AIで普通の動画を3D動画に変換する


幸せ星3



「どしたん、イルカ?」
任務で一緒に来た同僚が動きの止まったイルカを不思議そうに見てくる。
イルカは衝撃を受けすぎて言葉が出ない。
同僚はイルカの視線の先をたどり「ああ、あれか」と頷いた。
そして言う。
「あれって、ちょっとびっくりだよなあ〜」
羨ましげにカカシと女性を眺める。
「はたけ上忍にあんな美人の恋人がいたなんてさ〜」
・・・・・・こいびと!
その言葉はイルカの胸に深く突き刺さった。
同僚に悪気はない。
そこらで耳にした噂を世間話のようにしているだけである。
「何でも遠くに長期任務に行っていた上忍の方たちと合流して帰還途中だとかで、あの」と カカシの傍に立つ女性を指差す。
「女性の上忍も長期の任務で里を離れていたらしい。
そんで、一緒に帰還ということで合流したら実は知り合いで。ものすごく久方ぶりに会って、 まあ、はたけ上忍と再会して恋の炎も再燃したらしい、と。そういうことだな」
あの二人の間に、どんなロマンスがあったんだろうなあと同僚はイルカの気も知らずに人事のように語った。



「そ、うなんだ・・・」
やっとのことでイルカの口から言葉が出た。
「そうだったんだ」
だが声に力はない。
喉は、からからに渇いていて絞りだしたような声だった。
カカシさんに恋人がいた・・・。
イルカの目に麗しい雰囲気を漂わせた女性が目に入る。
あの人がカカシさんの恋人・・・。
恋人とは、すなわち、お互い好きあっている者同士のことだ。
カカシさんはあの人のことが好きで、あの人もカカシさんのことが好きなんだ。
そんな答えがイルカの中で出る。
急に目の前が真っ白になった。
目が開いているのに視界が白く、何も見えない。
ふらり、と足元がふらついた。



「イルカ!どうした!大丈夫か?」
本当にふらついてしまったらしい。
地面に倒れなかったのは隣にいた同僚の腕に支えられたからであった。
「あ・・・。ご、ごめん」
慌ててイルカは身を起こして自分の足で、しっかりと立った。
一瞬、自分を見失ってしまったが仮にも、そこは精神も鍛錬している忍なので立ち直るのも早い。
「具合でも悪いのか?」
同僚が心配そうにイルカの肩に手を掛けて顔色を見てくる。
「顔色が悪いぞ。真っ白だ」
「大丈夫、だって」
「本当に大丈夫なのか・・・」
「ああ」
大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせる。
心配する同僚に笑ってみせた。
「ほんと、何でもないんだ。だから・・・」



「だから?」
イルカの背後から聞き覚えのある声がした。
懐かしい、とても懐かしいが。
心臓が再び、大きな音を立てる。
この声は・・・。
振り向くのが怖い。
イルカは、そっと身震いした、
だって誰の声が分かっているから。
今、一番会いたくて会いたくない人だった。
自分のことなんて放っておいてほしい、とイルカは切実に願った。
しかし声の主は、それを許さなかった。
イルカの腕を掴むと、ぐいと自分の方へと向き直らせたのだ。
同僚からイルカを奪うように、自らの腕に抱き寄せたと思える仕草に見えた。



「イルカ先生」
イルカの目の前にはカカシがいた。
先ほどまで恋人だと噂されていた女性の隣にいたはずなのに。
「カカシさん・・・」
ぱちぱち、とイルカは忙しなく瞬きを繰り返した。
カカシが目の前にいることが信じられない。
恋人と一緒にいなくていいのか、恋人とは、ずっと寄り添っているものではないだろうか。
任務中は限度があるけれど。
「ちょっと、こっちへ」
呆然としていたイルカはカカシに腕を掴まれたまま、皆から少し離れた場所へと連れて行かれた。



