性と気にしているようだったが「邪魔しちゃ悪いか」と頷きイルカに従った。
「先に帰っていても怒らないよな」
「・・・うん」
後ろ髪引かれながらもイルカは何も言わずに、その場から立ち去った。



いっぽう、女性に引き摺られ離れた場所に連れて来られたカカシは危機的状況に陥っていた。
胸倉を掴まれたまま、首元に切れ味鋭いクナイを押し当てられていたのである。
「はたけ、イルカ君に手を出したわね!」
「さあねえ、何のことやら。ちょっとクナイ危ないでしょ」
「誤魔化しても無駄よ、イルカ君の首元に跡が残っていたんだから!」
「何の跡〜」
「キスマークに決まってんでしょうが!」
しらばっくれるカカシを女性は問い詰める。
「おまけに上忍のあなたが付いていながらイルカ君を危ない目に合わせるなんて!」
不甲斐ない、と怒られていた。
「ああ、私がイルカ君を魔の手から守ってあげなくちゃ」
女性は深い溜め息と吐く。
「魔の手って失礼な」
カカシは眉を潜めた。
「俺はイルカ先生に正々堂々、告白してキスしただけで〜す」
「やっぱりキスしたんじゃないの!」
二人はイルカがいなくなったのも気づかずに延々と言い争っていたのだった。




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