幸せ星8
カカシは実に熱心に言ってくる。
「好きです、イルカ先生。イルカ先生も俺が好きですよね」
耳元で囁く言葉は熱っぽい。
情熱を多分に含んでいる。
「ねえ、俺のこと好きでしょう、イルカ先生?」
そう言われると同僚にもカカシが好きなのか、と指摘されたイルカはだんだん、そんな気になってきてしまう。
俺、カカシさんのこと好きなのかな・・・。
カカシのことは尊敬しているし信頼している。
好きだと言えば、好きだけど。
それが、すぐに恋愛に直結する気持ちなのかイルカには判断できない。
カカシさんのことは嫌いじゃない、一緒にいたい気持ちの方が強いけど。
カカシに会えなくて寂しかったこともある。
これが、恋愛でいうところの好きだって気持ちなのかな。
気持ちに迷いが生じているイルカが返答しないでいるとカカシが焦れたように急かしてきた。
「イルカ先生、俺のこと好きだって言って」
とうとう、懇願までされてしまった。
「イルカ先生の好きだってという俺の気持ちは本物です。イルカ先生が俺のこと、ほんの少しでも
誰よりも好いていてくれるなら好きだって言ってほしい。最初は好きだという気持ちが少しでも
俺の愛の力で好きだという気持ちを大きく育ててみせますから」
口説かれた。
「イルカ先生・・・」
暗闇の中、入り口は閉ざされカカシの腕は力強く逃れる術はない。
カカシに告白され情熱的に口説かれたイルカは押されるように頷いてしまった。
こくり、と。
真っ暗の中で何回も紡がれるカカシの言葉が暗示のように聞こえたのかもしれない。
カカシの熱心さに負けたのかもしれない。
「それは俺のことが好きだってことですね!」
暗闇で弾むようなカカシの明るい声。
「嬉しいです!」
にっこりとカカシが幸せそうに微笑んでいる。
「嬉しいです、イルカ先生!」
そう言ったカカシは、ごくごく自然にイルカの唇に自分の唇を重ねてきた。
・・・・・・・・・この状況はなんだ?
カカシにキスされながらイルカは、どこか頭の隅で考えていた。
頭の隅に妙に冷静な自分がいる。
カカシさんが俺に好きだって言って、俺もカカシさんのこと好きじゃないかなって思って、それで頷いて・・・。
それだけなのに、どうして今のような展開になるのだろう。
キスって、こんなに簡単にするものなのか
好きになったら、即キスするもの?
イルカは自問自答するが答えは出ない。
そういえば物心ついてからキスなんてしたことがなかった。
恋人と呼べる存在がいたこともない。
・・・ってことは、これが俺のファーストキス!
カカシにキスされながら、驚きのあまり体が凝固して動かないイルカは目を見開いたままだった。
イルカにキスしているカカシは目を閉じているのが見える。
目の前で見る、アップのカカシの顔は綺麗で見蕩れてしまう。
そんなことを考えている間にもイルカの手を握ってカカシの手はイルカの項を支え、キスを深めていく。
優しく穏やかなキス。
ゆっくりとお互いを確かめ合うような、それでいて根底には激しさが潜んでいるようなキスだ。
キスにつられるように見開いていたイルカの目も閉じられていく。
キスに身を委ねれば心地よいだけだった。
キスって・・・。
イルカは、うっとりとしてしまう。
こんなに気持ちいいものだったのか。
人生初めての体験であった。
心地よさに身を委ねていたイルカであったがカカシの唇がイルカの唇から逸れていくのを遠くで感じていた。
カカシの唇はイルカの体を探るように、己の跡を残すかのように唇から耳朶、首筋と柔らかい部分をなぞってキスしていく。
途中、ぴりっと痛みも感じたがキスだと思えば甘く感じる。
「カカシさん」
思わずカカシの名を口にするとカカシの唇が戻ってきてイルカの唇に重なる。
キスの合間にカカシは何度も甘く優しい声で囁いた。
「イルカ先生、好きです。イルカ先生だけが好きなんです」
その言葉はイルカの心の奥底に深く刻まれた。
こつん。
イルカの耳に微かな音が聞こえた。
閉じていた目を開く。
音が聞こえたのはカカシも同じようで目を開いてキスを中断し洞窟の入り口の方を見る。
こつん、かつん。
音は、また聞こえた。
外からだ。
「どうやら助けがきたようですね」
カカシはイルカを抱きしめたまま呟いた。
「助けが来たのは嬉しいですが」
溜め息と共に吐き出された言葉は寂しげに聞こえた。
「イルカ先生と二人きりだったのになあ、残念」
心底、カカシはがっかりしているようだった。
幸せ星7
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