「イルカ先生」
人目を避け、誰からも見えない場所へと行くとカカシは不安そうにイルカの顔を覗き込んできた。
「だから、何なんですか?具合が悪いの、どこか痛い?」
「え、なんで・・・」
「さっき、ふらふらしていたでしょう。」
「それは・・・」
理由を言いたくなくてイルカは口を噤む。
「ふらふらして倒れそうになっていて俺、すごく心配しました」
「すみません」
「おまけにイルカ先生の倒れこんだ先があいつなのが、めちゃめちゃ悔しくて。 俺が、もう少し早く気がついていればって。いえ、それはしょうがないんですけどね。でも」
ごにょごにょと話しながらカカシはイルカの額宛てを丁寧に外して、イルカの額に手を当てた。
「ふむ、熱はないみたいです。仕事のし過ぎでイルカ先生、疲れが出たのかな」
イルカの体調を気遣っている。
「いえ、そうじゃないんです、けど」
カカシに恋人がいた、ということに衝撃を受けたなんて、まさか言えない。
そんなのカカシにもカカシの恋人にも失礼になる。
それに、だいたいにして・・・。
カカシさんに恋人がいたからって何で俺が、こんなにショックで落ち込んでいるんだ?
自分の気持ちが分からない。



そんなイルカを落ち着かせたのはカカシの声だった。
「俺がいない間に何かありましたか」
静かで、それでいて穏やかなあたたかい声。
この声を聞くと安心してしまう。
自然な笑みが、ふっとイルカの顔に浮かんだ。
「いえ、何もありません。それに具合も悪くありません」
心配をお掛けして申し訳ありません、とイルカはカカシに頭を下げた。
「いいんですよ、そんなこと」
俺とイルカ先生の仲じゃありませんか、とカカシは軽口を叩いて場を明るくした。
「それにイルカ先生、ここに来ているなら真っ先に俺に声を掛けてくれればいいのに」と拗ねたようにも言われる。
「すみません」
イルカは苦笑した。
「カカシさんの姿を見てるだけでいいと思ったものですから。カカシさんは上忍で俺は中忍だし」
「そんなの関係ありませんよ」
間髪入れず、カカシは否定する。
「上忍とか中忍とか俺にとっては何の障害にもなりません」
何故か力強くカカシは言った。



カカシとイルカが二人で話しているところへ、ふわりと芳しい香りが漂ってきた。
「何をしているのかしら、こんなところで」
「あ・・・」
「なんだよ」
そこへ現れたのはカカシの恋人と噂されている件の女性であった。
近くで見ると冴えた美貌が光っているのが見て取れる。
とても綺麗な人だ、とイルカは素直にそう思った。
綺麗なだけじゃなくて、瞳に強固な意志の光が宿っている。
この人、きっと強い上忍だと勘ではあるがイルカは確信した。
「ねえ、その子・・・」
てっきりカカシに用事があるのか、と思いきや、その女性はカカシを押しのけてイルカの傍へと 歩み寄ってきた。
「この子が」と大きく黒い瞳を見開いてイルカを凝視している。
「この子がイ・・・、うみの中忍なの?」
「そうだ〜よ」
ぶっきらぼうに答えたカカシは嫌々、答えているように見えた。
「そう、この子があの・・・」
「もう、いいでしょ」



カカシはイルカと女性の間に強引に割り込んできた。
「はいはい、もう終わり。あっち行ってよ離れてよ。俺はイルカ先生と二人だけで話しているんだか〜らね」
二人だけ、の部分をカカシは強調した。
「邪魔」と女性に素っ気無い。
女性も負けずに言い返してくる。
「行くわけないでしょ、私一人で。私が行くのなら、はたけも来なさいよ。うみの中忍から離れなさいよ!」
恋人と噂されているのに何やら口げんかしている。
しかも結構、熾烈だ。
冷静になればカカシと女性は、全く恋人同士には見えなかったのに。
恋人でもカカシさんのことを名字で呼んでいるんだ〜。
未だかつて恋人がいなかったイルカはカカシと女性の様子に疑問を感じない。
二人のことを恋人同士だと思い込んでいる。
はたけ、と呼ばれるカカシを新鮮に感じた。
でも、これって・・・。
イルカは首を傾げる。
けんかするほど仲がいいってことなのかな、と明後日の方向に考えていた。




幸せ星2
幸せ星4




text top
top